63 / 81
第二章 レーナス帝国編
第63話 新たな旅立ちの前に
しおりを挟む
帝国との戦争が終わり、私はジュリアと一緒に聖都ラングラでしばらく静養していた。
その間、私たちにとって様々なことがあった。
聖王と謁見して莫大な褒美や勲章をもらったり、冒険者ギルドでは功績を評価されてSランクにランクアップしたりと、目まぐるしい変化があった。
そして、戦争によって命を落とした兵士たちへの葬儀にも参列した。我々と作戦を共にしたラシュホードもその一人だった。
あの作戦で唯一命を落とした聖騎士団長のラシュホードは、作戦の功績を称えられて男爵位の叙爵が与えられた。結果、残された家族がその名誉を受け取ったのだ。
副団長のカヌリュは、同じく作戦での功績を評価されて、ラシュホードの後任として聖騎士団長を任されることになった。
Sランク冒険者のバルトと、ランクアップしてSランクになったアーシャは相変わらずバリバリと依頼をこなしている。
彼らは最近になってパーティを組んだそうだ。パーティ名は、『陽炎』だと言う。
Sランク冒険者パーティ『雷光』は、予定通り防衛都市ガズールに移動して防衛依頼を受けている。日頃から強敵と戦っているので、最も成長が期待できそうなパーティだ。
ギルドマスターのミサは相変わらずだ。
いつも通り気怠そうだが、きちんと仕事はこなしているようだ。
◇ 聖王国 冒険者ギルド ラングラ支部 ◇
「えぇー!ジンとジュリアは行ってしまうの?お抱えの看板冒険者にするつもりだったんだけどぉ!」
「すまんな。私たちはこれから帝国へ向かうんだ。」「ミサさん。ごめんなさい…。」
「まあ、ジンは元魔剣士隊長だったんでしょ?仕方ないっしょ?でも、帝国軍に入って聖王国に攻めるのは止めてくんない?本気でダルいから…。」
「それは勿論だ。帝国軍に加わるつもりはないが、今後再び戦争にならないように私もできることはするつもりだ。」
「頼んだよ!アンタらは私らの誇りっしょ!また、来なさいよ!」
「ありがとう!」「ミサさん、また来ますから!」
私たちは、ギルドを後にした。
◇ 聖王国 聖墓地 ◇
―― 英雄ラシュホードここに眠る ――
私たちは、出発する前に墓地へ立ち寄った。
ジュリアは、ラシュホードの墓石に献花を供えた。
「ラシュホードさん。どうか安らかに眠ってください。」
私もジュリアの祈りにあわせて瞳を閉じた。
彼は先日まで肩を組んで笑いあっていた仲間だった。今はこうして墓の中で眠っていることに深い悲しみを感じた。
この世界は、日本とは違い簡単に人の命が奪われる。これが現実で、避けて通れない日常であった。
私は、これからも大切な物を守るために剣を取り戦うこともあるだろう…。しかし、心のない戦闘狂になってはいけない。
ラシュホードのように、人々を守るために剣を振るおうと思った。
「よう!ジン!ジュリア!来ていたのか。」
「カヌリュさん!」「おお、お前か…。」
「まさか、団長が命を落とすとはな…。」
「ああ。ラシュホードは強かったんだろ?」
「そうだな…。私が知る限りではこの国で右に出る者はいなかったな。もし、私がアッシュという男の相手だったなら、今頃は私が墓に入っていただろう…。」
「カヌリュ…。そう言うな。ラシュホードがアッシュの相手をしたからこそ、犠牲は最小限になったのかも知れん。」
「そうですよ!カヌリュさんはラシュホードさんの分まで頑張ればいいんです!ねっ?」
「ああ、そうだな!二人とも、ありがとう。そう言えば、お前たちこの国を出て行くんだってな。ミサから聞いたぞ!」
「ああ、すまないな。帝国にどうしても会わくてはならない人がいてな。」
「帝国軍司令官ザナクゥか…。」
「ああ…。私を裏切ったその真意を確かめたくてな…。」
「そうか…。おい、ジン!帝国に寝返って聖王国に攻めてくんなよ!」
「それ、ミサにも言われたぞ!」
「アハハ!まあ、そうなるわな…。お前たちがいなくなって寂しくなるよ。」
「ああ。だが、用が済めばきっと帰ってくるさ。カヌリュ、お前は聖騎士団長か。凄いじゃないか。」
「まあ、責任は副団長の時より随分と重くなったな…。」
「お前なら問題ないだろ。頑張れよ!カヌリュ!」
「ありがとう!必ずまた会おう!」
私たちは、再び拳と拳を重ね合った。その瞬間、私は彼の熱い想いを感じた。
カヌリュならきっと良い騎士団長になることだろう。彼は私たちの誇りだ。
私たちはカヌリュより先に聖墓地を後にした。彼はしばらくラシュホードや部下たちに祈りを捧げるつもりらしい。
彼の祈りは、亡き仲間たちの魂に届くだろうか…。
私たちが立ち去ろうとした時、捧げた献花は風になびいてゆらゆらと揺れていたのだった。
それはまるで、別れを惜しむかのように…。
その間、私たちにとって様々なことがあった。
聖王と謁見して莫大な褒美や勲章をもらったり、冒険者ギルドでは功績を評価されてSランクにランクアップしたりと、目まぐるしい変化があった。
そして、戦争によって命を落とした兵士たちへの葬儀にも参列した。我々と作戦を共にしたラシュホードもその一人だった。
あの作戦で唯一命を落とした聖騎士団長のラシュホードは、作戦の功績を称えられて男爵位の叙爵が与えられた。結果、残された家族がその名誉を受け取ったのだ。
副団長のカヌリュは、同じく作戦での功績を評価されて、ラシュホードの後任として聖騎士団長を任されることになった。
Sランク冒険者のバルトと、ランクアップしてSランクになったアーシャは相変わらずバリバリと依頼をこなしている。
彼らは最近になってパーティを組んだそうだ。パーティ名は、『陽炎』だと言う。
Sランク冒険者パーティ『雷光』は、予定通り防衛都市ガズールに移動して防衛依頼を受けている。日頃から強敵と戦っているので、最も成長が期待できそうなパーティだ。
ギルドマスターのミサは相変わらずだ。
いつも通り気怠そうだが、きちんと仕事はこなしているようだ。
◇ 聖王国 冒険者ギルド ラングラ支部 ◇
「えぇー!ジンとジュリアは行ってしまうの?お抱えの看板冒険者にするつもりだったんだけどぉ!」
「すまんな。私たちはこれから帝国へ向かうんだ。」「ミサさん。ごめんなさい…。」
「まあ、ジンは元魔剣士隊長だったんでしょ?仕方ないっしょ?でも、帝国軍に入って聖王国に攻めるのは止めてくんない?本気でダルいから…。」
「それは勿論だ。帝国軍に加わるつもりはないが、今後再び戦争にならないように私もできることはするつもりだ。」
「頼んだよ!アンタらは私らの誇りっしょ!また、来なさいよ!」
「ありがとう!」「ミサさん、また来ますから!」
私たちは、ギルドを後にした。
◇ 聖王国 聖墓地 ◇
―― 英雄ラシュホードここに眠る ――
私たちは、出発する前に墓地へ立ち寄った。
ジュリアは、ラシュホードの墓石に献花を供えた。
「ラシュホードさん。どうか安らかに眠ってください。」
私もジュリアの祈りにあわせて瞳を閉じた。
彼は先日まで肩を組んで笑いあっていた仲間だった。今はこうして墓の中で眠っていることに深い悲しみを感じた。
この世界は、日本とは違い簡単に人の命が奪われる。これが現実で、避けて通れない日常であった。
私は、これからも大切な物を守るために剣を取り戦うこともあるだろう…。しかし、心のない戦闘狂になってはいけない。
ラシュホードのように、人々を守るために剣を振るおうと思った。
「よう!ジン!ジュリア!来ていたのか。」
「カヌリュさん!」「おお、お前か…。」
「まさか、団長が命を落とすとはな…。」
「ああ。ラシュホードは強かったんだろ?」
「そうだな…。私が知る限りではこの国で右に出る者はいなかったな。もし、私がアッシュという男の相手だったなら、今頃は私が墓に入っていただろう…。」
「カヌリュ…。そう言うな。ラシュホードがアッシュの相手をしたからこそ、犠牲は最小限になったのかも知れん。」
「そうですよ!カヌリュさんはラシュホードさんの分まで頑張ればいいんです!ねっ?」
「ああ、そうだな!二人とも、ありがとう。そう言えば、お前たちこの国を出て行くんだってな。ミサから聞いたぞ!」
「ああ、すまないな。帝国にどうしても会わくてはならない人がいてな。」
「帝国軍司令官ザナクゥか…。」
「ああ…。私を裏切ったその真意を確かめたくてな…。」
「そうか…。おい、ジン!帝国に寝返って聖王国に攻めてくんなよ!」
「それ、ミサにも言われたぞ!」
「アハハ!まあ、そうなるわな…。お前たちがいなくなって寂しくなるよ。」
「ああ。だが、用が済めばきっと帰ってくるさ。カヌリュ、お前は聖騎士団長か。凄いじゃないか。」
「まあ、責任は副団長の時より随分と重くなったな…。」
「お前なら問題ないだろ。頑張れよ!カヌリュ!」
「ありがとう!必ずまた会おう!」
私たちは、再び拳と拳を重ね合った。その瞬間、私は彼の熱い想いを感じた。
カヌリュならきっと良い騎士団長になることだろう。彼は私たちの誇りだ。
私たちはカヌリュより先に聖墓地を後にした。彼はしばらくラシュホードや部下たちに祈りを捧げるつもりらしい。
彼の祈りは、亡き仲間たちの魂に届くだろうか…。
私たちが立ち去ろうとした時、捧げた献花は風になびいてゆらゆらと揺れていたのだった。
それはまるで、別れを惜しむかのように…。
1
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在三巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~
ままるり
ファンタジー
女子高生、美咲瑠璃(みさきるり)は、気がつくと泉の前にたたずんでいた。
あれ? 朝学校に行こうって玄関を出たはずなのに……。
現れた女神は言う。
「あなたは、異世界に飛んできました」
……え? 帰してください。私、勇者とか聖女とか興味ないですから……。
帰還の方法がないことを知り、女神に願う。
……分かりました。私はこの世界で生きていきます。
でも、戦いたくないからチカラとかいらない。
『どうせなら便利に楽させて!』
実はチートな自称普通の少女が、周りを幸せに、いや、巻き込みながら成長していく冒険ストーリー。
便利に生きるためなら自重しない。
令嬢の想いも、王女のわがままも、剣と魔法と、現代知識で無自覚に解決!!
「あなたのお役に立てましたか?」
「そうですわね。……でも、あなたやり過ぎですわ……」
※R15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する
神尾優
ファンタジー
山田博(やまだひろし)42歳、独身は年齢制限十代の筈の勇者召喚に何故か選出され、そこで神様曰く大当たりのチートスキル【超越者】を引き当てる。他の勇者を大きく上回る力を手に入れた山田博は勇者の使命そっちのけで異世界の散策を始める。
他の作品の合間にノープランで書いている作品なのでストックが無くなった後は不規則投稿となります。1話の文字数はプロローグを除いて1000文字程です。
転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です
途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。
ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。
前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。
ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——
一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——
ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。
色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから!
※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください
※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる