元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

文字の大きさ
上 下
48 / 81
第一章 ジンディオールの復讐編

第48話 緑竜(前編)

しおりを挟む
 私たちがヘルイーグルを討伐した後、再び警報が鳴り響いた。

 急いで駆けつけた先には、ガズール駐留軍の司令カヌリュと、目を疑うほどの相手が待ち構えていた。

「カヌリュ!」

「君たちか…。良く来てくれた。しかし、君たちでは荷が重いよ。勿論、私もね…」

「嘘だろ?これってワイバーンじゃないよな?」

「ええ。私も見たことがありませんが、もっと上位じょういな存在な気がします…。」

 私たちは、何を見せられているのか…。ただただ驚くばかりだった。

「君たち!何を悠長ゆうちょうななことを言っている?逃げろ!これは緑竜りょくりゅうだ!相手が悪すぎる!」

 カヌリュは聖騎士団でも副団長を任される程の凄腕すごうでだと聞いている。

 その彼ですら敵の攻撃を回避するので精一杯の様子だ。その相手は、なんと緑竜だという…。

 思わぬ敵を前にして私もジュリアを圧倒されていた。

 しかし、このまま手をこまねいていれば、カヌリュは緑竜に殺されてしまうだろう。

(ジンディオールいるか?)

〘ああ。見ていたぞ!主よ、何を恐れるか!この程度の相手が倒せねば、フレイには勝てぬぞ!〙

(また、フレイかよ。俺はフレイなんて…。)

〘フレイとの戦いは、宿命だ。これはエルル神も承知のことだ。腹をくくれ!主よ!〙

(わかったよ!だが、こんな強そうな相手に本当に勝てるのかよ?)

〘確かに今のままでは厳しいだろうな…。では、『にせ魔剣士スキル』を使えるようにしてやろう。必要な記憶を主に送ろう。あとは、自分で何とかしろ!〙

(えっ…。ジンディオール?)

 すると、一瞬のうちに頭の中に多くの情報が飛び込んできた。

 幼少期のご両親との記憶や、ラボに連れて行かれて苦しんだ訓練の日々。兵器として殺戮さつりくに手をめた時の様子など様々な情報が瞬時に頭に入っていった。

「うぅ…」

 突然大量の情報を脳が取得したため、激しい頭痛に襲われた。

「ジンさん!大丈夫ですか?」

「大丈夫!大丈夫だ。もう、問題ない…。それよりジュリア!私は、あの緑竜と戦うよ」

「えっ!無理ですよ!ジンさん、死んじゃいますよ!?」

「死なないよ。ジンディオールに一部の記憶と、戦う力を貰ったんだ。ジュリアは、安全な場所に避難ひなんしていてくれ!」

「わ、わかりました!私、ジンさんを信じます。邪魔にならない場所からサポートしますね!」

「宜しく頼む!」

 私は緑竜と戦う決心をした。

『インフォ!』

 緑竜の情報を収集する。

《基礎情報》
レベル:59
年齢:121歳
種族:緑竜
説明:体長8メートルの竜。全身の筋肉は強固きょうこであり、力は強く、獰猛どうもうである。硬いうろこおおわれており、攻撃は通りにくい。危険生物に認定されており、その討伐ランクはSである。

《能力》
鋭爪えいそう
鋭牙えいが
火炎の息

(レベルだけはこちらが上だが、身体能力は違い過ぎるだろうから注意が必要だな。)

「おい!カヌリュ!大丈夫か?」

「大丈夫な訳…。おい!ジン!危険だ!下がれ!」

「ゴオォォー!」

 私が戦闘に加わった瞬間、緑竜は火炎の息をき出した。

「くそっ!やばいぞ!『伍式ごしき修羅しゅら瞬脚しゅんきゃく!』」

 私はジンディオールから教えてもらった『偽魔剣士』の技を発動した。

 私には『俊脚しゅんきゃく』という脚力を強化する能力があるが、この技はそれよりもはるかに速度を上げられる。

「ふぅ…危なかった…」

 火炎の息は私の髪の毛をかすめるほどの至近しきん距離まで接近した。
 
 しかし、修羅の瞬脚のおかげで、なんとか無傷で逃げ切れきた。

〘どうだ?これで戦えるだろ?俺が先日使った時は、本来の力の三割程度しか出せなかったんだ。だが、あれから大きくレベルが上がったおかげで、今なら五割くらいは再現できるはずだ。〙

(なるほどな。これなら緑竜にも勝てるかもしれないな!)
 
「なんだよ!ジン!今の技はなんだったんだ!」

 私の様子を見ていたカヌリュが驚いた顔で叫んだ。 

「まあ…特技の一つみたいなものだ。カヌリュ!大丈夫か?助太刀するぞ!」

「あ…ああ。ジン、貴様は一体…。いや、良くきたな。お前さんのお陰で可能性が見えてきたぞ!」

「そういうのは、勝ってからなっ!やぁ!」

《ゴンッ!》

「つつつっ!かたいなぁ!どういう身体してんだよ?」

「竜の鱗は非常に強度が高い。高級な装備に使われる程だ!『ソニックスラッシュ!』」

 カヌリュは剣を強く振りかざすと、鋭い剣圧による攻撃が緑竜に直撃した。

「グオォォォォ!」

 緑竜は傷を受けて悲鳴を上げた。

「良し!わずかながらダメージを与えたようだ!」

「やるなカヌリュ!」

「ジン!お前もな!死ぬなよ!」

 私たちは見つめ合うと、互いに笑みが零れた。

 しかし、まだ勝機は見いだせてはいない。

 だが、協力して戦うことで勝機を掴むことができるかも知れない…。そんな風に思えたのであった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...