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理想郷編

鎧騎士③

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 強烈な蹴りを喰らった。
 バカみたいに一直線に突っ込んできたヴァンパイア。
 さすがに一瞬動きが止まってしまった。
 まだ詰めが甘かったか。反省反省。

 顎に入ったのか、世界が歪んでいる。
 そもそもこの兜、視界悪すぎ。
 今更だけど戦い辛い。

 なんでこんなデザインなんだ? 誰だこんな全身鎧フルプレートを作ったのは! 文句を言ってやらねば。
 ようやく視界が定まってきた。収束される世界の中で、

「私に一撃入れたこと、誇ってよいぞ」

 いかにも強キャラ感を醸《かも》し出す。
 知り合いの声優さんに教えて貰った、強キャラボイスで強がってみせる。

(めちゃくちゃ痛い。怪力女め! 絶対に許してやるものか!!)

 耳もキーンと鳴っている。
 よく聞こえないが周囲が騒がしい。
 怪力女の仲間がなにやら騒いでいる。

 悲鳴にも似た声が飛んでいる。

 視界がクリアに。
 ん? なんだ? 視線がおかしい。
 やたらと低いのだ。足しか見えない。
 対峙しているはずの怪力女も……脚が伸びていてギリギリ胸元くらいまでは仰ぎ見ることが出来る。
 仰ぎ見る?
 私の頭は地面に転がっていた。
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