元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

文字の大きさ
上 下
62 / 81
第二章 レーナス帝国編

第62話 帝国の軍司令

しおりを挟む
◇ レーナス帝国 軍司令官室 ◇

「見事な大敗だな。ヤングクロップ。」

「いや、あれはだな…。」

《ザクッ!》《プシュゥゥゥ!》

 言い訳を始めたヤングクロップの首が、軍司令官ザナクゥの剣によって切り落とされた。

 血しぶきが高く飛び散り、首なしの死体が床に倒れた。

 殺された瞬間、彼は自分の命が終わったことに気づいたのだろうか…。

「この無能めが!こんな奴を軍団長にしたのは誰かね?私は今まで知らなかったぞ!」

 重鎧じゅうがいに身を包んだザナクゥの顔は、誰にも見えなかった。

 だが、彼の怒りは、部屋にいる者全員に伝わった。

「オーベル!お前は何をやっていた!」

「はっ!」

 整った顔立ちと清潔な服装のオーベルは、ザナクゥの問いに即座そくざに答えた。

「報告します。出国前は閣下かっかのご命令で私が軍団長をつとめておりました。しかし、出国後に皇帝陛下から直々に変更を命じられました。」

「なんだと!?皇帝陛下の命令だと!?」

「はい…。」

「詳しく申せ!」

「はっ!野心的なヤングクロップが皇帝陛下に取り入り、私を軍団長から外すように仕向けたのだと思われます。」

「くそっ…アレス皇帝め…。」

「彼は私に代わって軍団長になり、自分の思い通りに戦闘を指揮しました。その結果が、この惨状さんじょうです。」

「わかった…。あいつ皇帝には、私が直々じきじき指導しどうしておこう。オーベル!お前は再び軍団長を任せる!失われた兵力を補充し、戦力を立て直せ!」

御意ぎょい!全力を尽くします!」

 オーベルは、礼をして静かに部屋を出た。

「まったく、あいつらのせいで計画が遅れた。非常に不愉快ふゆかいだ!お前たちもな!一体何をやっていたんだ!」

 ザナクゥは、魔剣士隊のメンバーに向かって怒鳴った。

「聖王国には、我々の動きを察知さっちした者がいたようです。聖王国の最強の戦士たちが、我々の進路に立ちはだかりました。」

 魔剣士隊の最上位であるアッシュが一歩前に進み、受け答えする。

「ふん…。だが、お前たちは魔剣士隊だ。負けるはずがないだろう。どうして敗北したのかね?」

「聖王国の聖騎士団長や副聖騎士団長は、我々と互角の力を持っていました。さらに、Sランクの冒険者も何人もいました。そして、最も厄介やっかいだったのは、ジン隊長でした。」

「ジンディオールだと!?何を言っている。アレは、フレイが殺したはずだぞ!」

「詳細は不明ですが、ジン隊長は何らかの方法でよみがえったようです!」

「なに!?蘇っただと!?賢者の力か…それとも神々のしわざか…。いや、まさかあのアイテムか?ウムム…。では、ジンディオールはどうだった?『魔剣士:きわみ』をうばわれて、弱くなっていたはずだ!」

「いえ…彼は戦闘中に竜人りゅうじんに変身しました。そして、フレイ隊長を一撃で倒しました。」

「まさか…!!ヒューマンの血が濃いはずのアレが…竜人に…。」

「軍司令官閣下…??」

「うむ…考え込んでしまった。それで、アレは何か言っていたのかね?」

「は?はい…。いずれ閣下に話をつけると言っていました。」

「そうか…。了解した。お前たち魔剣士隊は、今から『ラボ』に行け!能力を強化するために手をほどこすぞ!」

「はっ!かしこまりました!」

 魔剣士隊の四人は、敬礼して退出していった。

「ジンディオール…。」

 鎧に隠された彼の心は、誰にも読めなかったのであった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルテスター!本来大当たりなはずの数々のスキルがハズレ扱いされるのは大体コイツのせいである

騎士ランチ
ファンタジー
鑑定やアイテム増資といったスキルがハズレ扱いされるのは何故だろうか?その理由はまだ人類がスキルを持たなかった時代まで遡る。人類にスキルを与える事にした神は、実際にスキルを与える前に極少数の人間にスキルを一時的に貸し付け、その効果を調査する事にした。そして、神によって選ばれた男の中にテスターという冒険者がいた。魔王退治を目指していた彼は、他の誰よりもスキルを必要とし、効果の調査に協力的だった。だが、テスターはアホだった。そして、彼を担当し魔王退治に同行していた天使ヒースもアホだった。これは、声のでかいアホ二人の偏った調査結果によって、有用スキルがハズレと呼ばれていくまでの物語である。

【追放29回からの最強宣言!!】ギルドで『便利屋』と呼ばれている私。~嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか最強無敵になれました~

夕姫
ファンタジー
【私は『最強無敵』のギルド冒険者の超絶美少女だから!】 「エルン。悪いがこれ以上お前とは一緒にいることはできない。今日限りでこのパーティーから抜けてもらう。」 またか…… ギルドに所属しているパーティーからいきなり追放されてしまったエルン=アクセルロッドは、何の優れた能力も持たず、ただ何でもできるという事から、ギルドのランクのブロンズからシルバーへパーティーを昇格させるための【便利屋】と呼ばれ、周りからは無能の底辺扱いの嫌われ者だった。 そして今日も当たり前のようにパーティーを追放される。エルンは今まで29回の追放を受けており次にパーティーを追放されるか、シルバーランクに昇格するまでに依頼の失敗をするとギルドをクビになることに。 ギルドの受付嬢ルナレットからの提案で同じギルドに所属する、パーティーを組めば必ず不幸になると言われている【死神】と呼ばれているギルドで嫌われている男ブレイドとパーティーを組むことになるのだが……。 そしてそんな【便利屋】と呼ばれていた、エルンには本人も知らない、ある意味無敵で最強のスキルがあったのだ! この物語は29回の追放から這い上がり『最強無敵』になった少女の最強の物語である。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...