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第一幕 転校生は朝ドラ女優!?
ACT6
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「はいカァ~ット!」
いつも通りの裏返った声が飛ぶ現場。
新人さんかな? 監督の声に笑いをこらえてる。
私も初めて聞いた時には笑ったもんなぁ。
そんな事を思い出さていると声を掛けられた。
「お疲れ様。久しぶりだね結衣さん」
「久しぶり。去年の連ドラ以来?」
「そうだね。ああ、でも3か月前にカメラ越しにだけど共演したよね」
「あれは共演と言っていいのかしら? スタジオと中継先だから直接会っていないし」
「確かに会ったって気はしないね」
そう言うと彼―タルト(役名)こと山田凜太郎は笑う。
現在売出し中の若手俳優で真希の彼氏でもある。
ちなみに彼の芸歴は5年目。年齢は私より一つ上か同い年だったと思う。芸歴が序列を決める芸能界では私は彼にとって雲の上とは言わないまでも大先輩であることに変わりはない。
それはつまり真希も同様で、彼からしてみれば憧れの女優に違いなかった。
だからなのか、真希の事となると盲目的になる。
真希はとっかえひっかえ男を変える。
彼もすぐに犠牲者となるのだろう。可哀想に、いい人なのに。
私は憐みの視線を送る。
――?
私の視線の意味をくみ取れない彼は首を傾げる。
するとそこへ――、
「どうしたの凛くん?」
甘ったるい猫なで声で真希が近づいてくる。
凜太郎との会話で真希の存在に気付くのが遅れた結衣は逃げそびれた。
「あっ、フランちゃんだー」
「真希も休憩?」(馬鹿にしてるな?)
「うん、そうなの。セットチェンジとテープチェンジ待ち」
振り撒く笑顔があざとい。
自分の気持ちを内に秘めて笑う。
「でも、今日は真希の撮影ほとんどないよね? 何でまだいるの? 撮影うまくいってないの?」
「はあぁ!? 何言ってんの?」
(おおっ! 本性出たぁ~ッ)
綺麗な顔に嫌悪感を示す皺が浮かぶ。美人が台なしだ。
「そんな怒らないでよ真希。私たち友達? なんでしょ?」
首を傾げて見せる。
すると真希は眉をヒクつかせながらも何とか笑みを浮かべる。
「ええ、もちろんよ。私たち友達だから、このくらいのことなんてことないわ」
(無理しちゃって~)
私は勝ち誇った笑みを押さえきれない。
自分で私たちが友達だって言っちゃうからよ。
嘘なんか吐くものじゃない。それらはすべて自分に帰ってくるのだ。
悪いことはしちゃいけない。
「凜くん。行こう」
その場をすぐにでも離れたい真希がい言う。
「ダメよ真希。今日はタルトフランのCM撮影だからタルト役の凛太郎くんがいないと始まらないでしょ? だ・か・ら―」
凛太郎の腕を取り、引き寄せる。
女性慣れしていないのか胸が少し触っただけで頬を染めて顔を背ける。
(ウブなのねぇ)
ちょっと可愛いかも。
私が自分の彼氏で遊んでいるのが気に食わないのだろう。
真希は露骨に機嫌が悪くなる。
――チッ。
ついには舌打ちとともに体を反転させてスタジオを出て行ってしまった。
ああ、スッキリしたー。
真希からしてみれば彼氏は自分を引き立たせるアクセサリーと同じ。
凛太郎よりも人気のある子が出てくれば携帯の機種変よりもお手軽な感じで乗り換える。
尻軽め(悪口ではなく事実)。
真希のいなくなったスタジオでの仕事は最高に楽しくて至福の時間だった。
やっぱり私このお仕事が好きなんだな、と改めて確認した。
凛太郎との絡みも面白く撮れたんじゃないかな。
私個人としては満足のいく仕事ぶりだった。
後日、完成した映像を観たが出来栄えは最高だった。
真希がいないだけで私ってこんなにいい顔するのね。
本当に真希と一緒ならCM降りますって監督に言っちゃおうかしら。
もちろん冗談だけど、そんなこと口にしようものなら松崎さんだけじゃなくてお母さんや高野さんにも叱られちゃう。
なんてことを上機嫌な私が考えていた頃、週刊誌の見出しだが世間を賑わせていた。
『新田結衣、綾瀬真希の恋人奪略!? 純情派女優の素顔本性』
この記事を私が知ったのは週刊誌が発売されたさらに翌週のことだった。
いつも通りの裏返った声が飛ぶ現場。
新人さんかな? 監督の声に笑いをこらえてる。
私も初めて聞いた時には笑ったもんなぁ。
そんな事を思い出さていると声を掛けられた。
「お疲れ様。久しぶりだね結衣さん」
「久しぶり。去年の連ドラ以来?」
「そうだね。ああ、でも3か月前にカメラ越しにだけど共演したよね」
「あれは共演と言っていいのかしら? スタジオと中継先だから直接会っていないし」
「確かに会ったって気はしないね」
そう言うと彼―タルト(役名)こと山田凜太郎は笑う。
現在売出し中の若手俳優で真希の彼氏でもある。
ちなみに彼の芸歴は5年目。年齢は私より一つ上か同い年だったと思う。芸歴が序列を決める芸能界では私は彼にとって雲の上とは言わないまでも大先輩であることに変わりはない。
それはつまり真希も同様で、彼からしてみれば憧れの女優に違いなかった。
だからなのか、真希の事となると盲目的になる。
真希はとっかえひっかえ男を変える。
彼もすぐに犠牲者となるのだろう。可哀想に、いい人なのに。
私は憐みの視線を送る。
――?
私の視線の意味をくみ取れない彼は首を傾げる。
するとそこへ――、
「どうしたの凛くん?」
甘ったるい猫なで声で真希が近づいてくる。
凜太郎との会話で真希の存在に気付くのが遅れた結衣は逃げそびれた。
「あっ、フランちゃんだー」
「真希も休憩?」(馬鹿にしてるな?)
「うん、そうなの。セットチェンジとテープチェンジ待ち」
振り撒く笑顔があざとい。
自分の気持ちを内に秘めて笑う。
「でも、今日は真希の撮影ほとんどないよね? 何でまだいるの? 撮影うまくいってないの?」
「はあぁ!? 何言ってんの?」
(おおっ! 本性出たぁ~ッ)
綺麗な顔に嫌悪感を示す皺が浮かぶ。美人が台なしだ。
「そんな怒らないでよ真希。私たち友達? なんでしょ?」
首を傾げて見せる。
すると真希は眉をヒクつかせながらも何とか笑みを浮かべる。
「ええ、もちろんよ。私たち友達だから、このくらいのことなんてことないわ」
(無理しちゃって~)
私は勝ち誇った笑みを押さえきれない。
自分で私たちが友達だって言っちゃうからよ。
嘘なんか吐くものじゃない。それらはすべて自分に帰ってくるのだ。
悪いことはしちゃいけない。
「凜くん。行こう」
その場をすぐにでも離れたい真希がい言う。
「ダメよ真希。今日はタルトフランのCM撮影だからタルト役の凛太郎くんがいないと始まらないでしょ? だ・か・ら―」
凛太郎の腕を取り、引き寄せる。
女性慣れしていないのか胸が少し触っただけで頬を染めて顔を背ける。
(ウブなのねぇ)
ちょっと可愛いかも。
私が自分の彼氏で遊んでいるのが気に食わないのだろう。
真希は露骨に機嫌が悪くなる。
――チッ。
ついには舌打ちとともに体を反転させてスタジオを出て行ってしまった。
ああ、スッキリしたー。
真希からしてみれば彼氏は自分を引き立たせるアクセサリーと同じ。
凛太郎よりも人気のある子が出てくれば携帯の機種変よりもお手軽な感じで乗り換える。
尻軽め(悪口ではなく事実)。
真希のいなくなったスタジオでの仕事は最高に楽しくて至福の時間だった。
やっぱり私このお仕事が好きなんだな、と改めて確認した。
凛太郎との絡みも面白く撮れたんじゃないかな。
私個人としては満足のいく仕事ぶりだった。
後日、完成した映像を観たが出来栄えは最高だった。
真希がいないだけで私ってこんなにいい顔するのね。
本当に真希と一緒ならCM降りますって監督に言っちゃおうかしら。
もちろん冗談だけど、そんなこと口にしようものなら松崎さんだけじゃなくてお母さんや高野さんにも叱られちゃう。
なんてことを上機嫌な私が考えていた頃、週刊誌の見出しだが世間を賑わせていた。
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この記事を私が知ったのは週刊誌が発売されたさらに翌週のことだった。
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