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第一章 ジンディオールの復讐編
第44話 聖王と冒険者ギルド
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◇ 冒険者ギルド ラングラ支部 ◇
「冒険者ギルド「ラングラ支部」へようこそ!」
私たちを迎えたのは、ネットカフェの店員のような明るい笑顔の女性だった。
彼女はギルド職員の受付嬢で、名札にはルルアと書かれていた。
流石は異世界だ。行く先々の受付嬢はどの方も美女揃いである。
彼女は人兎族という亜人種で、この国では珍しくないらしい。
この国の冒険者にも多種多様な人種がいる。
そんな異世界らしい現実に心躍らせた。
「バネーロからやってきた。これからしばらく世話になると思うので、挨拶に来たところだ。」
私はそう言って、隣にいる仲間のジュリアを紹介した。
「バネーロって…。まさか、ジンさんとジュリアさんじゃないですか?」
受付の女性は、驚いたように目を見開いた。
「え…。どうして分かったんですか?確かに私たちはそうですけど…。」
ジュリアは戸惑った表情でそう答えた。
「お二人の噂は、こちらにも届いてますからね。バネーロでの魔潮討伐、すごかったそうですね?あっ、申し遅れました。私は、ギルド職員のルルアと申します。」
ルルアさんは笑顔で自己紹介した。
「ルルアさんですね?私は魔法や弓で少しでも魔物の数を減らそうと必死でしたよ。でも、本当に凄かったのはジンさんですよ!大量の魔物をバッタバッタと倒していましたから。」
ジュリアは私を見て、嬉しそうに言った。
「そうなんですか?こちらに入ってきた報告書にも、お二人の活躍が書かれていましたよ。その件ですが、その時の功績が評価されてお二人ともBランク昇進が決定されました。」
「本当かい?俺たちはまだ新米の冒険者だぜ…。」
私は驚いて言った。
「冒険者は、経験ではなく実績が重視されます。お二人は充分にその実績を上げられたということです。手続きしますので、冒険者カードをご提示下さい。」
私たちは言われた通りにカードを渡した。
「ジュリアさんと、ジンさんですね?確かに…。では、ランクアップの手続きをします。しばらくお待ち下さい。」
◇ ◇ ◇
「お待たせしました。Bランク昇格おめでとうございます!新しい冒険者カードですよ!」
ルルアさんはカードを返してくれた。
「わぁ!ありがとうございます!」
ジュリアはカードを受け取って、目を輝かせた。
これまでのブロンドカラーのカードとは違い、シルバーカラーのカードだった。
「Bランクに昇格されたことで、Aランクまでの依頼が受けられるようになりました。Aランクに昇格すれば、指名依頼などの個人への直接オファーもありますので、頑張ってAランクを目指してくださいね!」
「わかりました!感謝します。」
私たちは掲示板に向かい、最初は無難にCランク依頼を請負うことにした。
聖都近隣に出没したサイダァという魔獣の討伐だった。
私たちは、受付のルルアさんに依頼書を受理してもらい、早速討伐へ向かったのだった…。
◇ シュルール聖王国 聖王の間 ◇
「首尾はどうだ?」
「申し上げます!聖騎士団は、一万人規模の兵を確保完了しております。レーナス帝国との軍団戦ではほぼ互角に戦えるでしょう。しかし…。」
「魔剣士隊か…。」
「左様でございます。あのサマルト法国の魔法騎士団も同様に善戦していましたが、魔剣士隊の働きによって劣勢を強いられたそうでございます。」
「うむ。やはりな。一名一名が一騎当千と言われるだけはあるな。それで対応策はあるのか?」
「それが…。我が国の聖騎士団長であるラシュホードと副騎士団長のカヌリュは、魔剣士隊員と互角に戦うだけの技量はあるでしょう。ですが、奴らは10名編成だそうで、中でも魔剣士隊長であるフレイは格段に強いそうです。」
「人員的に足りていないと言う訳だな?我が国には対抗出来るだけの使い手はいないのか?」
「残念ながら…。あとは、冒険者に頼るのも手かと…。確かラングラ支部に所属するSランク冒険者の戦士バルトと、Aランクの魔法士アーシャの二人は強いとの噂です。ただし、ギルドマスターに聞いたところ、二人とも依頼で国外に行っているそうです。」
「それは不味いな。直ちに帰還させて聖都防衛に加えるのだ。だが、二人だけでは心許ないな。他にはいないのか?」
「はい、いることはいるのですが…。」
「なんだ言ってみろ。」
「Bランク冒険者に二人おります。」
「Bランクでは戦力にならんだろう?魔剣士隊に対抗する者を探しているのだぞ!」
「ええ。その通りです。この者たちはイースラン公国から渡ってきた冒険者らしいですが、かなりの実力者と聞いています。聖王陛下は、魔潮の件はご存知ですかな?」
「ああ、確かバネーロに二千を超える魔物が押し寄せたが、これを破ったと…。それが?」
「はい。そのうち千以上いた魔物をたった一人で倒したのが剣士ジンという男だそうです。トロールやオークなどがおり、それらをオークキングが率いていたのだとか。」
「誠か!?それは凄いな!Bランクの次元を越えているな!それでもう一人は?」
「ジンの仲間で魔法士のジュリアという者です。強力な魔法を無尽蔵に使い続けていたと聞いています。彼女もBランクの枠には納まらないでしょう。」
「それは素晴らしいな!直ちにその二人に接触せよ!」
「陛下!お待ち下さい。」
「何だ?」
「冒険者ギルドは、戦争には不可侵です。単純な戦いの戦力としては呼べません。陛下の護衛などの依頼という形であればギルドもやむを得ず聞き入れるかと…。」
「それでよい。そのように手配せよ!」
「陛下、お待ち下さい!」
「まだ何か?」
「バルトとアーシャは、冒険者ギルドを通じて指名依頼が可能です。しかし、ジンとジュリアは、Aランクに達していないため、指名依頼ができないのです。」
「何ともどかしいことか!ならばAランクにして指名依頼すればいいだろう?とにかく直ぐ掛かるのだ!」
「承知しました!」
聖王の間では、レーナス帝国に対して頭を悩ませては、様々な準備を行っていたのであった…。
「冒険者ギルド「ラングラ支部」へようこそ!」
私たちを迎えたのは、ネットカフェの店員のような明るい笑顔の女性だった。
彼女はギルド職員の受付嬢で、名札にはルルアと書かれていた。
流石は異世界だ。行く先々の受付嬢はどの方も美女揃いである。
彼女は人兎族という亜人種で、この国では珍しくないらしい。
この国の冒険者にも多種多様な人種がいる。
そんな異世界らしい現実に心躍らせた。
「バネーロからやってきた。これからしばらく世話になると思うので、挨拶に来たところだ。」
私はそう言って、隣にいる仲間のジュリアを紹介した。
「バネーロって…。まさか、ジンさんとジュリアさんじゃないですか?」
受付の女性は、驚いたように目を見開いた。
「え…。どうして分かったんですか?確かに私たちはそうですけど…。」
ジュリアは戸惑った表情でそう答えた。
「お二人の噂は、こちらにも届いてますからね。バネーロでの魔潮討伐、すごかったそうですね?あっ、申し遅れました。私は、ギルド職員のルルアと申します。」
ルルアさんは笑顔で自己紹介した。
「ルルアさんですね?私は魔法や弓で少しでも魔物の数を減らそうと必死でしたよ。でも、本当に凄かったのはジンさんですよ!大量の魔物をバッタバッタと倒していましたから。」
ジュリアは私を見て、嬉しそうに言った。
「そうなんですか?こちらに入ってきた報告書にも、お二人の活躍が書かれていましたよ。その件ですが、その時の功績が評価されてお二人ともBランク昇進が決定されました。」
「本当かい?俺たちはまだ新米の冒険者だぜ…。」
私は驚いて言った。
「冒険者は、経験ではなく実績が重視されます。お二人は充分にその実績を上げられたということです。手続きしますので、冒険者カードをご提示下さい。」
私たちは言われた通りにカードを渡した。
「ジュリアさんと、ジンさんですね?確かに…。では、ランクアップの手続きをします。しばらくお待ち下さい。」
◇ ◇ ◇
「お待たせしました。Bランク昇格おめでとうございます!新しい冒険者カードですよ!」
ルルアさんはカードを返してくれた。
「わぁ!ありがとうございます!」
ジュリアはカードを受け取って、目を輝かせた。
これまでのブロンドカラーのカードとは違い、シルバーカラーのカードだった。
「Bランクに昇格されたことで、Aランクまでの依頼が受けられるようになりました。Aランクに昇格すれば、指名依頼などの個人への直接オファーもありますので、頑張ってAランクを目指してくださいね!」
「わかりました!感謝します。」
私たちは掲示板に向かい、最初は無難にCランク依頼を請負うことにした。
聖都近隣に出没したサイダァという魔獣の討伐だった。
私たちは、受付のルルアさんに依頼書を受理してもらい、早速討伐へ向かったのだった…。
◇ シュルール聖王国 聖王の間 ◇
「首尾はどうだ?」
「申し上げます!聖騎士団は、一万人規模の兵を確保完了しております。レーナス帝国との軍団戦ではほぼ互角に戦えるでしょう。しかし…。」
「魔剣士隊か…。」
「左様でございます。あのサマルト法国の魔法騎士団も同様に善戦していましたが、魔剣士隊の働きによって劣勢を強いられたそうでございます。」
「うむ。やはりな。一名一名が一騎当千と言われるだけはあるな。それで対応策はあるのか?」
「それが…。我が国の聖騎士団長であるラシュホードと副騎士団長のカヌリュは、魔剣士隊員と互角に戦うだけの技量はあるでしょう。ですが、奴らは10名編成だそうで、中でも魔剣士隊長であるフレイは格段に強いそうです。」
「人員的に足りていないと言う訳だな?我が国には対抗出来るだけの使い手はいないのか?」
「残念ながら…。あとは、冒険者に頼るのも手かと…。確かラングラ支部に所属するSランク冒険者の戦士バルトと、Aランクの魔法士アーシャの二人は強いとの噂です。ただし、ギルドマスターに聞いたところ、二人とも依頼で国外に行っているそうです。」
「それは不味いな。直ちに帰還させて聖都防衛に加えるのだ。だが、二人だけでは心許ないな。他にはいないのか?」
「はい、いることはいるのですが…。」
「なんだ言ってみろ。」
「Bランク冒険者に二人おります。」
「Bランクでは戦力にならんだろう?魔剣士隊に対抗する者を探しているのだぞ!」
「ええ。その通りです。この者たちはイースラン公国から渡ってきた冒険者らしいですが、かなりの実力者と聞いています。聖王陛下は、魔潮の件はご存知ですかな?」
「ああ、確かバネーロに二千を超える魔物が押し寄せたが、これを破ったと…。それが?」
「はい。そのうち千以上いた魔物をたった一人で倒したのが剣士ジンという男だそうです。トロールやオークなどがおり、それらをオークキングが率いていたのだとか。」
「誠か!?それは凄いな!Bランクの次元を越えているな!それでもう一人は?」
「ジンの仲間で魔法士のジュリアという者です。強力な魔法を無尽蔵に使い続けていたと聞いています。彼女もBランクの枠には納まらないでしょう。」
「それは素晴らしいな!直ちにその二人に接触せよ!」
「陛下!お待ち下さい。」
「何だ?」
「冒険者ギルドは、戦争には不可侵です。単純な戦いの戦力としては呼べません。陛下の護衛などの依頼という形であればギルドもやむを得ず聞き入れるかと…。」
「それでよい。そのように手配せよ!」
「陛下、お待ち下さい!」
「まだ何か?」
「バルトとアーシャは、冒険者ギルドを通じて指名依頼が可能です。しかし、ジンとジュリアは、Aランクに達していないため、指名依頼ができないのです。」
「何ともどかしいことか!ならばAランクにして指名依頼すればいいだろう?とにかく直ぐ掛かるのだ!」
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