元最強魔剣士に転生しちゃった。～仇を追って旅に出る～

第一章 ジンディオールの復讐編

第56話 ふくろう渓谷の戦い(火花)

　我々は魔剣士隊との接触せっしょくに成功した。橋を爆破し、馬車を封鎖ふうさしたことで、我らの任務は完了したと言えるだろう。

　ジンディオールにとっては、裏切り者フレイへの復讐ふくしゅうの機会であった。彼はかつて自分を殺した男に、今こそ決着をつけると心に誓ちかっていた。

　フレイもまた、ジンディオールが魔剣士隊長だった頃の因縁いんねんを晴らすべく、正面から挑いどむつもりでいるようだ。

「フレイ隊長！魔剣士隊の名にかけて、このまま見逃すわけにはいかないぞ！俺たちはひと暴れさせて貰うぞ！」

「どうぞご自由に！そこの雑魚ざこどもには興味ありませんから。」

　魔剣士隊の面々は、静観せいかんする気はなさそうだ。

　聖王国側のメンバーも、闘志とうしに燃えていた。

《　聖騎士団長　ラシュホード　》

「さあて、俺様が遊んでやろう。そこのお前！お前が強そうだ。」

　聖騎士団長ラシュホードを指名したのは、魔剣士隊序列じょれつ二位であるアッシュだった。
　
「俺か？いいだろう。大陸最強だと天狗てんぐになっているようだが、世の中には他にも強い奴がいるってことを身をもって教えてやるよ！」

　二人とも体格が良く、強者きょうじゃの風格ふうかくが漂ただよっていた。

「行くぞ！」「来い！」

「ふぁぁぁ！」「おおぉぉ！」

《キーン！》

　剣がぶつかり合い、火花が散った。戦いの幕が開いた。

『闇やみ・陸式ろくしき：アビスブレイカー！』

「なんだ、その攻撃は！？なら、こっちもやるかよ。『バーストスラッシュ！』」

《ドカァァァン！》

　剣圧けんあつがぶつかり合い、衝撃波しょうげきはが周囲に広がっていった…。
　

《　Sランク冒険者　バルト　》

「おっ！聖騎士団長は、もうおっぱじめたかよ！せっかちだなっ！せぃや！」

《キン！》

「おぉー！オッサン、なかなかいいねぇ！こりゃあ、楽しめそうだ。」

　Sランク冒険者バルトと、魔剣士隊序列三位のアランが激突した。

「小僧！舐めるなよ！お前の首をはねてやるぞ！」

「怖い怖い…。なんてね。『光ひかり・肆よん式しき：光滅斬こうめつざん！』」

《シュッ！》

　光の刃がバルトの喉元のどもとを狙ねらった。危機一髪ききいっぱつでバルトは回避したが、首に細い傷ができて血がにじんだ。

「くっ！コイツ…。鋭い攻撃だぜ。」
　

《　冒険者ギルドマスター　ミサ　》

「めんど！どうしてアタシが戦っている訳？アタシは普通の一般市民なんですけどぉ？」

　ミサは、魔剣士隊第四位のカナックと戦っていた。

「ぬかせ！この俺に傷を負わせてタダで済むと思うなよ！『音おと・参さん式しき：音破砕おんはさい！』はぁぁぁ！」
　
《ドドドドッ！》

　カナックは、音波を乗せた剣圧を放った。音波が地面をえぐり、ミサに迫った…。

『アースウォール！』

《ズドーン！》

「痛そうだったから、防いじゃった！お兄さん何か執拗しつこいんだけどぉ！」

「小癪こしゃくな魔法士がぁ！」
　

《　ジュリア　》

「お前が一番弱そうだな。俺はジュアンみたいに無茶むちゃはしない。確実に倒せる相手を選んで、殺してやる！」

「見くびらないで下さい！私はこれからも彼の隣を歩き続けられるように、ここで負ける訳にはいかないんです！」

　ジュリアの相手は、魔剣士隊第九位のゾフだった。彼はまだ経験の浅い新人だった。

「やぁ！」

《ヒュンッ！》

　ジュリアは、ゾフに向かって矢を放った。レベル7の弓術は素晴らしく、狙いも速度も達人級だった。しかし…。

「速っ！あっぶねぇ…。頬ほほをかすめただと？やりやがったなぁ！」　
　
　矢は僅わずかにゾフの頬をかすめて外れてしまった。いや、これはゾフがすんでのところを回避したのだろう。

　ジュリアは、すでに魔力を高めて次の攻撃に備えていた。

「ファイアボール！」

　ジュリアは、直ぐに詠唱えいしょうを開始して炎の礫つぶてをゾフに放った。

「やられたらやり返す！『土つち・壱いち式しき：岩飛弾がんひだん！』」

　ゾフは、ジュリアの魔法攻撃とほぼ同時に岩石を出現させて、ジュリアに向けて放った。

《ジュバッ！》

　ジュリアのファイアボールは、ゾフの岩石に衝突しょうとつして消失した。

　尚、勢いの落ちない岩石はそのままジュリアに向かっていった…。

「きゃあ！」

　ジュリアは、ギリギリ岩石の激突を免まぬがれたが、足にかすめて傷を負ったのだった｡

「おっしぃ！次は外さねぇぞ！」

　ふくろう渓谷での戦闘は、激化していた…。