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幕間Ⅰ 姉妹の物語
ACT59
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私の心は罪悪感で鉛のように重く、私の足取りを重く……はしなかった。
第一私、罪悪感とか覚えたことないんだよね。
私の気持ちと同じでどこか投げやりに見える高層ビルを横目に路地へと入る。
なんで日本ってこんなに統一感が無いのかしら。
毎度のことながら日本の無頓着ぶりには呆れる。高層ビルの脇に商店街。西洋建築の隣にアメリカ建築、日本家屋と統一感も何もない。
日本人は節操なく何でもかんでも取り入れるから滅茶苦茶な文化発展を遂げた異常な国である。
私もそんな国の国籍を持っているのだけでども、今は目を瞑ることにする。
私は一店の喫茶店へと入る。
――カランカラン
ベルが鳴ると同時に店主が入口へと視線を向ける。
いらっしゃいませ、聞こえるか聞こえないかという絶妙なさじ加減の声に小さく会釈し答える。
薄い笑みを絶やさない店主。レトロな雰囲気。
昨今の近代化の波押し寄せる日本でこのような喫茶店は絶滅の危機にある。つまり、レア。
そんなお店に来たのだ、折角だったら色々とやってみたいことをやろう。
勝手に決心した私は行動を起こす。
「マスター、いつものお願い。それからあちらの御客さんにもう一杯」
「え、えーと……」
絶やさぬ笑みから漏れる困惑。
「何やってんだ」
頭を鷲摑みにされる。
「イダダダ――」
「ごめんなさいね、ご店主。このバカが迷惑かけたみたいで」
「バカじゃないよ確信犯だよ」
「確信犯ね、あーはいはい」
(適当過ぎる――)
薄い笑みの店主からは安堵の表情が見て取れる。
あ、何かすみませんでした……。
「相変わらずバカやってるな」
うっ……。ぐうの音も出ない。
「12年振りだな」
笑顔で言う男。
そろそろ頭から手を退けてほしいのだが、何時になったら放してくれるのだろうか。
12年振りに再会した男の名は王子晴信という。監督業をしている。
私たちの出会いは12年前にまで遡る。
CMオーディション会場に二人は居た。
今でも鮮明に覚えている。当時4歳の私に、今現在、頭を鷲摑みにして笑っている男が言ったのだ。
「君の演技は別格だね。他の子たちとは違う。君は天才だよ。でも不合格。才能だけの子は要らないんだ」
突き付けられた言葉の刃はスゥーと私の心の奥深くまで到達し、トラウマという消えない傷を残した。
断じて根に持ってなどいない。ただ少し配慮の無いおじさんだと言う事を教えて差し上げているだけである。
そしてもう一人。私のトラウマ(挫折)の原因が居た。
喫茶店の中からその姿を確認すると私はひとまず身を隠した。
カランカランとベルが鳴る。
意地悪おじさんこと王子晴信となにやら話し込んでいる彼女に気付かれないようにすぐ後ろの席へと移動する。
私はタイミングを見計らって動いた。
「だーれだ?」
私の腕の中で疑問符を浮かべている彼女が、私の唯一負けた子(女優)である。
第一私、罪悪感とか覚えたことないんだよね。
私の気持ちと同じでどこか投げやりに見える高層ビルを横目に路地へと入る。
なんで日本ってこんなに統一感が無いのかしら。
毎度のことながら日本の無頓着ぶりには呆れる。高層ビルの脇に商店街。西洋建築の隣にアメリカ建築、日本家屋と統一感も何もない。
日本人は節操なく何でもかんでも取り入れるから滅茶苦茶な文化発展を遂げた異常な国である。
私もそんな国の国籍を持っているのだけでども、今は目を瞑ることにする。
私は一店の喫茶店へと入る。
――カランカラン
ベルが鳴ると同時に店主が入口へと視線を向ける。
いらっしゃいませ、聞こえるか聞こえないかという絶妙なさじ加減の声に小さく会釈し答える。
薄い笑みを絶やさない店主。レトロな雰囲気。
昨今の近代化の波押し寄せる日本でこのような喫茶店は絶滅の危機にある。つまり、レア。
そんなお店に来たのだ、折角だったら色々とやってみたいことをやろう。
勝手に決心した私は行動を起こす。
「マスター、いつものお願い。それからあちらの御客さんにもう一杯」
「え、えーと……」
絶やさぬ笑みから漏れる困惑。
「何やってんだ」
頭を鷲摑みにされる。
「イダダダ――」
「ごめんなさいね、ご店主。このバカが迷惑かけたみたいで」
「バカじゃないよ確信犯だよ」
「確信犯ね、あーはいはい」
(適当過ぎる――)
薄い笑みの店主からは安堵の表情が見て取れる。
あ、何かすみませんでした……。
「相変わらずバカやってるな」
うっ……。ぐうの音も出ない。
「12年振りだな」
笑顔で言う男。
そろそろ頭から手を退けてほしいのだが、何時になったら放してくれるのだろうか。
12年振りに再会した男の名は王子晴信という。監督業をしている。
私たちの出会いは12年前にまで遡る。
CMオーディション会場に二人は居た。
今でも鮮明に覚えている。当時4歳の私に、今現在、頭を鷲摑みにして笑っている男が言ったのだ。
「君の演技は別格だね。他の子たちとは違う。君は天才だよ。でも不合格。才能だけの子は要らないんだ」
突き付けられた言葉の刃はスゥーと私の心の奥深くまで到達し、トラウマという消えない傷を残した。
断じて根に持ってなどいない。ただ少し配慮の無いおじさんだと言う事を教えて差し上げているだけである。
そしてもう一人。私のトラウマ(挫折)の原因が居た。
喫茶店の中からその姿を確認すると私はひとまず身を隠した。
カランカランとベルが鳴る。
意地悪おじさんこと王子晴信となにやら話し込んでいる彼女に気付かれないようにすぐ後ろの席へと移動する。
私はタイミングを見計らって動いた。
「だーれだ?」
私の腕の中で疑問符を浮かべている彼女が、私の唯一負けた子(女優)である。
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