31 / 81
第一章 ジンディオールの復讐編
第31話 サマルト法国・中編(タキモト視点)
しおりを挟む
◇ 首都クルール 収容所 ◇
「いてて…。」
私は収容所の兵士に無理やり独房に押し込められた。荒っぽく扱われたせいで、身体中が痛かった。
私はサマルト法国の首都クルールにやってきたばかりだった。
正門でのチェックを受けたとき、私は正直に自分がレーナス帝国から来たと答えた。
すると、兵士たちは私を間者だと疑って、捕縛したのだ。
「なんでこんな目に…!」
私は憤慨しながら独房の中を見回した。
このフロアには私一人しか囚人がいないようだった。
入口の見張りの兵士も、私には無関心だった。
「帝国の者だからって、こんなにひどくするなんて…。あっ…。」
私はふと思い出した。
このサマルト法国は、リーナの祖国であるレーナス帝国とは敵対していたのだ。
リーナの記憶によると、両国は今にも戦争が勃発しそうな緊張状態にあった。
帝国では、キャスティール王国侵略後は、サマルト法国を次の侵略目標にするという噂も流れていた。
リーナの記憶は、私にとって貴重な情報源だった。
しかし、私はまだ転生したばかりで、リーナの記憶を自在に引き出せなかった。
「あぁ、やっちゃったなぁ。なんでサマルト法国に来ちゃったんだろう。そうか、女神様やおじいさんが言ってたのは、このことだったのか…。」
しかし、今更気付いても後の祭りである。
「状況は最悪だわ…。間者だって言われてるし、いつ処刑されるかわからないもの。どうしよう…。」
私は途方に暮れた。
口で説得するのは無理だろう。私には弁解できる証拠もないし、信じて聞いてくれる相手もいないだろう。
私は必死になって脱出する手掛かりを探すことにした。
辺りを見渡す。
独房は頑丈に作られていた。
床や壁、天井は硬い石でできていて、リーナの持つ魔剣士の力でも破壊するのは困難だろう。
格子も鉄ではなく、鋼鉄かそれ以上の素材でできていて、どれだけ力を込めても動かなかった。
「どうしよう…。これじゃあ出られないわ…。」
一日目の夜が更けていった…。
《二日目》
水と湿ったパンが独房に投げ込まれた。
「今晩、お前の尋問官が来るらしいぞ。痛めつけられて白状するのがお前の運命だ。明日は飯もいらないだろうな!」
収容所の兵士が嘲笑しながらそう言って去っていった。
「待って!お願いだから助けて!お腹が痛いの!」
「無駄なことを言うな。上から食事以外は何もしないようにと言われている。独房を開けるなんてとんでもない。」
兵士はそう言って扉を閉めた。
私は絶望した。
どうやら時間はあまりないらしい。
しかも、独房を開けるチャンスも途絶えた。
「もうダメなの…?」
〘そんなことないわよ!〙
突然、頭の中に声が響いた。
「誰?女神様?」
〘女神じゃないわよ!私よ!リーナ!〙
「リーナ?もしかして、この身体の…。」
〘そうよ!余りにも酷い状況だから見てられなくてね。〙
「えっ?やっぱりそうなんだ!」
〘まったくもう…。なんでわざわざ敵国に行っちゃうのよ。〙
「ええと…。何となく…?」
〘何となくって…。私の身体の持ち主になったのに、あなたって本当に天然ね。〙
「ごめんなさい…。」
〘もういいわ。私もジン隊長に助けられたことがあるから…。〙
「ジン隊長…。知っているわ。」
〘まさか、あなたが彼の名前を口にするなんてね…。はぁ…。まあ、いいわ。今回は私があなたに力を貸してあげるわ。〙
「本当?ありがとう!」
〘あなたは私の記憶から力の使い方を覚えてるはずよ。思い出しなさい!水・伍式:霧化よ。〙
「水・伍式:霧化…。そうだった!その術があったわね!それにしても、あなたはすごい能力を持っているわね。」
〘まあね…。私は幼いころから魔剣士として育てられたのよ。〙
「そうなのね…。私もあなたの記憶を見てるから、ちゃんとわかるわ。」
〘これで手助けは終わりよ。あなた、大事な目的があるんでしょ?私の身体を大切にしなさいよ!絶対に死んじゃだめよ!〙
「わかったわ!大丈夫!私、がんばるから!ねえ、リーナ!また助けてくれる?」
〘覚えておきなさい。あなたは私。私はあなたよ。〙
そう言い残して頭の中の声は途切れた。
私は彼女の言った通りの術を発動した。
『水・伍式:霧化!』
私の身体は水に変わり、やがて霧になって独房から抜け出たのだった…。
「いてて…。」
私は収容所の兵士に無理やり独房に押し込められた。荒っぽく扱われたせいで、身体中が痛かった。
私はサマルト法国の首都クルールにやってきたばかりだった。
正門でのチェックを受けたとき、私は正直に自分がレーナス帝国から来たと答えた。
すると、兵士たちは私を間者だと疑って、捕縛したのだ。
「なんでこんな目に…!」
私は憤慨しながら独房の中を見回した。
このフロアには私一人しか囚人がいないようだった。
入口の見張りの兵士も、私には無関心だった。
「帝国の者だからって、こんなにひどくするなんて…。あっ…。」
私はふと思い出した。
このサマルト法国は、リーナの祖国であるレーナス帝国とは敵対していたのだ。
リーナの記憶によると、両国は今にも戦争が勃発しそうな緊張状態にあった。
帝国では、キャスティール王国侵略後は、サマルト法国を次の侵略目標にするという噂も流れていた。
リーナの記憶は、私にとって貴重な情報源だった。
しかし、私はまだ転生したばかりで、リーナの記憶を自在に引き出せなかった。
「あぁ、やっちゃったなぁ。なんでサマルト法国に来ちゃったんだろう。そうか、女神様やおじいさんが言ってたのは、このことだったのか…。」
しかし、今更気付いても後の祭りである。
「状況は最悪だわ…。間者だって言われてるし、いつ処刑されるかわからないもの。どうしよう…。」
私は途方に暮れた。
口で説得するのは無理だろう。私には弁解できる証拠もないし、信じて聞いてくれる相手もいないだろう。
私は必死になって脱出する手掛かりを探すことにした。
辺りを見渡す。
独房は頑丈に作られていた。
床や壁、天井は硬い石でできていて、リーナの持つ魔剣士の力でも破壊するのは困難だろう。
格子も鉄ではなく、鋼鉄かそれ以上の素材でできていて、どれだけ力を込めても動かなかった。
「どうしよう…。これじゃあ出られないわ…。」
一日目の夜が更けていった…。
《二日目》
水と湿ったパンが独房に投げ込まれた。
「今晩、お前の尋問官が来るらしいぞ。痛めつけられて白状するのがお前の運命だ。明日は飯もいらないだろうな!」
収容所の兵士が嘲笑しながらそう言って去っていった。
「待って!お願いだから助けて!お腹が痛いの!」
「無駄なことを言うな。上から食事以外は何もしないようにと言われている。独房を開けるなんてとんでもない。」
兵士はそう言って扉を閉めた。
私は絶望した。
どうやら時間はあまりないらしい。
しかも、独房を開けるチャンスも途絶えた。
「もうダメなの…?」
〘そんなことないわよ!〙
突然、頭の中に声が響いた。
「誰?女神様?」
〘女神じゃないわよ!私よ!リーナ!〙
「リーナ?もしかして、この身体の…。」
〘そうよ!余りにも酷い状況だから見てられなくてね。〙
「えっ?やっぱりそうなんだ!」
〘まったくもう…。なんでわざわざ敵国に行っちゃうのよ。〙
「ええと…。何となく…?」
〘何となくって…。私の身体の持ち主になったのに、あなたって本当に天然ね。〙
「ごめんなさい…。」
〘もういいわ。私もジン隊長に助けられたことがあるから…。〙
「ジン隊長…。知っているわ。」
〘まさか、あなたが彼の名前を口にするなんてね…。はぁ…。まあ、いいわ。今回は私があなたに力を貸してあげるわ。〙
「本当?ありがとう!」
〘あなたは私の記憶から力の使い方を覚えてるはずよ。思い出しなさい!水・伍式:霧化よ。〙
「水・伍式:霧化…。そうだった!その術があったわね!それにしても、あなたはすごい能力を持っているわね。」
〘まあね…。私は幼いころから魔剣士として育てられたのよ。〙
「そうなのね…。私もあなたの記憶を見てるから、ちゃんとわかるわ。」
〘これで手助けは終わりよ。あなた、大事な目的があるんでしょ?私の身体を大切にしなさいよ!絶対に死んじゃだめよ!〙
「わかったわ!大丈夫!私、がんばるから!ねえ、リーナ!また助けてくれる?」
〘覚えておきなさい。あなたは私。私はあなたよ。〙
そう言い残して頭の中の声は途切れた。
私は彼女の言った通りの術を発動した。
『水・伍式:霧化!』
私の身体は水に変わり、やがて霧になって独房から抜け出たのだった…。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
111
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる