元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

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第一章 ジンディオールの復讐編

第49話 緑竜(後編)

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「グロォォォー!」

《ブォッ!》

 緑竜りょくりゅう鋭爪えいそうによる一撃が、カヌリュの身体を襲った。

 彼はかろうじてそれを避け、無傷で済んだが、緑竜の攻撃は強烈きょうれつで、一度でも受ければ致命傷ちめいしょうになるだろうと思った。

参式さんしき魔煌列斬まこうれつざん!』

 私は、にせ魔剣士スキルを発動させた。

 緑竜の間合いの外から、鋭い剣圧けんあつを放ったのだ。

 土を削りながら、剣圧は緑竜の体に突き刺さった!

「グギャァァァ!」

 緑竜のうろこつらぬき、内部にまでダメージを与えたようだ。緑竜の体液が飛び散った。

 緑竜は傷口から血を流しながら、怒りと苦しみに満ちた声で咆哮した。

「ゴォォォォー!」

 そして、口から火炎の息を吐き出して、私たちに反撃してきたのである。

 私は素早く身をかわした。直撃されれば、炭になってしまうのは間違いない。この戦いでは、生き残るためには回避が必要だった。

 私とカヌリュは二人で協力して、緑竜にいどんでいた。そのおかげで、緑竜は私たち二人の動きに気を配らなければならなくなり、攻撃のすきが増えていた。

 私たちはその隙を見逃さずに、緑竜に次々と攻撃を仕掛けていた。

 戦況は少しずつ私たちの有利に傾いていたが、決定的な一撃を与えきれずにいた。緑竜はなかなか倒れない強敵だった。

「クソッ!手強いな。」

「ああ。だがまだ負けたわけじゃない。少しずつでも優位に立っている。」

「ギャオォォ!」

 緑竜は、容赦ようしゃなく攻撃を続けた。

 戦闘は、一進一退いっしんいったいの状態になった。そのときだった。

「立ち上がれ!戦士たちよ~!」
「今ここに!力合わせ~!」
「呼び覚ます勇気と負けない強さを!」

 突然、美しい歌声が響いた…。

「ん?この歌声は?」

「ジュリアの『』だ!」

「歌に乗せた魔力が私たちに力を与えてくれる。」

 私はジュリアの能力をカヌリュに説明した。

「歌で能力強化バフだと!?聞いたこともない。いや。しかし…。確かに感じる!」

 最初は驚いたカヌリュだったが、ジュリアの魔歌が効果を発揮し、それを実感し始めたようだ。

「だろ?身体能力が上がっている。」

「すごいな!力が増したし、身体も軽くなった。ジン!これなら行けるぞ!」

「ああ!カヌリュ!倒すぞ!」

 私たちは、ジュリアの支援を受けて、大きく能力を向上させた。

 元々身体能力の高い緑竜に対しても、これなら互角に戦えるかもしれない。

『雷剣!』『十字斬!』

 カヌリュは、一気に緑竜の間合いに入り込み、自慢の剣術スキルを繰り出した。

 剣に雷属性を付与する属性剣『雷剣』と、上下左右に深く切りつける剣術スキル『十字斬』を使った。

 瞬足による移動で緑竜は対応できず、鋭爪で攻撃するもかわされて、カヌリュの必殺技が命中した。

「グギャァァァ!」

 緑竜の首に深い傷が開き、血が噴き出した。緑竜は、反射的に一歩後退した。

「ジン!ひるんだぞ!今だ!行け!」

「任せろ!」

「ゴォォォォ!」

 あせった緑竜は、再び私に向かって火炎の息を吐いた。

 私は『修羅の瞬脚』によって既に脚力が上がっている上に、さらにジュリアの魔歌によって能力強化が加わっている。

 広範囲の攻撃でも、十分に回避できる。

 相手の火炎の息をかわしながら、さらに接近した。

「よし!火炎の息はその最中とその後に隙ができる。『玖式きゅうしき鬼神きじんい!』」

 私は、決め手となる能力強化バフをかけた。

 鬼神喰いは、脚力だけでなく腕力を含めた全能力を上げる、私の能力の中でも最高位の技だ。

 これまで以上に身体能力が上がったのを感じると、火炎の息を吐き終えて動きが止まった緑竜に対して、全力で攻撃を仕掛けた。

陸式ろくしき:死神の大鎌おおがま!』

《ブンッ!》《ザクッ!》

 死神が大鎌を振るうのをイメージした斬撃は、空間をも切り裂くほどに強力だった。

 あまりにも一瞬の出来事で、時間が遅く進んでいるように感じた。

 緑竜の首には、一本の線がゆっくりと浮かび上がり、はっきりと確認できると、首がずれて頭部が地面に落下した…。

 首から噴き出す血の嵐を私は全身に浴びながら、ようやく強敵の緑竜を倒したことを理解した。

「まさか!?一撃でか?ジン!やったな!この野郎!やってくれたぜ!」

 自分でも信じられなくて立ちすくんでいると、喜びにあふれたカヌリュが飛びついてきた。

「あっ!カヌリュさん!ダメですよ!ジンさんは私のものですよ!」

 すると、すぐにジュリアも反応してやってきた。

「私たちは勝ったのか?」

 まだ信じられなくて、私は当然の質問を投げかけた。

「ええ!ジンさん!ジンさんがあの緑竜をやっつけたんです。やっぱりジンさんは凄いです!」

 今度はジュリアに抱きつかれてしまう。

「おい!ジン!ジュリア!お前ら血塗ちまみれだぞ!」

「お前もな、カヌリュ!」

「アハハ!」「アハハ!」

 私たちは、緑竜を倒した達成感や、死なずに生きていたことで興奮し、喜び、そして笑いあった。

 信じられないことにSランクの緑竜に勝利したのだった…。

〘レベルが81に上がりました。〙
〘剣術がレベル8に上がりました。〙
〘インフォがレベル6に上がりました。〙
〘隠蔽がレベル6に上がりました。〙
〘気配察知がレベル4に上がりました。〙
〘危険察知がレベル4に上がりました。〙
〘毒耐性がレベル4に上がりました。〙
〘麻痺耐性がレベル4に上がりました。〙
〘呪い耐性:レベル1を獲得しました。〙
〘精神耐性:レベル1を獲得しました。〙
〘剣技:四神斬が進化しました。〙
〘竜族の血が覚醒しました。〙
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