24 / 111
第一幕 転校生は朝ドラ女優!?
ACT23
しおりを挟む
ワイドショーへの出演はすぐに決まった。
どの局も私のコメントを欲しがった。
私は正直に答えた。自分の気持ちを素直に語った。その事が功を奏し世間からのバッシングは次第に消えていった。
その代わりに新たに浮上したのは真希の本性だった。
私の学校生活をマスコミがどこから嗅ぎつけたのか、世間の感心はそちらに向き始めていた。
『綾瀬真希の陰謀』なんてメディアが取り上げたものだから、さあ大変。真希はあっという間にに渦中の人物となった。
真希は黙秘を続けた。
***
どうしよう。電話帳に記録してある最初の番号を見つめる。
掛けたいけど、否定されるのが怖い。
裏切ってしまったから。
嘘をついた。傷つけた。
画面をタップする指が震える。
……あ、押しちゃった。
繋がらないで――、
「もしもし」
速攻で繋がっちゃった!?
……無視はよくないよね。
「も、もしもし」
「なに?」
必要最低限の返答。
やっぱり怒ってる。
「その、ごめんなさい。私、騙すつもりはなくて、でも結局、同じことだよね……怒って当然だよね」
尻すぼみになる声に気分も落ちる。
「別に怒ってねぇよ。テレビ見たから」
ちゃんと私の想い、伝わってたんだ。
「でも、直接聞きたい。だから、学校で待ってる」
一方的に通話は切られた。
***
約ひと月ぶりの学校。
祝日の学校は人がまばらでどこか寂しい雰囲気が漂っている。
頬を撫でる風に乗って部活をしている生徒の声が届く。
人の気配に振り返る。
「……赤崎くん」
「……よお」
ああ、生のカグラ様……じゃなかった、赤崎くんの声。
「ごめん……」
はあ、とため息を吐き、「そんな言葉が聞きたいんじゃねぇよ」と笑ってくれる。
だから答えた。「ありがとう」と。
そのあと、ひと月の間にあった出来事を赤崎くんは順を追って話してくれた。
スマートフォンが震える。
液晶画面には松崎さんの文字。
通話ボタンを押す。
「はいもしもし」
電話の向こうで松崎さんはどこか興奮している様で、息が荒かった。
「どうしたの?」
「決まったのよ!」
「なにが?」
「映画! 王子監督の映画のキャスティングに正式に決まったの!」
「ウソ、ほんとに!? やったー!!」
何事かときょとんとしている赤崎くんに説明する。
「おめでとう。良かったな」
「うん」
ああ、今日はなんて最高の一日なのだろう。
「おめでたついでに付き合わない?」
「はい……って、えっ!? いいんだけど、なんか軽っ!?」
ムードも何もない告白に戸惑っていると、通話中の電話口から漏れる声が私を呼ぶ。
「もしもし。もしもーし」
そう言えば、まだ通話中だった。
「ごめん、ごめん。で、なに?」
「大したことじゃないんだけど、アナタが好きなアニメ、ユーリ様? カグラ様? とかいうの、また始まるってよ」
「え、それって『絶海のプリンス』の第三期って事!?」
「うん。よく知らないけど多分そう」
おっしゃーッ。
歓喜に打ち震えた。またユーリ様とカグラ様の濃密な……ムフフ♡
「おーい。どうした?」
あっ、赤崎くんの事完全に忘れてた。
「聞いてユーリ様とカグラ様が戻ってくるの!」
「よくわかんない」
「大ニュースよ。今年一番の吉報よ」
「今年一番、俺の告白よりも重要?」
「もちろん!!」
釈然としない顔してるけどまあいいか。
何はともあれ王子監督の撮る映画が、復帰第一号の作品。加えて心のオアシス『絶海のプリンス』も始まる。
でも何よりも大きいのは新しい友達と……気恥ずかしいけど、彼氏の存在。
私、もっと躍進できる気がする。
普通とはほど遠いけれど、今の自分に満足してる。
どの局も私のコメントを欲しがった。
私は正直に答えた。自分の気持ちを素直に語った。その事が功を奏し世間からのバッシングは次第に消えていった。
その代わりに新たに浮上したのは真希の本性だった。
私の学校生活をマスコミがどこから嗅ぎつけたのか、世間の感心はそちらに向き始めていた。
『綾瀬真希の陰謀』なんてメディアが取り上げたものだから、さあ大変。真希はあっという間にに渦中の人物となった。
真希は黙秘を続けた。
***
どうしよう。電話帳に記録してある最初の番号を見つめる。
掛けたいけど、否定されるのが怖い。
裏切ってしまったから。
嘘をついた。傷つけた。
画面をタップする指が震える。
……あ、押しちゃった。
繋がらないで――、
「もしもし」
速攻で繋がっちゃった!?
……無視はよくないよね。
「も、もしもし」
「なに?」
必要最低限の返答。
やっぱり怒ってる。
「その、ごめんなさい。私、騙すつもりはなくて、でも結局、同じことだよね……怒って当然だよね」
尻すぼみになる声に気分も落ちる。
「別に怒ってねぇよ。テレビ見たから」
ちゃんと私の想い、伝わってたんだ。
「でも、直接聞きたい。だから、学校で待ってる」
一方的に通話は切られた。
***
約ひと月ぶりの学校。
祝日の学校は人がまばらでどこか寂しい雰囲気が漂っている。
頬を撫でる風に乗って部活をしている生徒の声が届く。
人の気配に振り返る。
「……赤崎くん」
「……よお」
ああ、生のカグラ様……じゃなかった、赤崎くんの声。
「ごめん……」
はあ、とため息を吐き、「そんな言葉が聞きたいんじゃねぇよ」と笑ってくれる。
だから答えた。「ありがとう」と。
そのあと、ひと月の間にあった出来事を赤崎くんは順を追って話してくれた。
スマートフォンが震える。
液晶画面には松崎さんの文字。
通話ボタンを押す。
「はいもしもし」
電話の向こうで松崎さんはどこか興奮している様で、息が荒かった。
「どうしたの?」
「決まったのよ!」
「なにが?」
「映画! 王子監督の映画のキャスティングに正式に決まったの!」
「ウソ、ほんとに!? やったー!!」
何事かときょとんとしている赤崎くんに説明する。
「おめでとう。良かったな」
「うん」
ああ、今日はなんて最高の一日なのだろう。
「おめでたついでに付き合わない?」
「はい……って、えっ!? いいんだけど、なんか軽っ!?」
ムードも何もない告白に戸惑っていると、通話中の電話口から漏れる声が私を呼ぶ。
「もしもし。もしもーし」
そう言えば、まだ通話中だった。
「ごめん、ごめん。で、なに?」
「大したことじゃないんだけど、アナタが好きなアニメ、ユーリ様? カグラ様? とかいうの、また始まるってよ」
「え、それって『絶海のプリンス』の第三期って事!?」
「うん。よく知らないけど多分そう」
おっしゃーッ。
歓喜に打ち震えた。またユーリ様とカグラ様の濃密な……ムフフ♡
「おーい。どうした?」
あっ、赤崎くんの事完全に忘れてた。
「聞いてユーリ様とカグラ様が戻ってくるの!」
「よくわかんない」
「大ニュースよ。今年一番の吉報よ」
「今年一番、俺の告白よりも重要?」
「もちろん!!」
釈然としない顔してるけどまあいいか。
何はともあれ王子監督の撮る映画が、復帰第一号の作品。加えて心のオアシス『絶海のプリンス』も始まる。
でも何よりも大きいのは新しい友達と……気恥ずかしいけど、彼氏の存在。
私、もっと躍進できる気がする。
普通とはほど遠いけれど、今の自分に満足してる。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
秘伝賜ります
紫南
キャラ文芸
『陰陽道』と『武道』を極めた先祖を持つ大学生の高耶《タカヤ》は
その先祖の教えを受け『陰陽武道』を継承している。
失いつつある武道のそれぞれの奥義、秘伝を預かり
継承者が見つかるまで一族で受け継ぎ守っていくのが使命だ。
その過程で、陰陽道も極めてしまった先祖のせいで妖絡みの問題も解決しているのだが……
◆◇◆◇◆
《おヌシ! まさか、オレが負けたと思っておるのか!? 陰陽武道は最強! 勝ったに決まっとるだろ!》
(ならどうしたよ。あ、まさかまたぼっちが嫌でとかじゃねぇよな? わざわざ霊界の門まで開けてやったのに、そんな理由で帰って来ねえよな?)
《ぐぅっ》……これが日常?
◆◇◆
現代では恐らく最強!
けれど地味で平凡な生活がしたい青年の非日常をご覧あれ!
【毎週水曜日0時頃投稿予定】
IO-イオ-
ミズイロアシ
キャラ文芸
◆あらすじ
ロゼとマキナは、エリオ、ダグラス、ポールと共に娯楽施設へ向かう途中、道端で子どもらにいじめられるロボットを助ける。そのロボットは名を「イオ」と言い、彼らに礼を言うと、その場で別れた。皆がゲームに夢中になる中、ダグラスは彼が気になるようで、ホーボットの話題を持ち出す。所有者のいないロボット通称ホーボットは、いわゆる社会現象だ。世間ではある噂が広がっていた。
◆キャッチコピーは「感情解放ーー想いを爆発させろ」
2人分生きる世界
晴屋想華
キャラ文芸
もしも、生まれた時から人生が2つ与えられていたとしたら、あなたはどう生きる?
この物語は、地球に住んでいる全員に現在から100年程前から人生が2つ与えられており、同時進行で2つの人生を生きていく物語。
主人公は、男性と女性の人生を歩んでいくのだが、こっちの人生の方が自分らしいと感じるなど好みというものが出てくる。人生が2つあるということは、悩みも2倍、幸せも2倍、そこがとても難しい。
人生が1つだったら、絶対に起きない事件も起きてしまう。そんな事件に巻き込まれながら、成長していく主人公達の姿を描いていく。
どう生きるのがあなたにとって、幸せなのだろうか。
17歳の青春あり、笑いあり、涙あり、複雑ありの2つの人生を中心に物語は進んでいく。
おきつね様の溺愛!? 美味ごはん作れば、もふもふ認定撤回かも? ~妖狐(ようこ)そ! あやかしアパートへ~
にけみ柚寿
キャラ文芸
1人暮らしを始めることになった主人公・紗季音。
アパートの近くの神社で紗季音が出会ったあやかしは、美形の妖狐!?
妖狐の興恒(おきつね)は、紗季音のことを「自分の恋人」が人型に変身している、とカン違いしているらしい。
紗季音は、自分が「谷沼 紗季音(たにぬま さきね)」というただの人間であり、キツネが化けているわけではないと伝えるが……。
興恒いわく、彼の恋人はキツネのあやかしではなくタヌキのあやかし。種族の違いから周囲に恋路を邪魔され、ずっと会えずにいたそうだ。
「タヌキでないなら、なぜ『谷沼 紗季音』などと名乗る。その名、順序を変えれば『まさにたぬきね』。つまり『まさにタヌキね』ではないか」
アパートに居すわる気満々の興恒に紗季音は……
十二支vs十二星座
ビッグバン
キャラ文芸
東洋と西洋、場所や司る物は違えど同じ12の物を司る獣や物の神達。普通なら会うはずの彼等だが年に一度、お互いの代表する地域の繁栄を決める為、年に一度12月31日の大晦日に戦い会うのだ。勝負に勝ち、繁栄するのは東洋か、それとも西洋か
おきつねさんとちょっと晩酌
木嶋うめ香
キャラ文芸
私、三浦由衣二十五歳。
付き合っていた筈の会社の先輩が、突然結婚発表をして大ショック。
不本意ながら、そのお祝いの会に出席した帰り、家の近くの神社に立ち寄ったの。
お稲荷様の赤い鳥居を何本も通って、お参りした後に向かった先は小さな狐さんの像。
狛犬さんの様な大きな二体の狐の像の近くに、ひっそりと鎮座している小さな狐の像に愚痴を聞いてもらった私は、うっかりそこで眠ってしまったみたい。
気がついたら知らない場所で二つ折りした座蒲団を枕に眠ってた。
慌てて飛び起きたら、袴姿の男の人がアツアツのうどんの丼を差し出してきた。
え、食べていいの?
おいしい、これ、おいしいよ。
泣きながら食べて、熱燗も頂いて。
満足したらまた眠っちゃった。
神社の管理として、夜にだけここに居るという紺さんに、またいらっしゃいと見送られ帰った私は、家の前に立つ人影に首を傾げた。
恵麗奈お嬢様のあやかし退治
刻芦葉
キャラ文芸
一般的な生活を送る美憂と、世界でも有名な鳳凰院グループのお嬢様である恵麗奈。
普通なら交わることのなかった二人は、人ならざる者から人を守る『退魔衆』で、命を預け合うパートナーとなった。
二人にある共通点は一つだけ。その身に大きな呪いを受けていること。
黒を煮詰めたような闇に呪われた美憂と、真夜中に浮かぶ太陽に呪われた恵麗奈は、命がけで妖怪との戦いを繰り広げていく。
第6回キャラ文芸大賞に参加してます。よろしくお願いします。
私が異世界物を書く理由
京衛武百十
キャラ文芸
女流ラノベ作家<蒼井霧雨>は、非常に好き嫌いの分かれる作品を書くことで『知る人ぞ知る』作家だった。
そんな彼女の作品は、基本的には年上の女性と少年のラブロマンス物が多かったものの、時流に乗っていわゆる<異世界物>も多く生み出してきた。
これは、彼女、蒼井霧雨が異世界物を書く理由である。
筆者より
「ショタパパ ミハエルくん」が当初想定していた内容からそれまくった挙句、いろいろとっ散らかって収拾つかなくなってしまったので、あちらはあちらでこのまま好き放題するとして、こちらは改めて少しテーマを絞って書こうと思います。
基本的には<創作者の本音>をメインにしていく予定です。
もっとも、また暴走する可能性が高いですが。
なろうとカクヨムでも同時連載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる