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第二幕 映画撮影と超新星
ACT36
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きっと引き篭もりってこうやって生産されるんだろうな。私はまさしく今、引き篭もり生産工場のベルトコンベアーの上に乗っている気分だった。
無気力で何もしたくない。美容の大敵である夜更かしを繰り返し、毎日穴が開くほど眺めていた台本は雑誌の山に埋もれていた。
昨夜からずっと点けっぱなしのテレビには、王子監督の撮った映画が映し出されている。アニメでも――愛しのユーリ様&カグラ様鑑賞会でもしていればよかったのにと今更ながら後悔していた。
見たいものある? と聞かれ、咄嗟に答えたのが「王子作品」だった。
私は根っからの女優だったのだと、この時改めて痛感した。
はあぁ……見なきゃよかった。そう思ったところでもう手遅れだ。
瑞樹ったらドラマ、映画関係なく王子監督の作品を片っ端からレンタルしてくるものだから一晩中見ても見終わらない。
そして、画面に映る俳優陣の演技に打ちのめされる。
なんでこんな演技ができるの? 零れた問いの答える者はいない。
反応くらいしてくれてもいいだろうに瑞樹は昨晩からずっと狸寝入りをしている。
その証拠に――
「瑞樹起きてる?」
「ん? 寝てるよ~」
三十分置きに声を掛けているが、間髪入れず(本人曰く)寝言が返ってくる。
「起きてるよね?」
「寝てるってば」
「話してるじゃん」
「だから寝言だって!」
このやり取りをかれこれ十数回繰り返している。
部屋の外では大人たちが各方面へと謝りの電話を掛けていた。
ドア越しに聞こえる「申し訳ありません」と謝る籠った声に胸が痛む。
「悪いって気持ちが少しでもあるなら部屋から出れば?」
寝言のくせに流暢に話しやがる。
「それとこれは別」
「結衣はプロでしょ? だったらスランプだとか言い訳する前に足掻いてみなよ」
腕を組み仁王立ちして私を見下ろす瑞樹眼光は鋭かった。
「やっぱり起きてたね」
「私、立ったままでも寝られるから」
「目、開いてるけど」
「目を開けたまま寝るのが私のスタイルなの」
……まあ、今はそんなことは横に置いといて、
「今いいシーンだからテレビの前から退けてくれる?」
「失礼」そう言うと瑞樹は足下に落ちていタオルケットを羽織って寝転がり、丸まった。
ドラマはラストシーンを迎え、主演を務めた草薙さんが鏡に映る自分の顔を眺めながら「醜い」と呟く。その言葉とは裏腹に、神々しい笑みを湛えていた。
未だにこのラストシーンは物議を醸していた。
故に関係者の間では語り草になっている。
視聴者に丸投げして成功した稀有な事例だと。
しかし、私に言わせてみれば爆発的ヒットは偶然でも運が良かったわけでもない。
キャスト全員の歯車がきれいに噛み合った作品。だからこそテレビ離れの叫ばれる昨今のドラマ業界で視聴率40%越えを記録したのだ。
映画を撮れば興行収入第一位を獲得。歴代興行収入の記録を何度塗り替えたことか。
そんな王子作品に穴をあけている。罪悪感が……考えるのはやめておこう。立ち直れなくなりそうだ。
ブルーレイプレイヤーからブルーレイディスクが吐き出される。
吐き出されたディスクを片付け、ふっと息を吐く。
被っていた布団を瑞樹に掛ける。
「ちょっと外出てくるね」
「うん……」
と言い終わると同時に寝息が聞こえてきた。
「ありがとね」
そっと感謝の言葉を宣べて部屋を出る。
さてと……どこに出かけようか。
マナーモードのスマホがヴィ~と激しく振動した。
私は相手の名前を確認して電話に出る。
「おはよう、ってもうこんにちはの時間かな?」
自然と笑みが零れた。
「今から逢えない?」
相手からのOKの返事に心を躍らせながらこっそりと蒼井邸を後にした。
無気力で何もしたくない。美容の大敵である夜更かしを繰り返し、毎日穴が開くほど眺めていた台本は雑誌の山に埋もれていた。
昨夜からずっと点けっぱなしのテレビには、王子監督の撮った映画が映し出されている。アニメでも――愛しのユーリ様&カグラ様鑑賞会でもしていればよかったのにと今更ながら後悔していた。
見たいものある? と聞かれ、咄嗟に答えたのが「王子作品」だった。
私は根っからの女優だったのだと、この時改めて痛感した。
はあぁ……見なきゃよかった。そう思ったところでもう手遅れだ。
瑞樹ったらドラマ、映画関係なく王子監督の作品を片っ端からレンタルしてくるものだから一晩中見ても見終わらない。
そして、画面に映る俳優陣の演技に打ちのめされる。
なんでこんな演技ができるの? 零れた問いの答える者はいない。
反応くらいしてくれてもいいだろうに瑞樹は昨晩からずっと狸寝入りをしている。
その証拠に――
「瑞樹起きてる?」
「ん? 寝てるよ~」
三十分置きに声を掛けているが、間髪入れず(本人曰く)寝言が返ってくる。
「起きてるよね?」
「寝てるってば」
「話してるじゃん」
「だから寝言だって!」
このやり取りをかれこれ十数回繰り返している。
部屋の外では大人たちが各方面へと謝りの電話を掛けていた。
ドア越しに聞こえる「申し訳ありません」と謝る籠った声に胸が痛む。
「悪いって気持ちが少しでもあるなら部屋から出れば?」
寝言のくせに流暢に話しやがる。
「それとこれは別」
「結衣はプロでしょ? だったらスランプだとか言い訳する前に足掻いてみなよ」
腕を組み仁王立ちして私を見下ろす瑞樹眼光は鋭かった。
「やっぱり起きてたね」
「私、立ったままでも寝られるから」
「目、開いてるけど」
「目を開けたまま寝るのが私のスタイルなの」
……まあ、今はそんなことは横に置いといて、
「今いいシーンだからテレビの前から退けてくれる?」
「失礼」そう言うと瑞樹は足下に落ちていタオルケットを羽織って寝転がり、丸まった。
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未だにこのラストシーンは物議を醸していた。
故に関係者の間では語り草になっている。
視聴者に丸投げして成功した稀有な事例だと。
しかし、私に言わせてみれば爆発的ヒットは偶然でも運が良かったわけでもない。
キャスト全員の歯車がきれいに噛み合った作品。だからこそテレビ離れの叫ばれる昨今のドラマ業界で視聴率40%越えを記録したのだ。
映画を撮れば興行収入第一位を獲得。歴代興行収入の記録を何度塗り替えたことか。
そんな王子作品に穴をあけている。罪悪感が……考えるのはやめておこう。立ち直れなくなりそうだ。
ブルーレイプレイヤーからブルーレイディスクが吐き出される。
吐き出されたディスクを片付け、ふっと息を吐く。
被っていた布団を瑞樹に掛ける。
「ちょっと外出てくるね」
「うん……」
と言い終わると同時に寝息が聞こえてきた。
「ありがとね」
そっと感謝の言葉を宣べて部屋を出る。
さてと……どこに出かけようか。
マナーモードのスマホがヴィ~と激しく振動した。
私は相手の名前を確認して電話に出る。
「おはよう、ってもうこんにちはの時間かな?」
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「今から逢えない?」
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