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恐怖の学園編

暴かれた秘密③

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 警備局局長――九天茜は舌打ちをする。
 気に食わない。
 人間擁護の姿勢を取り続ける人間研究部。

 過去に一度、見せしめに部を潰そうと試みたのだが、当時一年生だった黒野忍に阻まれたのだった。
 一瞬、垣間見たあの顔は忘れはしない。
 学園に入学して相対した敵で唯一潰すことが出来なかった存在。

 人間研究部を潰せば貴方に一泡吹かせられる? 
 いや、そんなことはどうでもいい。目障りな存在は排除すればいい。
 黒野忍も人間研究会も潰す。

「局長。人間研究部の件なのですが、一つご報告したいことが」

 局員の一人が言う。
 何だ? と訊ねると、

「人間研究部の弱みについてです」
「ほう? 面白い。話せ」
「はい。人間研究部の一年生部員、皆月冬夜のことで面白い話を聴きました」
「皆月冬夜……ああ、男が一人いたな……」
「その正体についての話です」
「正体?」
「はい。その皆月冬夜の正体が人間だという話です」
「人間? そんなことあるはずがない。ここは大結界の中、人間が侵入できる場所ではない」
「しかし、皆月冬夜は今まで幾度も命の危機を迎えながらも、決して自らの正体を現さなかった、と」

 顔を顰めて、

「それだけでは人間とは確定できないではないか」
「いえ、証人もおります」

 局員の後ろに数人の人影。
 そのうちの一人が歩み出る。

「俺は確かに奴から感じたぜ、人間の匂いを。あれは確かに人間の匂いだ。旨そうな匂いだった」
「匂いか……」

 九天は逡巡し、そうだなと結論を出す。

「論より証拠。私直々に確かめるとするか……それと貴様、名は?」
「あぁ? 俺は田臥だ」
「そうか、貴様は口の利き方を知らんようだな」

 九天を囲むように焔が展開。
 それらの焔がまるで意志を持っているかのように宙を飛ぶ。
 そして着弾。それと同時に焔が燃え上がる。

 瞬く間に田臥を焔が包んだ。


 …………
 ……
 …


 ここだな……、
 九天は一年生のフロアに来ていた。
 三年生の九天が一年生のフロアに来ることなど普段ではありえない。

 怪奇学園最大の恐怖、その化身と言っても過言ではない九天が姿を現せば、皆がひれ伏すことだろう。
 それでは目的を達することが出来ない。

 完璧な変化、誰もその正体に気づかない。
 だからと言ってこの私が下等な存在を演じなくてはならんとは……腹立たしい。
 さっさと終わらせよう。

 すると向こうから目的の人物が歩いてくる。
 ――すれ違う。
 確信した。

 奴から匂ってきたのは間違いなく人間の匂いだ。
 九天は残忍な笑みを浮かべた。

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