元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

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第二章 レーナス帝国編

第66話 ホセ村の魔物(タキモト視点)

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「リーナさん、ここだ。」

 私を案内してくれたのは、アシュアさんという漁師だった。

 私はこの村に魔物が出るということで、冒険者ギルドの依頼でやってきた。

 彼はその魔物をよく目撃していたということで、魔物の出没しゅつぼつするという海岸に私を連れて行ってくれた。

 しかし、今はその姿を確認することはできなかった…。

「今のところ、いないみたいね。」

「そうじゃな。まあ、気長に待とうか。」

「アシュアさん、この辺りではどんな魚が釣れるんですか?」

「ああ、色々おるよ。アジスやホッケイ、タインなどじゃな。」

(アジにホッケにタイだったりして!?流石にないか…。)

「ねえ、ここから釣りしてみてもいいですか?」

「構わんよ。普段は船で沖に出て釣るんじゃが、ここからでも投げ釣りならできるじゃろう。」

「じゃあ、魔物が現れるまで釣りを楽しみましょう。」

「ほう、やる気じゃな。うちの孫も好奇心旺盛こうきしんおうせいでリーナさんのようじゃった。」

「アシュアさんのお孫さんは?」

「ああ、外の世界に憧れて旅に出たんじゃ。」

「それは寂しいですね。」

「そうじゃな。孫とはいえ、娘のように育ててきたからの。」

 そう言いながら釣りの準備しているアシュアさんの背中は、何だか寂しそうに見えた。

「さあ、釣り道具だ。やってみるか?」

「はい!」

 私たちは、釣りを始めた。

 アヌシーという木で作られた竿さおに、細くて強い糸をつけ、その先にアシュアさんが自作した針をつけた。えさは、浜みみずだった。

「えいっ!」

 竿を振って、糸を遠くに飛ばした。

 初めての釣りだが、なかなか上手くできたと思う。

「おお、いいぞ!」

 アシュアさんも笑顔で釣りを始めた。

 その間、魔物は姿を見せなかったが、魚は次々と釣れた。

「やった!釣れたわ!」

「リーナさん、なかなか筋がいいのぅ!」

 アジスやホッケイ、タインという食べられる魚を釣り上げた。

 釣りは大成功だったが、魔物は最後まで現れなかった。

◇ ◇ ◇

「このホッケイ、おいしー!!」

 その夜、私が釣ったホッケイをアシュアさんが焼いてくれた。

 内臓を取り除いて塩を振って焼くだけのシンプルな料理だったが、脂が乗っていて、今まで食べたことのないほどの美味しさだった。

(先輩が食べたら、感動して泣くかもしれない。先輩はホッケが大好きで、居酒屋ではいつも頼んでいたもの。)

 お腹を満たして、今夜も村で休ませてもらった。

◇ ◇ ◇

《 翌朝 》

「リーナさん!起きてくれ!出たぞ!海の魔物じゃ!」

 アシュアさんに叩き起こされて、急いで海岸に向かった。

 海岸には、以前聞いていた通りの巨大な魔物がいた。

「イカ…みたい?」

 私は異能『インフォ』で相手の情報を収集した。

《基礎情報》
レベル:31
年齢:81歳
種族:イカリア(魔物)
説明:体長4メートルの海洋生物。触腕しょくわんをムチのように自在じざいあやつり、攻撃したり、捕食ほしょくするのに使う。雑食で口にできるものは何でも食べる。すみによる攻撃は視界を奪われる恐れがあるので注意が必要。

「レベル31か。なんとかなりそうね。」

「アシュアさん、任せてください!危ないから遠くに下がっていてくださいね。」

「わかった。頼むぞ。」

 私はなみぎわまで走ってイカリアと対峙たいじした。

「やっぱりイカの魔物ね。これならイカ焼きにできるかも?よし、イカ焼きにしちゃうぞ!!」

 イカリアは、たくさんの足で体を支えており、左右の触腕で攻撃を仕掛けてきた。

《ヒュンッ!》《ヒュンッ!》

 素早い攻撃が私に襲いかかる。

「うわっ!でも大丈夫!」

 頬を触腕がかすめるが、なんとか回避できた。

 私はそのまま、イカリアの側面に移動して反撃を開始した。

みず肆式よんしき水刃すいじん!』

 私は魔剣士スキルの水刃を使った。

 水刃は、水を刃のように顕現けんげんする技だが、実際には技を使っている間、常に水を高圧こうあつ噴射ふんしゃしており、その圧力によって刃の鋭さを表現している。

 水刃がイカリアに接触すると、水が触れた部分がきれいに切り裂かれた。

「キュォォォォ!」

 イカリアの体の一部が切断されて、悲鳴のような声が響いた。

 そしてすぐに触腕の攻撃が私を狙う。

みず伍式ごしき霧化きりか

 身体を素早く霧に変えて攻撃を回避し、再び『水刃』で触腕を切りつけた。

「キュワァァァ!」

 イカリアのうめき声が響いた。

(あっ、危険察知が反応!?もしかして!)

みず陸式ろくしき氷壁アイスウォール!』

 私は、スキルで危険を察知したため、急いで自分の目の前に氷の壁を作った。すると…。

《ブフォー!》

 イカリアから墨の攻撃が飛んできた。

 幸い、事前に察知できていたおかげで氷の壁が間に合い、視界を奪われることはなかった。

「ふぅ…。危なかった。じゃあ、とどめを刺しちゃうよ!『みず参式さんしき水跳すいちょう!』」

 私は、跳躍力ちょうやくりょくを高めて大きく飛び上がった。

 私はイカリアを跳び越えるほど高く空中に舞い、イカリアの頭上に落ちていく。

「いくよ!ラスト!『みず漆式しちしき氷剣ひょうけん!』」

 私は、鋭い氷の刃を作り出し、落下する勢いも利用してイカリアの頭部に刃を突き刺した。

「グギャァァァ!」

 断末魔だんまつまとともにイカリアは、大きな体を横たえて絶命した。

「やった!イカ焼きー!!」

「リーナさん、見事じゃったよ!さすが冒険者じゃ!素晴らしい戦いじゃった。これで村の被害はなくなるじゃろう。」

 私はついにこの巨大な魔物に勝利したのだった…。
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