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赤字脱却 編
お姫様と経済学①(選択回避の法則)
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私は退屈な日々を過ごしてた。
現在、王都市中心部の一角で商いをしているが、全くお客様が来てくださらない。
商品の種類に品揃えは王都一だと自負している。
何を隠そう、私――セルシア・アン・フェルメールは、王国の第二王女。
いわば絶対的権力者――王族の一人である。
資金は潤沢。
王国が後ろ盾となってくれている。王宮お墨付きのお店という訳だ。
なのにお客様が来ないのはどういう事なのだろう。
現在セルシアは身分を隠してお店を開いている。
正確には、国民の大半がセルシアの顔を知らないというのが正しい。
セルシアは稀に生まれる先祖返りという存在で、人間同士の間に生まれたにも関わらず、長寿として名高いエルフとして生まれた。
これも正確にはハーフエルフと言うのが正しい。
かつて王国では人間以外は魔の使いだと言われていた時代があった。
エルフを始めとする亜人種は人間の敵とされたのだ。
それは遠く昔の話で、今では王国には人間だけでなく多くの亜人が暮らしている。
魔の使いなどという迷信を信じている人はほとんどいないが、王族――政治というのはそんな迷信にも気を配らなくてはいけないらしい。
父親である国王陛下から王宮を出てくれないかと打診された。
第二王女であるセルシアが政治の中心に立つことはないだろうし、興味もなかった。
だから二つ返事で了承した。
それに王宮での生活は退屈そのものだった。何不自由ない生活はセルシアから様々な機会を奪った。
楽しい事も新しい発見も、何もかもが奪われた。
王女とは何をするにも護衛の近衛騎士が付いてくる。
真の自由はないのだ。
けれども恨んだりはしていない。今まで育ててもらった事には感謝している。
血の繋がった家族に変わりはない。
それでも何の罪もない娘を、王宮から実質追放することに良心が痛んだのか、国王は一生を遊んで暮らせる大金と、一人では広すぎる屋敷を与えてくれた。
商売人にでもなろうかと零すと、国王直々に許可証を発行してくれた。王国お墨付き、王都に数件しかない俗にいう名店と同じ扱いになった。
潤沢な資金と広大な屋敷を使って商売を始めた。
初めの内は客足もそれなりにあった。けれど開店からひと月経つ頃には店内は閑散としていた。
お客が来ない商売ほど退屈なものはない。
そんな折、店内にお客の来店を知らせるベルが鳴る。
セルシアは久し振りのお客に興奮しながら駆けた。
ふぅ、と小さく息を吐き、逸る気持ちを落ち着かせる。
笑みを浮かべて、
「ようこそ、《ジャンク・ブティコ》へ」
お客様は首を傾げて、
「ここはどこ?」と尋ねた。
現在、王都市中心部の一角で商いをしているが、全くお客様が来てくださらない。
商品の種類に品揃えは王都一だと自負している。
何を隠そう、私――セルシア・アン・フェルメールは、王国の第二王女。
いわば絶対的権力者――王族の一人である。
資金は潤沢。
王国が後ろ盾となってくれている。王宮お墨付きのお店という訳だ。
なのにお客様が来ないのはどういう事なのだろう。
現在セルシアは身分を隠してお店を開いている。
正確には、国民の大半がセルシアの顔を知らないというのが正しい。
セルシアは稀に生まれる先祖返りという存在で、人間同士の間に生まれたにも関わらず、長寿として名高いエルフとして生まれた。
これも正確にはハーフエルフと言うのが正しい。
かつて王国では人間以外は魔の使いだと言われていた時代があった。
エルフを始めとする亜人種は人間の敵とされたのだ。
それは遠く昔の話で、今では王国には人間だけでなく多くの亜人が暮らしている。
魔の使いなどという迷信を信じている人はほとんどいないが、王族――政治というのはそんな迷信にも気を配らなくてはいけないらしい。
父親である国王陛下から王宮を出てくれないかと打診された。
第二王女であるセルシアが政治の中心に立つことはないだろうし、興味もなかった。
だから二つ返事で了承した。
それに王宮での生活は退屈そのものだった。何不自由ない生活はセルシアから様々な機会を奪った。
楽しい事も新しい発見も、何もかもが奪われた。
王女とは何をするにも護衛の近衛騎士が付いてくる。
真の自由はないのだ。
けれども恨んだりはしていない。今まで育ててもらった事には感謝している。
血の繋がった家族に変わりはない。
それでも何の罪もない娘を、王宮から実質追放することに良心が痛んだのか、国王は一生を遊んで暮らせる大金と、一人では広すぎる屋敷を与えてくれた。
商売人にでもなろうかと零すと、国王直々に許可証を発行してくれた。王国お墨付き、王都に数件しかない俗にいう名店と同じ扱いになった。
潤沢な資金と広大な屋敷を使って商売を始めた。
初めの内は客足もそれなりにあった。けれど開店からひと月経つ頃には店内は閑散としていた。
お客が来ない商売ほど退屈なものはない。
そんな折、店内にお客の来店を知らせるベルが鳴る。
セルシアは久し振りのお客に興奮しながら駆けた。
ふぅ、と小さく息を吐き、逸る気持ちを落ち着かせる。
笑みを浮かべて、
「ようこそ、《ジャンク・ブティコ》へ」
お客様は首を傾げて、
「ここはどこ?」と尋ねた。
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