上 下
23 / 81
第一章 ジンディオールの復讐編

第23話 キャスティール王国進軍(フレイ視点)

しおりを挟む
 ◇ フレイ視点 ◇

 ジンディオールが死亡してからしばらく経ち、私は魔剣士隊長に任命にんめいされた。

 そして、隊長としての役割やくわりれる前に、隣国キャスティール王国への侵攻を命じられたのだ。

 キャスティール王国は、ヒューマンの一族が代々王位をいでいる国だ。

 古くから我が祖国と対立してきた歴史があり、今回の戦争は長年の因縁いんねんに決着をつけるというぐん司令官しれいかんの言葉にしたがったものだった。

 国境を越えて魔剣士隊をふくめた約一万の大軍で一気に王都ブールをした。

 途中、キャスティール軍の抵抗ていこうったが、その程度の兵力では我が軍にはかすり傷にしかならなかった。

 キャスティール軍は劣勢れっせいに追い込まれて、王城に籠城ろうじょうするしかなかった。

 我々は王城を包囲ほういし、魔剣士隊は制圧せいあつ部隊として王城に侵入した。

 我々魔剣士隊の任務は、自国の兵を無駄に失わないために、王城をわずか十人で制圧せいあつするというものだった…。

 ◇ キャスティール城内 ◇

「来るな!」

《ザンッ!》

「ぐはぁ!」

「降伏する!殺さないでくれ!」

《ズシュッ!》

「ああぁぁ!」

 魔剣士隊は一斉いっせい突入とつにゅうした。

 我々は幼い頃から殺しの技術をたたき込まれ、『兵器』として育てられてきた。

 一人一人が一騎当千いっきとうせんの力を保有ほゆうしている。

 つまり、一人で千人の兵を相手にできる程の実力を持っているということだ。

 魔剣士隊は歴代から十人で構成されている。

 ジンディオールが死んだ後、『ラボ』から新たなが送り込まれた。

「ジュアンにゾフ。大丈夫ですか?」

「フレイ隊長!問題ありません。王国の連中は、雑魚ザコばかりです。我々の敵ではありませんね。」

「敵をあなどってはいけませんよ。あなたたちはまだ若い…。どこにでも強者はいるものです。油断せずに戦いなさい。」

「はい!承知しました!」「はっ!」

 ジュアンはジンディオールの空席くうせきめるために補充ほじゅうされた、序列九位の魔剣士である。

 ゾフは、私を裏切ったあのリーナの空席くうせきめるために補充ほじゅうされた、序列十位の魔剣士である。
 
 隊長としては部下の育成も仕事のうちだ。

 という我々の地位がるがないように、常に最善さいぜんくさなければならないのだ。

「さあ、みなさん。殲滅せんめつしてしまいましょう。目的は王の間です。そして、この国を我々の手に収めましょう。」

「おう!」「隊長もやる気だな!」「クソヒューマンどもをぶっ殺せ!」「こいつら弱すぎて面白くないぜ。」「おう!ジュアン!ゾフ!遅れるなよ!」「はい!」

 魔剣士隊員は士気が高く、敵の兵士たちは恐怖きょうふふるえていた。このまま進めば勝利は目前だった。

 ◇ 王の間 ◇

「ここが王の間のようですね?」

 城内の至る所で戦闘が繰り広げられたが、我々にかなう者はいなかった。

 多勢たぜい無勢ぶぜいのはずなのだが、ここにたどり着くまでに怪我人すら出なかったのだ。

 そして、王の間に到着した。

 キャスティール王をとららえて降伏こうふくさせれば、この国は我が国のものとなり、戦争は終わる。

「あなたがキャスティール王ですか?意外に若いですね。もっと老人だと思っていましたよ。」

 私は玉座に座る王に目をやった。

 王とは初めて顔を合わせたが、まだ成人すらしていないだろう子供の王だった。

不敬ふけいな!この方こそ、キャスティール王ぞ!祖国の罪をいて、今すぐ帰国せよ!」

「ここまで来たのに、歓迎かんげいのお茶も出さないのですか?失礼な国ですねぇ。」

 私は敵を挑発ちょうはつするような言葉を投げかけた。

「ふざけるな!血にまった貴様きさまらを歓迎するわけがないだろう!」

 王は我々の存在におびえていたが、王の側にいた騎士が私に反応した。

 騎士団長だろうか。王の側近として権力けんりょくを持つ者のようだった。

「我々がここまで来たということは、あなた方の敗北は決定的です。これ以上の抵抗は無駄ですよ。降伏して王を引き渡してください。」

「断る!」

「あなたは王の配下なのに、勝手に決断をしてもいいのですか?王は降伏したい様に見えますが…。」

貴様きさまにアルザス様の心情しんじょうがわかるものか!この方はこの国を愛し、この国のためにくされた。貴様らのような覇権国家はけんこっかくっする訳がない!」

「何を言っても無駄ですよ。この世界は強者きょうじゃ正義せいぎです。弱者じゃくしゃ排除はいじょされるか、強者にしたがうしかありません。」

「ならば、このレイヒム!お国のためにここで王を守り抜く!」

 レイヒムと名乗る騎士が我々の前に立ちはだかった。

 彼の実力は優れているだろう。

 はっきりとした実力ははかりり知れないが、我々魔剣士に引けを取らないくらいに強いかも知れない…。

(全員でかかれば楽勝ですが、一対一なら面白そうですねぇ…。)

「隊長!私が相手します!」

 りを上げたのは序列九位の若き魔剣士ジュアンだった。

「ジュアン!お前は先輩を差し置いて何を言う!わきまえろ!」「おい、ゼル!お前だって八位だろう?」「貴様らにはまだ早い!私がやる!」

 我が隊員は、剣士としては優秀だが、性格になんがある者が多かった。

 それぞれが手柄てがらねらって統制とうせいが取れなくなっていた。

(ここは隊長としてまとめなければなりませんねぇ…。)

『静かになさい!!』 
「ここは隊長である私が決めます。わかりましたか?」

 私は『威圧いあつ』のスキルを使って隊員たちに言い聞かせた。

 全員がだまり込み、うなずいた。

「では、ジュアン!前に出なさい!」

「はい!」

「よく聞いてください。あのレイヒムは、我々魔剣士に及ぶ実力があるかも知れません。油断せずに全力で戦うことをちかってくれますか?」

「もちろんです!誓います!」

 私はジュアンの目を見つめた。彼の目には闘志とうしが燃えていた。

「それならいいでしょう。あなたに任せます。頑張ってください。」

「ありがとうございます!やってみせます!」

 ジュアンはレイヒムに向かって走り出した。

 彼の剣は鋭く光っていた…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

リッチさんと僕

神谷モロ
ファンタジー
 異世界から転生された勇者は冒険のすえについに魔王を倒した。    しかし、彼はその後、人里を離れダンジョンで暮らし始め、そこで天寿を全うした。  彼の最後を看取ったは、このダンジョンで出会った一人の少年とメイドのみだった。 ……時はたち、少年は久しぶりに勇者の墓へ訪れた。  その墓の前で、ローブをまとった骸骨が一人立っていた。 「驚かしてしまったかな、私は……そうだな、リッチと呼ばれるものだ。安心してほしいこう見えても以前は教師だった。自分で言うのも何だが悪いモンスターではない」

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転移した異世界が無茶苦茶なのは、オレのせいではない!

どら焼き
ファンタジー
ありがとうございます。 おかげさまで、第一部無事終了しました。 これも、皆様が読んでくれたおかげです。 第二部は、ゆっくりな投稿頻度になると思われます。 不遇の生活を送っていた主人公が、ある日学校のクラスごと、異世界に強制召喚されてしまった。 しかもチートスキル無し! 生命維持用・基本・言語スキル無し! そして、転移場所が地元の住民すら立ち入らないスーパーハードなモンスター地帯! いきなり吐血から始まる、異世界生活! 何故か物理攻撃が効かない主人公は、生きるためなら何でも投げつけます! たとえ、それがバナナでも! ざまぁ要素はありますが、少し複雑です。 作者の初投稿作品です。拙い文章ですが、暖かく見守ってほしいいただけるとうれしいです。よろしくおねがいします。

異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天
ファンタジー
 幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!  創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。  『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく  はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!

処理中です...