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第一章 ジンディオールの復讐編
第32話 サマルト法国・後編(タキモト視点)
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「おい!貴様!どうやって脱出したんだ?」
私は、この身体の元の持ち主であるリーナの記憶に触れることで、彼女が使っていた異能を使用できるようになった。
この異能は、魔法と変わらないとようにも思える。しかし、魔剣士スキルによって発動される異能は、その発生機序が魔法とは異なる為に区別されて扱われる。
私はこの特別な能力で危機を脱したのだ。
その中でも、『水・伍式:霧化』は凄まじい効果をもたらした。
魔力で自分の身体を水に変えて、霧のように細かく分散させて独房の外に抜け出したのだ。
この水の異能は、彼女が唯一扱える属性であり、水・壱式から水・漆式までを習得していた。
「脱出した方法ですかぁ?それはね、こういうことですよ!『水・壱式:水縛!』」
魔力で水を具現化して相手にぶつける。
「ぐはっ!な、なんだこれは!」
相手は、水圧で後ろの壁に叩きつけ、そのまま硬化させた水によって拘束させた。
両腕と胸部が水の鎖に縛られ、身動きができなくなったのだ。
「くそっ!動けない!外せ!外せや!」
「ちゃんと警備しないとダメですよ!では!おやすみなさい…。はい!」
「ぐほっ!」
私は身動きできない警備兵のみぞおちに思い切りパンチを食らわせた。
警備兵は、白目を剥いて気絶してしまった。
「私はリーナみたいにすぐ殺したりはしないわ!助かったでしょ!さて…と。早く逃げなくちゃ!」
この施設内のルートは、連れてこられた時にしっかり覚えておいた。
昔の私は物覚えが悪く、よく先輩に叱られていたけど、リーナは頭がいいらしい。
このフロアには、警備兵は一人しかいなかったはずだ。
私は、地上へと向かって走り出した。
「脱走者だ!」「捕まえろ!」「応援を呼べ!」
しかし、そこからは、隠れながら移動するのは無理だった。
警備兵がいるフロアも突破しなければならないのだ。
前方から四人の警備兵が現れた。
武器もなく四人を相手にするのは厳しい。
『水・参式:水跳!』
私の靴底に水が張られた。
プヨプヨとした水の塊だ。
水に弾力を与えて跳躍力を高めるのがこの異能だ。
普通ならあり得ないことだが、魔法の力で可能になっているのだろう。
普段の二倍くらいの跳躍力が得られるという。
「うわっ!」
初めて跳んだら予想以上の反発で驚いたが、すぐに慣れた。
「行ってきまーす!やっほー!」
私は警備兵の近くまで走っていき、大きくジャンプした。
「なんだこいつ!」「どうやって飛んでるんだ!」「まさか…。」
私は警備兵の頭上を軽々と飛び越えて逃げた。
地下四階から始まった逃走劇は、警備兵を翻弄しながらようやく地上の一階にたどり着いた。
「えっ!」
私は驚愕の声を上げた。
階段から上がって見たのは、フロアにびっしりと並んだ警備兵たちだった…。
「来たぞ!捕まえろ!」「抵抗するなら殺せ!」「囲め!」
(うわぁ…。20人以上はいるよね?これは、異世界初心者には無理ゲーじゃない?先輩…。)
「仕方ないわね!これしかないわ!『水・弐式:霧』よ!」
私はリーナの記憶から『水・弐式:霧』を思い出して発動した。
霧化の異能とは違って、周囲に濃い霧を発生させて相手の視界を奪うのだ。
このフロアは一瞬にして霧に包まれた。
「なんだこれは?」「前が見えない!」「奴はどこだ?」「どこにいるんだ?」
「ヒソヒソ…ここだよって!でも教えてあげないわ!バイバイ!」
私は、警備兵の隙をついて一気に脱出口へと駆けたのだった…。
◇ 首都クルール ◇
収容所から脱出した私は、街中に飛び込んだ。
人ごみに紛れれば、もう普通の人と変わらないだろう。
初めて見る街並みは、東京とは全く違っていて、ここが異世界だと改めて実感させられた。
「ああ…。大変な目に遭ったわね…。トラブルメーカーは昔も今も変わらないのね。」
この都市ではまた捕まって収容所に戻される可能性が高い。
早くこの国から出なくちゃと思った。
「あれは…馬車だ!」
商人風の男が操縦する馬車が目の前を通った。正門に向かっているようだ。
(あの馬車に乗れば、気づかれずに正門を抜けられるかも?)
私はひらめいて、馬車を追いかけた。
昔の私と違って、リーナの身体は驚くほど素早く動いた。
すぐに馬車に追いついて、荷台に飛び乗った。
(よし!乗れた!でも、荷台はきっとチェックされるよね?だったら…。)
◇ 首都クルール 正門 ◇
「通行証を見せろ!」
「はいはい!」
「商人のラザムか?護衛はどうした?」
「ああ…。急遽ラングラまで行くことになってな。護衛は雇いたいが、すぐには見つからなかったんだよ。準備に時間がかかるとか言ってさ。まあ、仕方ないか…。」
「それは大変だな。悪いが荷台を見せて貰うぞ!」
「ああ、構わないよ!まあ、売り物はほとんどないけどな。」
「確かにそうだな。問題はないぞ!ラザムの通行を許可する!気をつけてな。」
「ありがとうな!」
(ふぅ…。なんとかなったわね。)
私は検問を避けるために、荷台の床底に張り付いて隠れていた。
(蜘蛛のスーパーヒーローみたいにくっついてみようと思ったけど、結構大変だったわ。魔力で少し補助したけど…。)
馬車が検問を通り過ぎると、私はそっと荷台に戻って、ひっそりと身を隠したのだった…。
私は、この身体の元の持ち主であるリーナの記憶に触れることで、彼女が使っていた異能を使用できるようになった。
この異能は、魔法と変わらないとようにも思える。しかし、魔剣士スキルによって発動される異能は、その発生機序が魔法とは異なる為に区別されて扱われる。
私はこの特別な能力で危機を脱したのだ。
その中でも、『水・伍式:霧化』は凄まじい効果をもたらした。
魔力で自分の身体を水に変えて、霧のように細かく分散させて独房の外に抜け出したのだ。
この水の異能は、彼女が唯一扱える属性であり、水・壱式から水・漆式までを習得していた。
「脱出した方法ですかぁ?それはね、こういうことですよ!『水・壱式:水縛!』」
魔力で水を具現化して相手にぶつける。
「ぐはっ!な、なんだこれは!」
相手は、水圧で後ろの壁に叩きつけ、そのまま硬化させた水によって拘束させた。
両腕と胸部が水の鎖に縛られ、身動きができなくなったのだ。
「くそっ!動けない!外せ!外せや!」
「ちゃんと警備しないとダメですよ!では!おやすみなさい…。はい!」
「ぐほっ!」
私は身動きできない警備兵のみぞおちに思い切りパンチを食らわせた。
警備兵は、白目を剥いて気絶してしまった。
「私はリーナみたいにすぐ殺したりはしないわ!助かったでしょ!さて…と。早く逃げなくちゃ!」
この施設内のルートは、連れてこられた時にしっかり覚えておいた。
昔の私は物覚えが悪く、よく先輩に叱られていたけど、リーナは頭がいいらしい。
このフロアには、警備兵は一人しかいなかったはずだ。
私は、地上へと向かって走り出した。
「脱走者だ!」「捕まえろ!」「応援を呼べ!」
しかし、そこからは、隠れながら移動するのは無理だった。
警備兵がいるフロアも突破しなければならないのだ。
前方から四人の警備兵が現れた。
武器もなく四人を相手にするのは厳しい。
『水・参式:水跳!』
私の靴底に水が張られた。
プヨプヨとした水の塊だ。
水に弾力を与えて跳躍力を高めるのがこの異能だ。
普通ならあり得ないことだが、魔法の力で可能になっているのだろう。
普段の二倍くらいの跳躍力が得られるという。
「うわっ!」
初めて跳んだら予想以上の反発で驚いたが、すぐに慣れた。
「行ってきまーす!やっほー!」
私は警備兵の近くまで走っていき、大きくジャンプした。
「なんだこいつ!」「どうやって飛んでるんだ!」「まさか…。」
私は警備兵の頭上を軽々と飛び越えて逃げた。
地下四階から始まった逃走劇は、警備兵を翻弄しながらようやく地上の一階にたどり着いた。
「えっ!」
私は驚愕の声を上げた。
階段から上がって見たのは、フロアにびっしりと並んだ警備兵たちだった…。
「来たぞ!捕まえろ!」「抵抗するなら殺せ!」「囲め!」
(うわぁ…。20人以上はいるよね?これは、異世界初心者には無理ゲーじゃない?先輩…。)
「仕方ないわね!これしかないわ!『水・弐式:霧』よ!」
私はリーナの記憶から『水・弐式:霧』を思い出して発動した。
霧化の異能とは違って、周囲に濃い霧を発生させて相手の視界を奪うのだ。
このフロアは一瞬にして霧に包まれた。
「なんだこれは?」「前が見えない!」「奴はどこだ?」「どこにいるんだ?」
「ヒソヒソ…ここだよって!でも教えてあげないわ!バイバイ!」
私は、警備兵の隙をついて一気に脱出口へと駆けたのだった…。
◇ 首都クルール ◇
収容所から脱出した私は、街中に飛び込んだ。
人ごみに紛れれば、もう普通の人と変わらないだろう。
初めて見る街並みは、東京とは全く違っていて、ここが異世界だと改めて実感させられた。
「ああ…。大変な目に遭ったわね…。トラブルメーカーは昔も今も変わらないのね。」
この都市ではまた捕まって収容所に戻される可能性が高い。
早くこの国から出なくちゃと思った。
「あれは…馬車だ!」
商人風の男が操縦する馬車が目の前を通った。正門に向かっているようだ。
(あの馬車に乗れば、気づかれずに正門を抜けられるかも?)
私はひらめいて、馬車を追いかけた。
昔の私と違って、リーナの身体は驚くほど素早く動いた。
すぐに馬車に追いついて、荷台に飛び乗った。
(よし!乗れた!でも、荷台はきっとチェックされるよね?だったら…。)
◇ 首都クルール 正門 ◇
「通行証を見せろ!」
「はいはい!」
「商人のラザムか?護衛はどうした?」
「ああ…。急遽ラングラまで行くことになってな。護衛は雇いたいが、すぐには見つからなかったんだよ。準備に時間がかかるとか言ってさ。まあ、仕方ないか…。」
「それは大変だな。悪いが荷台を見せて貰うぞ!」
「ああ、構わないよ!まあ、売り物はほとんどないけどな。」
「確かにそうだな。問題はないぞ!ラザムの通行を許可する!気をつけてな。」
「ありがとうな!」
(ふぅ…。なんとかなったわね。)
私は検問を避けるために、荷台の床底に張り付いて隠れていた。
(蜘蛛のスーパーヒーローみたいにくっついてみようと思ったけど、結構大変だったわ。魔力で少し補助したけど…。)
馬車が検問を通り過ぎると、私はそっと荷台に戻って、ひっそりと身を隠したのだった…。
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