元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

文字の大きさ
上 下
80 / 81
第二章 レーナス帝国編

第80話 大魔境へ

しおりを挟む
◇ 聖王国 防衛都市ガズール ◇

「旦那、こんなにいいんですかい?」

「ああ、取っておいてくれ。突然頼んでこんなに遠くまで付き合ってくれたびだ。帰りの護衛を雇うのに役立ててくれ。」

 私たちは帝国軍の追撃を振り切って、とうとう大魔境に最も近い都市ガズールへと辿たどり着いた。

 馬車屋のヘインには多めの報酬を渡し、祖国に帰って貰った。
 
 ガズールは、大魔境からの守りの拠点であり、魔物の侵攻に備えて厳重げんじゅう防備ぼうびほどこされていた。

 城壁にはいしゆみが備えられ、街中には騎士や兵士が巡回じゅんかいしていた。

 私たちはこれからあの大魔境を攻略しようとしている。しっかりと準備を整えてから出発しようと思う。

 街では武器や防具を新調し、ポーションや魔法ポーション、食糧などを充分に購入しておいた。

 幸いレベル7まで上がっていた異空庫は、かなりの容量を保管できるようになっており、異次元空間内の時間停止の効果が発動されるようになった。

 お陰で食料や討伐魔物の品質劣化を心配しなくて良くなり、利便りべん性が向上したのであった。

◇ 宿屋 漫遊まんゆう ◇

「ちょっと待て!タキモト!何故お前まで同室に?ちゃんともう一部屋取ってあるだろう!」

「ちょっと先輩!そんな悲しいこと言わないでくださいよ!ジュリアばかりズルいじゃないですかぁ?」

(またこのパターンか…。ジュリアといい、タキモトといい。ああ…頭が痛くなってきた。)

「リーナ、私とジンさんが同室なのは決定事項なんですっ!どうしてもと言うなら許可してあげてもいいですけど!?」

「何故にマウントポジション?私は可愛い可愛い後輩こうはいわくなんだからね!」

 その晩、宿屋では同衾どうきんしようとたくらやからが追加された。

 私としては、男としての魅力が得られなかった前世と違い、嬉しい限りだが、これはこれで大変なのである。

「はぁ…。わかった、わかったから。」

 私は結局、緊張によって身動き取れずに、眠れぬ夜を過ごすことになったのであった。
 

◇ 大魔境 ◇

「ジュリア、タキモト!連携して倒すぞ!」

「はい!」「了解!」

 私たちは大魔境に入って二日を過ごした。未だ目的地である『ネフィスの泉』には到着できていない。

 それどころか、強力な魔物との戦いを強いられて確実に疲労は蓄積されていたのである。

 目前には、オーガと呼ばれる魔物がいる。背丈は私よりも高く、体つきはたくましく、顔は非常に恐ろしい。

 まさにイメージしている鬼の形相であった。

「緑の力よ、相手を拘束こうそくせよ!『バインド!』」

 ジュリアの魔法により、オーガの行動が封じられる。

「グルァァァ!」

 しかし、大声を上げながらオーガは暴れ出してジュリアによる魔法のつるを引きちぎる。

「うわぁ、凄い馬鹿力!流石は大魔境の魔物ね?なら、これはどう?ブリザード!」

 タキモトの得意な水魔法『ブリザード』による攻撃がオーガに放たれた。

 オーガは瞬間的にこれを回避するが、左足に魔法が命中したことで、足が動かなくなっている。

「ナイス!ジュリア!タキモト!後は任せろ!『オーラブレイド!』からの『四神斬!』」

《ザン!ザン!ザン!ザン!》

「ギャァァァァ!」

 私は『オーラブレイド』によって剣の強度や斬れ味を向上させ、必殺の剣技『四神斬』にてトドメを刺した。

〘レベルが134に向上しました。〙

 まだまだレベルは上がり続けていた。

 ジュリアは102、タキモトは94になっており、私たちは恐ろしい大魔境でも何とか頑張っている。

 これから三回目の野営となる。夜も魔物が現れるが、交替番こうたいばんで睡眠が取れるので休みはなんとか取れている。

 大魔境は広大で険しい地形が続いており、道に迷いやすい。

 魔物は種類も多く、強さもバラバラだ。一部の魔物は知能が高く、罠や魔法を使ってくる。

 私たちは常に警戒しながら進んできた。

 徒歩で広大な大魔境を探索するため、目的地のネフィスの泉には未だ辿たどりつかない。

(明日には辿り着きたいものだ。)

 そう思いながら目を閉じたのであった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...