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第一章 ジンディオールの復讐編
第41話 聖王国にお立ち寄り(タキモト視点)
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「いや~驚いたなぁ。まさか、荷馬車の中に人が隠れているとは思わなかったよ。でも、おかげで道中の危機を乗り越えられたから感謝しているよ!」
「まあ、お互い様ってことでぇ。」
私はサマルト法国の首都クルールで、レーナス帝国の間者と間違われて捕まってしまったのだ。
私は、リーナの能力で牢屋から脱出し、商人のラザムさんの荷馬車に忍び込んだ。
無断で乗り込んだのは悪いと思ったが、途中で魔物に襲われたラザムさんを助けたことで仲良くなり、護衛として同行することになった。
「おじさん、今はどこなの?」
「シュルール聖王国の領土に入って、かなり南下したよ。もうすぐ聖都ラングラに着くはずだよ。」
「聖都ラングラって、この国で一番大きな街なの?」
「そうだよ。聖堂があって、この国の中心地だよ。私はね、商売のために法国から来たんだ。嬢ちゃんは何の用があるんだい?」
「私は人探しをしているの。南の方に行く予定なのよ。」
「そうかい。人探しなら冒険者ギルドで聞いてみるといいよ。その人がこの国に来たことがあるなら、ギルドに記録が残っているかもしれないからね。」
「冒険者ギルド?この世界にもあるんだね。」
「ん、当然だろ?何を言っているんだい?」
「あはは。そうだね。」
「問題は聖都への入場だな。嬢ちゃんは身分証明がないんだろ?」
「うん。だから『蜘蛛男』になって突破するつもりだったんだけど。」
「蜘蛛男???まあいいや。身分証明は早めに作った方がいいよ。冒険者ギルドで作れるから、そこで作っておきなさい。」
「わかったわ。おじさん、ありがとう!」
◇ シュルール聖王国 聖都ラングラ ◇
どの国も都への入場は厳しいチェックがある。今回も例外ではなく、荷馬車は審査所に止められた。
私は、前回と同じ方法で荷馬車の底に張り付いてやり過ごすことにした。
見つかったらどうしようと、ドキドキしながら審査が終わるのを待った。
荷馬車の構造上、下から良く覗きこまないと見えないので、見つからずに通過できた。
◇ ◇ ◇
「嬢ちゃん、これでお別れだね。道中、何度も助けてくれてありがとう。元気でな!」
「おじさん、こちらこそ本当に助かりました!」
私たちは、ここで別れた。
私は一人になって街中を見回した。
ディオール・フブキさんの情報を手に入れるため、冒険者ギルドに向かうことにした。
街並みは統一感があり、どこもかしこも美しい建物が並んでいた。
都の中心部には、巨大な建物がそびえ立っていた。帝都の王城とは全く違うタイプの建物だった。
近くの人に聞いてみると、それは『聖堂』と呼ばれる建物で、『聖王』というこの国の支配者が住んでいるという。
ついでに冒険者ギルドの場所も教えてもらった。
◇ 冒険者ギルド ラングラ支部 ◇
扉を開けると、異世界らしい光景が目に飛び込んできた。
様々な種族の人々が集まっていて、パーティを組んだり、掲示板で依頼を探したりしていた。
私は、想像していた通りの異世界の風景に興奮を覚えた。
「いらっしゃいませ!何のご用でしょうか?」
ウサギのような耳を持つ女性が、受付カウンターから声をかけてきた。私は、彼女のところに行って返事した。
「人を探しているの。」
「はい、お名前は?」
「ディオール・フブキっていうの。」
「かしこまりました。お調べしますので、少々お待ちください。」
《 10分後 》
「お客様、お待たせしました。ご依頼のディオール様ですが、残念ながら当ギルドには登録されていません。」
「えっ!いないの!?困ったなぁ…。」
「申し訳ありません。冒険者登録されていない可能性もありますし、他国のギルドに登録されている場合は、こちらでは検索できません。」
「そうなのか…。この国にはいないのかもね。」
「そうですね。もし、他国に行かれる際は、そちらのギルドでお尋ねになるといいかもしれません。」
「ありがとう。あのね、私、身分証明がなくなっちゃって…。作ってもらえる?」
「あ…はい。作れますが、冒険者登録されていますか?」
「冒険者?登録はしていないよ。」
「なるほど。身分証明は冒険者に発行されるものなので、発行するには登録していただく必要があります。」
「そうなの?私、やってみようかな?冒険者ってどんなことするの?」
「はい。冒険者は、様々な依頼を受けて、その対価として報酬をもらっています。魔物や盗賊の討伐や護衛任務、素材採取、雑用など、いろいろな仕事がありますよ。」
「そうなんだ。私にもできるかな?わかった、登録してみるよ。」
「ありがとうございます。では、こちらの書類に必要事項をご記入ください。」
私は言われた通りに自分の情報を書き込んだ。
私はこの世界に来て初めて文字を読み書きしたが、不思議とこの世界の文字に慣れていた。
(ええ!日本語じゃないのに読めるし、書けるなんて!)
「リーナ・タキモトさんですね?貴族様のようなお名前ですね。」
「いえいえ、普通のエルフですよ。」
(タキモトって書いちゃったからかな…。この世界では平民には苗字なんてないのかも。)
「失礼しました。書類は受理しました。最後にこの宝玉に触れてください。」
「これは何?」
「犯罪歴を調べる魔道具です。盗賊や犯罪者を冒険者にするわけにはいきませんからね。」
「なるほど…。」
(犯罪歴って私大丈夫かな?帝国や法国ではお尋ね者だし…。でも、ここまでやって断るわけにはいかないし、何かあったらなんとかするしかないよね。)
私は不安を抱えながらも宝玉に手を触れた。
宝玉は白く光った後、すぐに静まった。
「はい。問題ありません。では、冒険者登録を行います。カードを発行しますので、しばらくお待ちください。」
(よかった!セーフだった!でも、なんでだろう?もしかして…。)
私は不思議に思って『インフォ』を使ってみると、なんと隠蔽レベル3を習得していたのだ。
(ああ、それか。都合の悪い情報は隠せるようになったのか。)
私は冒険者ギルドの説明を受けながらカード発行を待った。
ランクや依頼に関する説明などを聞いた。私の予想通りのシステムだったことに驚いた。
説明を終えて冒険者カードを受け取ると、依頼は受けずにギルドを出た。
宿を探して、明日にはまた南へと旅立とう。
街中は人々の往来でにぎわっていた。
しかし、人々とは別に鎧を着た兵士たちが忙しそうに走り回っている様子に違和感を覚えた。
(兵士たちが何かを準備している?)
気のせいかもしれないが、何か聖都で問題が起きているのではないかと思った。
再び南へ移動したのは翌朝のことだった…。
「まあ、お互い様ってことでぇ。」
私はサマルト法国の首都クルールで、レーナス帝国の間者と間違われて捕まってしまったのだ。
私は、リーナの能力で牢屋から脱出し、商人のラザムさんの荷馬車に忍び込んだ。
無断で乗り込んだのは悪いと思ったが、途中で魔物に襲われたラザムさんを助けたことで仲良くなり、護衛として同行することになった。
「おじさん、今はどこなの?」
「シュルール聖王国の領土に入って、かなり南下したよ。もうすぐ聖都ラングラに着くはずだよ。」
「聖都ラングラって、この国で一番大きな街なの?」
「そうだよ。聖堂があって、この国の中心地だよ。私はね、商売のために法国から来たんだ。嬢ちゃんは何の用があるんだい?」
「私は人探しをしているの。南の方に行く予定なのよ。」
「そうかい。人探しなら冒険者ギルドで聞いてみるといいよ。その人がこの国に来たことがあるなら、ギルドに記録が残っているかもしれないからね。」
「冒険者ギルド?この世界にもあるんだね。」
「ん、当然だろ?何を言っているんだい?」
「あはは。そうだね。」
「問題は聖都への入場だな。嬢ちゃんは身分証明がないんだろ?」
「うん。だから『蜘蛛男』になって突破するつもりだったんだけど。」
「蜘蛛男???まあいいや。身分証明は早めに作った方がいいよ。冒険者ギルドで作れるから、そこで作っておきなさい。」
「わかったわ。おじさん、ありがとう!」
◇ シュルール聖王国 聖都ラングラ ◇
どの国も都への入場は厳しいチェックがある。今回も例外ではなく、荷馬車は審査所に止められた。
私は、前回と同じ方法で荷馬車の底に張り付いてやり過ごすことにした。
見つかったらどうしようと、ドキドキしながら審査が終わるのを待った。
荷馬車の構造上、下から良く覗きこまないと見えないので、見つからずに通過できた。
◇ ◇ ◇
「嬢ちゃん、これでお別れだね。道中、何度も助けてくれてありがとう。元気でな!」
「おじさん、こちらこそ本当に助かりました!」
私たちは、ここで別れた。
私は一人になって街中を見回した。
ディオール・フブキさんの情報を手に入れるため、冒険者ギルドに向かうことにした。
街並みは統一感があり、どこもかしこも美しい建物が並んでいた。
都の中心部には、巨大な建物がそびえ立っていた。帝都の王城とは全く違うタイプの建物だった。
近くの人に聞いてみると、それは『聖堂』と呼ばれる建物で、『聖王』というこの国の支配者が住んでいるという。
ついでに冒険者ギルドの場所も教えてもらった。
◇ 冒険者ギルド ラングラ支部 ◇
扉を開けると、異世界らしい光景が目に飛び込んできた。
様々な種族の人々が集まっていて、パーティを組んだり、掲示板で依頼を探したりしていた。
私は、想像していた通りの異世界の風景に興奮を覚えた。
「いらっしゃいませ!何のご用でしょうか?」
ウサギのような耳を持つ女性が、受付カウンターから声をかけてきた。私は、彼女のところに行って返事した。
「人を探しているの。」
「はい、お名前は?」
「ディオール・フブキっていうの。」
「かしこまりました。お調べしますので、少々お待ちください。」
《 10分後 》
「お客様、お待たせしました。ご依頼のディオール様ですが、残念ながら当ギルドには登録されていません。」
「えっ!いないの!?困ったなぁ…。」
「申し訳ありません。冒険者登録されていない可能性もありますし、他国のギルドに登録されている場合は、こちらでは検索できません。」
「そうなのか…。この国にはいないのかもね。」
「そうですね。もし、他国に行かれる際は、そちらのギルドでお尋ねになるといいかもしれません。」
「ありがとう。あのね、私、身分証明がなくなっちゃって…。作ってもらえる?」
「あ…はい。作れますが、冒険者登録されていますか?」
「冒険者?登録はしていないよ。」
「なるほど。身分証明は冒険者に発行されるものなので、発行するには登録していただく必要があります。」
「そうなの?私、やってみようかな?冒険者ってどんなことするの?」
「はい。冒険者は、様々な依頼を受けて、その対価として報酬をもらっています。魔物や盗賊の討伐や護衛任務、素材採取、雑用など、いろいろな仕事がありますよ。」
「そうなんだ。私にもできるかな?わかった、登録してみるよ。」
「ありがとうございます。では、こちらの書類に必要事項をご記入ください。」
私は言われた通りに自分の情報を書き込んだ。
私はこの世界に来て初めて文字を読み書きしたが、不思議とこの世界の文字に慣れていた。
(ええ!日本語じゃないのに読めるし、書けるなんて!)
「リーナ・タキモトさんですね?貴族様のようなお名前ですね。」
「いえいえ、普通のエルフですよ。」
(タキモトって書いちゃったからかな…。この世界では平民には苗字なんてないのかも。)
「失礼しました。書類は受理しました。最後にこの宝玉に触れてください。」
「これは何?」
「犯罪歴を調べる魔道具です。盗賊や犯罪者を冒険者にするわけにはいきませんからね。」
「なるほど…。」
(犯罪歴って私大丈夫かな?帝国や法国ではお尋ね者だし…。でも、ここまでやって断るわけにはいかないし、何かあったらなんとかするしかないよね。)
私は不安を抱えながらも宝玉に手を触れた。
宝玉は白く光った後、すぐに静まった。
「はい。問題ありません。では、冒険者登録を行います。カードを発行しますので、しばらくお待ちください。」
(よかった!セーフだった!でも、なんでだろう?もしかして…。)
私は不思議に思って『インフォ』を使ってみると、なんと隠蔽レベル3を習得していたのだ。
(ああ、それか。都合の悪い情報は隠せるようになったのか。)
私は冒険者ギルドの説明を受けながらカード発行を待った。
ランクや依頼に関する説明などを聞いた。私の予想通りのシステムだったことに驚いた。
説明を終えて冒険者カードを受け取ると、依頼は受けずにギルドを出た。
宿を探して、明日にはまた南へと旅立とう。
街中は人々の往来でにぎわっていた。
しかし、人々とは別に鎧を着た兵士たちが忙しそうに走り回っている様子に違和感を覚えた。
(兵士たちが何かを準備している?)
気のせいかもしれないが、何か聖都で問題が起きているのではないかと思った。
再び南へ移動したのは翌朝のことだった…。
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