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第一章 ジンディオールの復讐編

第58話 ふくろう渓谷の戦い(勝敗)

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 魔剣士隊と聖騎士団の戦いは、苛烈かれつきわめていた。

 聖王国側として戦うジンディオールは、魔剣士隊長であるフレイと一騎打いっきうちちをり広げていた。

 二人の間には、気迫きはくがぶつかり合うほどの緊張感がただよっていた。

 そして、ジンディオールとフレイが刃を交えている頃、他の仲間たちは…。

◇ ◇ ◇

「ラシュホード!」「団長!!」「クソがぁぁ!!」

 アッシュは、左手に聖騎士団長ラシュホードの首をつかんでいた。

 魔剣士隊序列じょれつ二位の男は、聖騎士団最強の男を倒したのだ。

 しかし、アッシュも利き腕を失い、その戦いが過酷かこくだったことは明らかだった。

 バルトは、魔剣士隊序列三位のアランを倒したが、左腕と左足を失い、意識不明の重体となっていた。

 Sランク冒険者ですら、わずかの差での勝利であり、魔剣士隊の強さは本物だった。

「バルト!死ぬな!絶対に助けてやるからさ!」

 ギルマスのミサは、序列四位のカナックを氷づけにして勝利し、直ぐにバルトの治療に当たっていた。

《一方、ジュリアは…。》

「聖なる光よ、傷ついたこの身を癒したまえ!『ヒール!』」

 ジュリアは、ゾフの攻撃によって負傷した右足を魔法で治癒ちゆした。

 魔力増幅まりょくぞうふくというユニークスキルのお陰で、瞬時に傷は回復していた。

「何だその異常な回復は!?やはり油断できない相手のようだな。隊長は良く言っていた。自分の想定を上回る強者がいるとな。もう油断しない!全力でお前を倒す!」

つちろくしき:アースソード!』

 ゾフは、アースソードという技で数多くのがんけん顕現けんげんさせた。彼の背後には30本もの鋭い剣が浮かんでいた。

「これなら次は避けられまい。『剣よ!敵を刺し殺せ!』」

 ゾフの合図で大量の岩剣がジュリアに向かって飛来ひらいした。

 速度もその数も常軌じょうきいっしており、ジュリアの足では回避は難しい。

魔障壁ましょうへき!!』

 岩剣が四方八方からジュリアの身体を貫こうとしていた所、ジュリアは魔法の結界をその身の周囲に構築こうちくしたのである。

《バババババン!》

 大きな激突音げきとつおんひびいた。

 それは、魔障壁が無事機能し、岩剣が障壁に激突した音であった…。

 激突した岩剣は、粉々になり瓦礫がれきの山をきずいたのである。

「俺のアースソードが全て防がれただと…!?馬鹿な!この女、一体何者なんだ?」

「緑の力よ、相手を拘束こうそくせよ!『バインド!』」

 ジュリアは、相手がひるんだすきを逃さずに、すぐに拘束魔法の「バインド」を使用した。

 地面から伸びた強固なツルは、ゾフの四肢を直ちにに締め上げて、その自由を奪ったのである。

「しまった!これは!?動けない!畜生ちくしょう!放せ!」

「ごめんなさいね。あなたを倒さないと、私が倒されてしまうものね。他の方の手助けもしなくてはいけないし…。」

 ジュリアは、ゆっくりと魔力を高め始めた。次の手で確実に終わらせるために…。

「や、やめろ!やめてくれ!こ、こうさん…。」

「水のつぶてよ、ほとばれ!『ウォーターショット!』」

《ピュピュピュピュピュピュン!》

「ぎゃああああ!!」

 ジュアンに続いて魔剣士隊の新戦力は、その役割を終えたのであった…。
 

◇ ◇ ◇

 残る副団長のカヌリュや、Sランク冒険者パーティ『雷光』の三名は、他の魔剣士隊と互角ごかくに戦闘を繰り広げていた。

 更にはAランク冒険者のアーシャのサポートも入り、聖王国側がやや優位となっていた。

「くそ!こちらの方が人数的に劣勢れっせいだぞ!」

「ジュアンが殺されて補充がないのは痛い…。我々は本来は10名編成なのによ!」

弱音よわねいてんじゃねぇ!ゴラン!ヒューマンにボコられるぞ!」

「それだけは御免ごめんだぜ!『かぜよんしき鎌鼬かまいたち!』」
 

◇ ◇ ◇ 

「ミサさん!バルトさんは?」

「あ、ジュリア!よく来た。止血はしたよ。あたしゃ、回復はできないからアンタが頼りだよ。」

 Sランク冒険者のバルトさんは、相手を何とか倒せたものの、左腕と左足を失い意識不明の重体であった。

「任せてください。あの…失った手足は?」

「これだよ!アンタなら治せるっしょ?」

「何とかやってみます。聖なる光よ、傷ついた者を癒したまえ!『ハイヒール!』」

 ジュリアは、ミサに切断された手足を切断面に接着せっちゃく保持ほじして貰った上で、レベルアップによって獲得した上位魔法『ハイヒール』を使用した。

「あ…切断された手足が…くっついちゃったよ!うそぉ!ってアンタそれ、上位魔法じゃん!」

「良かった!初めて使いましたが上手くできたようです。」

「ん…んん。あ、俺は一体…。あれれ?無くなった手足があるぞ!」

「おい!バルト!このジュリアがアンタを治したんだよ!感謝しな!面倒だけど他の仲間が苦戦してるっしょ。助けにいくよ!」

「お、おう!ジュリアだったか?おんにきるぞ!おい!ギルマス!待てって!」

 ギルマスのミサと、見事回復したバルトは、仲間の応援に向かっていった。

「ジンさんは大丈夫かしら?」

 別の場所に移動して戦っているジンのことが気になっているジュリアであった…。
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