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理想郷編

ユートピアと過去②

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 ナツダ島の観光地図。そこには記されていない、もう一つのユートピア――理想郷。
 人ではない者たちにとっての理想郷。
 それはすなわち、人間界とは相容れない世界。

 それが、

「ここなの?」
「話じゃ、ここのはずなんだけど……」

 サンに視線を送る。

「し、知らないっすよ!? 地脈に妖力を注がなくちゃいけないだなんて!?」
「地脈?」

 慌てて口をふさぐが、もう遅い。

「……私がやってみる」

 登丸先輩が何かを探るように、手を地面に這わせる。
 ここ、と短く言って魔法陣を展開。
 魔法陣が赤い光を放つ。

 すると、

 下から突き上げるような振動が襲う。
 目の前の景色が歪み、大きくねじれる。
 空間を裂くようにして現れたのは摩天楼まてんろう

「これがユートピア……」

 超高層ホテルのユートピアとは全くの別物。
 建物の高さで言えばホテルの方が高い。
 しかし、建物が放つ禍々しさは言うまでもなくこちらが上だ。

 建設途中なのだろう。塔の至る所から鉄骨が飛び出しており、それが塔の外観を禍々しく見せる要因の一つとなっている。

「え、えっと……みなさん、もしかしなくても行っちゃうつもりっすか?」
「だって、昨日アンタと真白を攫った奴らもコレの関係者なんでしょ?」

 希望はユートピアを指差す。

「い、いや!? 違うっすよ!!?」
「間違いないようね」
「違うんすよぉ~」

 オロオロしている。
 天然キャラも可愛いものだな。

「それに、妖怪相手だったら殺っちゃっても大丈夫だしね」

 ウィンクしても可愛くはならない、と教えてあげた方がいいのだろうか?
 やっぱり希望も妖怪なんだな。人間とは思考回路が違う。

「サンちゃん。案内してくれるとうれしいな」

 笑顔で頼んでみると、

「いいっすよ!」

 ちょろい。
 もう少し警戒した方がいいだろ。
 この一件が終わったら注意してあげよう。

 そうして難なく、もう一つのユートピアに人間研究部一行は潜入した。
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