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第一章 ジンディオールの復讐編

第29話 ギルドランクアップへ(後編)

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 ジュリアの後に、私のランクアップ試験が始まった。

 私はフレイによって膨大ぼうだいな魔力をうしなったが、それでもひとみな魔力量は保持ほじしている。

 しかし、ジュリアのように攻撃魔法や回復魔法をあやつることはできない。

 そこで、剣士としての腕を模擬戦もぎせんためされることになった。

 訓練場の中央に進み出て、対戦相手と対峙たいじする。

 相手はベテランの剣士だ。『インフォ』で彼の情報を確認しよう。

《 基礎情報 》
名前:ターザ
レベル :19
性別:男性
年齢:33歳
種族:人犬ひといぬ
職業:冒険者(剣士) ランクC
国家:イースラン公国
説明:イースラン公国の冒険者。戦士として目立った才能はないが、真面目で周囲から信頼されている。

《 スキル 》
剣術:レベル2 (剣術スキル:二連斬)にれんざん

(なるほど…。俺は先日のバトルでレベルが35になったから、負けはしないだろう。だが、ベテランの戦士は様々な経験をんでいる。けっして油断ゆだんはできない。)

 互いに模擬戦用の木剣もくけんと木の盾を手に取り、かまえる。

 審判しんぱんはギルマスのランピヨさんがつとめるようだ。

「二人とも準備はいいか?では、始めろ!」

 私たちは、静かに息を整えながら距離をめていく。

 ターザさんは無駄むだな動きをせず、冷静れいせいに私の動きを見ている。

 彼は数多くの戦場で生き残ってきたのだろう。相手の技量ぎりょう見極みきわめるまで、無理に攻め込もうとはしない。

 それは私も同じだ。

 相手の間合いに入るということは、危険に立ち向かうということだ。

 私は自分に有利ゆうりいをさぐりながら、慎重しんちょうに攻める。

(よし今だ!)

「はぁぁぁ!」「おりゃあ!」

 私とターザさんは、同時に一歩んで斬りかかる。

《カン!》

 剣と剣がぶつかり合う…。

 流石はCランクの冒険者だ。以前戦った盗賊の時とは違い、ターザさんの剣は重く、鋭い。

「二連斬!」

 剣が弾かれた瞬間に、ターザさんはひといきつくことなく、再び斬りつける。
 
 私は相手の攻撃を予想できなかったが、剣の軌道きどうがしっかりと見えていた。

 ギリギリでかわす。

 《シュッ!》

 しかし、かわしたはずの剣がすぐに戻り、顔をねらってきていた。

(危ない!二連斬とは、こういうことか。)

《カン!》

 間一髪かんいっぱつで盾で防ぐ。

「ほう…あれを止めるか。若造、なかなかやるな!」

 ターザさんは、今の一撃で決めたと思っていたのだろう。私が防いだことに驚いている。

《シュッ!》

 私も反撃にてんじる。

《カン!》

 ターザさんも盾で受け止める。

「クッ。あんたもなかなかだな!」

 私たちの攻防に、観客席はり上がっている。

 ターザさんは、派手はでな技は使わないが、すきを見せないようにバランスの取れた戦い方をする。

 彼はベテランだけあって、安定感があった。

 しかし、私も負けてはいない。

 (『四神斬ししんざん』なら、確実に決められるだろうが、これだけの観客の前で、あまり目立ちたくないな。)

「若造!まだまだだぞ!二連斬!」

(やはり、スキルは二連斬だけか。それならばこれだ!)

「『俊脚しゅんきゃく!』『衝斬しょうざん!』」

「ん?一体どこに…うわぁぁ!」

《バタッ!》

 ターザさんは、俊脚によって私を見失い、背後からの一撃で倒れた。

「勝負あり!そこまでだ!」

 審判のランピヨさんの声で、勝敗がけっした。

「すごいぞ!」「あの新人…Cランク相手に勝っちまいやがった!」「一瞬消えたかと思ったら、ターザの背後にいたぜ!」「俺もそう見えたよ。」「あいつはEランクだって聞いたけど、本当か?」「信じられないな…。」

 観客席からは歓声かんせいき起こった。

 少し目立ちすぎたかもしれないが、ほとんど本気を出さずに勝てたので、まあいいとしよう。

 今回使ったのは、レベル26の時に習得した剣術スキル:『衝斬しょうざん』と、レベル33の時に習得したユニークスキル:『俊脚しゅんきゃく』だ。

 まずは、『俊脚』で足の速さを上げて、相手の攻撃をかわして背後に回る。

 そして、斬撃に衝撃波しょうげきはを加える『衝斬』でターザさんを仕留しとめたというわけだ。

 自分で言うのもなんだが、以前よりかなり強くなったと思う。

 それは、幼女神ようじょしんさまの加護や、ジンディオールの元々の能力の高さのおかげだということもわかっている。

(ジンディオールは、能力をうばわれて弱くなったはずだ。全盛期ぜんせいきの彼は一体どれほどの強さだったことだろう…。)

「おい!ターザを医務室いむしつに運べ!」

 ギルマスが指示しじを出すと、ギルド職員が何人か現れてターザさんを運んでいった。

「ジン!見事な勝利だったな。最後のあれは何だ?異常な速さに見えたが?」

 ランピヨさんは、私のスキルに気づいていたようだ。

「さあ、なんだろうな。」

「ワハハ!まあ、自分の能力を軽々しく言う訳がないよな。よし!剣士ジン!Cランクへの昇格を認める!」

 観客席からの拍手はくしゅとともに、模擬戦は終わったのだった…。
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