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第一章 ジンディオールの復讐編
第30話 サマルト法国・前編(タキモト視点)
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《ジンたちがイースラン公国の公都フェルナンドへと旅立った頃、リーナ・タキモトは…。》
私は一時的だが鹿に乗り移った『女神様』に助けられた。彼女は魔剣士リーナの身体に転生した私に協力してくれるらしい。
私は見知らぬ森でただ一人でおり、帝国の追手から逃げるためにも森を抜けて隣国サマルト法国へ向かうことになった。
幸い、鹿の案内のおかげで魔物との戦闘はあっても、道に迷うことはなかった。
(驚いた!あの恐ろしい怪物と戦う力があるなんて…。しかもどのように戦えばいいのかわかるし、落ち着いて戦いに集中できていた。何だが不思議…。)
前の身体の持ち主『リーナ』が持つ記憶や、経験は鮮明に私に引き継がれているようだった。
何故、リーナが殺されたのか…。
魔剣士隊のこと…。
隊長、『ジンディオール』のこと…。
不思議な感覚だった。
それでも死亡したリーナが私として生き返ったことで、レベルは1まで下がっていたが、森での魔物との戦いで少しずつ成長している感覚はあった。
〘リーナ!ボクはここまでみたいだ。もう時間がない。だけど、もうすぐ森は抜けるよ。〙
「そうなんですか?とても心強かったです。わかりました!後は何とか頑張ってみます。」
〘うん!君の活躍を期待しているよ!ああ、忘れるところだった。君の向かっている法国は…だから森を抜けたら…迂回…がいい…〙
「あっ、女神様!?」
どうやら女神様との交信は途切れたようだ。
先ほどの鹿は、私の姿を見て驚いた顔をして、再び森の奥へと去っていった。
きっと、役目を終えて帰ったのだろう。
「女神様も、鹿さんもありがとう!」
(女神様は、最後に何を伝えようとしていたのかな?正直、よく分からなかったし、まあいいか…。)
私は更に森を進むと平野に出た。
◇ カルゾ平野 ◇
「やった!あの恐ろしい森は終わり!情報収集しながら南を目指すんだったわね?確か…ディオールフブキさんだったかな?隊長の名前と先輩の苗字を合体させたような名前ね?まあ、いっかぁ。」
私は平野を南へ向かって進んだ。
途中、村のような集落があり、休養をとらせてもらうと、村人の勧めで首都クルールを目指すことにした。
ここは、既にサマルト法国という国に入っていて、一番大きな都市が首都クルールだそう。
捜し人の情報収集には大きな都市の方が都合良さそうなので、何の不安もなく首都へ向かって歩を進めたのであった…。
◇ 首都クルール 正門 ◇
「うわぁぁ!大きい!ファンタジーや!」
先輩が生きていたなら喜びそうな、まるで異世界の世界観を持った建造物が目の前に迫っている。
首都ということもあり、とてつもなく広大なのはわかるが、この高い壁は圧巻である。
とてもよじ登れない程の高い壁が、都市を取り囲むように張り巡らされているのである。
建造の技術も凄いだろうが、この広大な広さを囲う壁を造るのは容易ではなかったことだろう。
正門のような場所があり、ここ以外の場所から街中に入るのは無理だろう。
私は仕方なく入場の列に並んだ。
「嬢ちゃん一人かい?」
「ええ、そうですけど?」
私の後ろに並んだ老人に声を掛けられ、答えた。
「どこから来たんじゃ?」
「ああ、えーと。レーナス帝国だよ!」
「なんと!帝国とな?あんた帝国人かい?」
「ああ。元かな?もう出て来ちゃったからね。」
「悪いことは言わん。ここから引き返した方がええ。旅をするなら西のセロムの方があんたには安全じゃよ!」
「親切なおじいさん。ありがとう!私も用があるから長居はしないつもり。」
「いや、そういうことでは…。」
「おい!次の者!さっさと来なさい!」
私の番が来ておじいさんとの話は途切れた…。
「白エルフか、珍しいな。身分証を提示しろ!」
「え!?身分証ですか??私、持っていません!」
「何?持っていないだと?キサマ何処からやってきた?」
「えっと、レーナス帝国ですけど?」
「帝国だと!!よくもヌケヌケと!もしや、帝国の間者じゃないだろうな?ちょっとこい!取り調べだ!」
「え!?ちょっと!」
よくわからないが、帝国と言った瞬間に兵士の態度が変わり、詰め所の取り調べ室に連れて行かれた。
その後、魔道具によって私が帝国の元魔剣士隊であることがわかると、詰め所を離れて収容所と呼ばれる場所へと運ばれてしまうのだった…。
私は一時的だが鹿に乗り移った『女神様』に助けられた。彼女は魔剣士リーナの身体に転生した私に協力してくれるらしい。
私は見知らぬ森でただ一人でおり、帝国の追手から逃げるためにも森を抜けて隣国サマルト法国へ向かうことになった。
幸い、鹿の案内のおかげで魔物との戦闘はあっても、道に迷うことはなかった。
(驚いた!あの恐ろしい怪物と戦う力があるなんて…。しかもどのように戦えばいいのかわかるし、落ち着いて戦いに集中できていた。何だが不思議…。)
前の身体の持ち主『リーナ』が持つ記憶や、経験は鮮明に私に引き継がれているようだった。
何故、リーナが殺されたのか…。
魔剣士隊のこと…。
隊長、『ジンディオール』のこと…。
不思議な感覚だった。
それでも死亡したリーナが私として生き返ったことで、レベルは1まで下がっていたが、森での魔物との戦いで少しずつ成長している感覚はあった。
〘リーナ!ボクはここまでみたいだ。もう時間がない。だけど、もうすぐ森は抜けるよ。〙
「そうなんですか?とても心強かったです。わかりました!後は何とか頑張ってみます。」
〘うん!君の活躍を期待しているよ!ああ、忘れるところだった。君の向かっている法国は…だから森を抜けたら…迂回…がいい…〙
「あっ、女神様!?」
どうやら女神様との交信は途切れたようだ。
先ほどの鹿は、私の姿を見て驚いた顔をして、再び森の奥へと去っていった。
きっと、役目を終えて帰ったのだろう。
「女神様も、鹿さんもありがとう!」
(女神様は、最後に何を伝えようとしていたのかな?正直、よく分からなかったし、まあいいか…。)
私は更に森を進むと平野に出た。
◇ カルゾ平野 ◇
「やった!あの恐ろしい森は終わり!情報収集しながら南を目指すんだったわね?確か…ディオールフブキさんだったかな?隊長の名前と先輩の苗字を合体させたような名前ね?まあ、いっかぁ。」
私は平野を南へ向かって進んだ。
途中、村のような集落があり、休養をとらせてもらうと、村人の勧めで首都クルールを目指すことにした。
ここは、既にサマルト法国という国に入っていて、一番大きな都市が首都クルールだそう。
捜し人の情報収集には大きな都市の方が都合良さそうなので、何の不安もなく首都へ向かって歩を進めたのであった…。
◇ 首都クルール 正門 ◇
「うわぁぁ!大きい!ファンタジーや!」
先輩が生きていたなら喜びそうな、まるで異世界の世界観を持った建造物が目の前に迫っている。
首都ということもあり、とてつもなく広大なのはわかるが、この高い壁は圧巻である。
とてもよじ登れない程の高い壁が、都市を取り囲むように張り巡らされているのである。
建造の技術も凄いだろうが、この広大な広さを囲う壁を造るのは容易ではなかったことだろう。
正門のような場所があり、ここ以外の場所から街中に入るのは無理だろう。
私は仕方なく入場の列に並んだ。
「嬢ちゃん一人かい?」
「ええ、そうですけど?」
私の後ろに並んだ老人に声を掛けられ、答えた。
「どこから来たんじゃ?」
「ああ、えーと。レーナス帝国だよ!」
「なんと!帝国とな?あんた帝国人かい?」
「ああ。元かな?もう出て来ちゃったからね。」
「悪いことは言わん。ここから引き返した方がええ。旅をするなら西のセロムの方があんたには安全じゃよ!」
「親切なおじいさん。ありがとう!私も用があるから長居はしないつもり。」
「いや、そういうことでは…。」
「おい!次の者!さっさと来なさい!」
私の番が来ておじいさんとの話は途切れた…。
「白エルフか、珍しいな。身分証を提示しろ!」
「え!?身分証ですか??私、持っていません!」
「何?持っていないだと?キサマ何処からやってきた?」
「えっと、レーナス帝国ですけど?」
「帝国だと!!よくもヌケヌケと!もしや、帝国の間者じゃないだろうな?ちょっとこい!取り調べだ!」
「え!?ちょっと!」
よくわからないが、帝国と言った瞬間に兵士の態度が変わり、詰め所の取り調べ室に連れて行かれた。
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