62 / 111
幕間Ⅰ 姉妹の物語
ACT61
しおりを挟む
一発OKが続く。
ダメ出しの鬼である王子晴信も舌を巻く演技を見せる私たち姉妹。
私の好敵手も食い入るように私たちの演技を目に焼き付けている。
それは当然の反応と言える。
初めて(演技を)合わせているはずの二人が、これ以上ない演技を見せ、カットがかかった後にはあそこはもっとこうした方がいいだとか、この方がいいだとか言い合っているのだ。
満足していない。その姿勢が見て取れるだけでも彼女からしてみれば恐怖だろう。
それだけで私は十分に満足なのだが、姉は違うらしい。
見事なまでのドヤ顔である。
見せつけるように常に好敵手の視界に入ろうとしている。
折角休憩に入ったんだから休めばいいのに。
家を一歩出た瞬間から私たちは赤の他人になる。つまり、現在スタジオにいる私たちは姉妹ではなく、赤の他人。姉の行動に口出しすることは出来ない。
まあ、わざわざ外で話す必要が無いくらいに家では口論を繰り返してきた。
演技についても二人で散々語り明かした。
その結果の一発OKである。
撮影は姉と好敵手、二人のシーンになっていた。
まだどこか自分の世界に入り込んでいる姉。
調子乗ってたら王子晴信の逆鱗に触れるわよ。
急いで頭を切り替えるようにデスチャーを飛ばす。
ん? と間の抜けた顔で私を見る姉。
こちらが伝えたい意図がくみ取れないらしく、険しい顔になる。
何故わからない。日本人!
――Why Japanese people!? くみ取れよ!! 察しろよ!!
でも、ちょっと抜けている、そんなお姉ちゃんもまた可愛いのだけれども。
直後に本番の掛け声。ああ、お姉ちゃん終わった……。
?? 何故か好敵手の動きが止まった。その後何度も彼女はフリーズを繰り返した。
♢ ♢ ♢
前回の撮影から数日後。
彼女は学校に登校してきた。
ぐちぐちうるさいからついキレてしまった。
短気なところは姉とよく似ている。キレ方が少し違うけどね。
姉は感情的に、私はあくまでも、お淑やかにキレる。
――Make the most of yourself, for that is all there is of you.
この一言を残して(彼女に贈って)、
私は学校を去る決意をした。
ダメ出しの鬼である王子晴信も舌を巻く演技を見せる私たち姉妹。
私の好敵手も食い入るように私たちの演技を目に焼き付けている。
それは当然の反応と言える。
初めて(演技を)合わせているはずの二人が、これ以上ない演技を見せ、カットがかかった後にはあそこはもっとこうした方がいいだとか、この方がいいだとか言い合っているのだ。
満足していない。その姿勢が見て取れるだけでも彼女からしてみれば恐怖だろう。
それだけで私は十分に満足なのだが、姉は違うらしい。
見事なまでのドヤ顔である。
見せつけるように常に好敵手の視界に入ろうとしている。
折角休憩に入ったんだから休めばいいのに。
家を一歩出た瞬間から私たちは赤の他人になる。つまり、現在スタジオにいる私たちは姉妹ではなく、赤の他人。姉の行動に口出しすることは出来ない。
まあ、わざわざ外で話す必要が無いくらいに家では口論を繰り返してきた。
演技についても二人で散々語り明かした。
その結果の一発OKである。
撮影は姉と好敵手、二人のシーンになっていた。
まだどこか自分の世界に入り込んでいる姉。
調子乗ってたら王子晴信の逆鱗に触れるわよ。
急いで頭を切り替えるようにデスチャーを飛ばす。
ん? と間の抜けた顔で私を見る姉。
こちらが伝えたい意図がくみ取れないらしく、険しい顔になる。
何故わからない。日本人!
――Why Japanese people!? くみ取れよ!! 察しろよ!!
でも、ちょっと抜けている、そんなお姉ちゃんもまた可愛いのだけれども。
直後に本番の掛け声。ああ、お姉ちゃん終わった……。
?? 何故か好敵手の動きが止まった。その後何度も彼女はフリーズを繰り返した。
♢ ♢ ♢
前回の撮影から数日後。
彼女は学校に登校してきた。
ぐちぐちうるさいからついキレてしまった。
短気なところは姉とよく似ている。キレ方が少し違うけどね。
姉は感情的に、私はあくまでも、お淑やかにキレる。
――Make the most of yourself, for that is all there is of you.
この一言を残して(彼女に贈って)、
私は学校を去る決意をした。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
ショタパパ ミハエルくん
京衛武百十
キャラ文芸
蒼井ミハエルは、外見は十一歳くらいの人間にも見えるものの、その正体は、<吸血鬼>である。人間の<ラノベ作家>である蒼井霧雨(あおいきりさめ)との間に子供を成し、幸せな家庭生活を送っていた。
なお、長男と長女はミハエルの形質を受け継いで<ダンピール>として生まれ、次女は蒼井霧雨の形質を受け継いで普通の人間として生まれた。
これは、そういう特殊な家族構成でありつつ、人間と折り合いながら穏当に生きている家族の物語である。
筆者より
ショタパパ ミハエルくん(マイルドバージョン)として連載していたこちらを本編とし、タイトルも変更しました。
トランスファは何個前? Watch your step.
梅室しば
キャラ文芸
熊野史岐が見つけた湖畔のカフェ「喫茶ウェスタ」には美しい彗星の絵が飾られていた。後日、佐倉川利玖とともに店を訪れた史岐は、店主の千堂峰一に「明日なら彗星の実物が見られる」と告げられる。彗星接近のニュースなど見当たらない中、半信半疑で店を再訪した二人は、曇り空にもかかわらず天窓に映った巨大な彗星を目の当たりにする──。
※本作は「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。
【完結】双子の入れ替わりなんて本当に出来るのかしら、と思ったら予想外の出来事となりました。
まりぃべる
恋愛
シェスティン=オールストレームは、双子の妹。
フレドリカは双子の姉で気が強く、何かあれば妹に自分の嫌な事を上手いこと言って押し付けていた。
家は伯爵家でそれなりに資産はあるのだが、フレドリカの急な発言によりシェスティンは学校に通えなかった。シェスティンは優秀だから、という理由だ。
卒業間近の頃、フレドリカは苦手な授業を自分の代わりに出席して欲しいとシェスティンへと言い出した。
代わりに授業に出るなんてバレたりしないのか不安ではあったが、貴族の友人がいなかったシェスティンにとって楽しい時間となっていく。
そんなシェスティンのお話。
☆全29話です。書き上げてありますので、随時更新していきます。時間はばらばらかもしれません。
☆現実世界にも似たような名前、地域、名称などがありますが全く関係がありません。
☆まりぃべるの独特な世界観です。それでも、楽しんでいただけると嬉しいです。
☆現実世界では馴染みの無い言葉を、何となくのニュアンスで作ってある場合もありますが、まりぃべるの世界観として読んでいただけると幸いです。
一条春都の料理帖
藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。
今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。
****
いつも読んでいただいてありがとうございます。
とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。
あやかし甘味堂で婚活を
一文字鈴
キャラ文芸
調理の専門学校を卒業した桃瀬菜々美は、料理しか取り柄のない、平凡で地味な21歳。
生まれる前に父を亡くし、保育士をしながらシングルで子育てをしてきた母と、東京でモデルをしている美しい妹がいる。
『甘味処夕さり』の面接を受けた菜々美は、和菓子の腕を美麗な店長の咲人に認められ、無事に採用になったのだが――。
結界に包まれた『甘味処夕さり』は、人界で暮らすあやかしたちの憩いの甘味堂で、和菓子を食べにくるあやかしたちの婚活サービスも引き受けているという。
戸惑いながらも菜々美は、『甘味処夕さり』に集まるあやかしたちと共に、前向きに彼らの恋愛相談と向き合っていくが……?
【全33話/10万文字】絶対完璧ヒロインと巻き込まれヒーロー
春待ち木陰
キャラ文芸
全33話。10万文字。自分の意志とは無関係かつ突発的に「数分から数時間、下手をすれば数日単位で世界が巻き戻る」という怪奇現象を幼い頃から繰り返し経験しているせいで「何をしたってどうせまた巻き戻る」と無気力な性格に育ってしまった真田大輔は高校二年生となって、周囲の人間からの評判がすこぶる良い長崎知世と同じクラスになる。ひょんな事からこの長崎知世が「リセット」と称して世界を巻き戻していた張本人だと知った大輔は、知世にそれをやめるよう詰め寄るがそのとき、また別の大事件が発生してしまう。大輔と知世は協力してその大事件を解決しようと奔走する。
VTuberなんだけど百合営業することになった。
kattern
キャラ文芸
【あらすじ】
VTuber『川崎ばにら』は人気絶頂の配信者。
そんな彼女は金盾配信(登録者数100万人記念)で、まさかの凸待ち事故を起こしてしまう。
15分以上誰もやって来ないお通夜配信。
頼りになる先輩は炎上やらかして謹慎中。
同期は企業案件で駆けつけられない。
後悔と共に配信を閉じようとしていたばにら。
しかし、その時ついにDiscordに着信が入る。
はたして彼女のピンチに駆けつけたのは――。
「こんバニこんバニ~♪ DStars三期生の、『川崎ばにら』バニ~♪」
「ちょっ、人の挨拶パクらんでもろて!」
「でゅははは! どうも、DStars特待生でばにらちゃんの先輩の『青葉ずんだ』だよ!」
基本コラボNG&VTuber屈指の『圧』の使い手。
事務所で一番怖い先輩VTuber――『青葉ずんだ』だった。
配信事故からの奇跡のコラボが話題を呼び、同接は伸びまくりの、再生数は回りまくりの、スパチャは舞いまくり。
気が付けば大成功のうちに『川崎ばにら』は金盾配信を終えた。
はずだったのだが――。
「青葉ずんだ、川崎ばにら。君たちにはこれからしばらくふたりで活動してもらう。つまり――『百合営業』をして欲しい」
翌日、社長室に呼ばれた二人は急遽百合営業を命じられるのだった。
はたしてちぐはぐな二人の「百合営業」はうまくいくのか?
【登場人物】
川崎ばにら : 主人公。三期生。トップVTuber。ゲーム配信が得意。コミュ障気味。
青葉ずんだ : ヒロイン。特待生。和ロリほんわか娘のガワで中身は「氷の女王」。
網走ゆき : 零期生。主人公&ヒロイン共通の友人。よく炎上する。
生駒すず : 一期生。現役JKの実力派VTuber。
羽曳野あひる: 二期生。行動力の化身。ツッコミが得意。
秋田ぽめら : 特待生。グループのママ。既婚者。
津軽りんご : 特待生。ヒロインの親友。現在長期休業中。
八丈島うみ : 三期生。コミュ力お化けなセンシティブお姉たん。
出雲うさぎ : 三期生。現役女子大生の妹系キャラ。
石清水しのぎ: 三期生。あまあまふわふわお姉さん。どんとこい太郎。
五十鈴えるふ: 三期生。真面目で三期生の調整役。癒し枠。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる