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第一章 ジンディオールの復讐編

第14話 もう一人の転生者(タキモト視点)

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 目が覚めると、私は森の中にいた…。

 周りは静かで、木々の隙間すきまから陽光ようこうが差し込んでいる。

 風がくと、葉がさらさらと音を立てて、髪をでるように優しくれてくる。

 肌に感じるぬくもりは心地ここちよかった。

「ここは…どこ?」

 目を覚ました私は、首を左右に振って辺りを見回した。

 そこは、全く見覚えのない景色だった。

 自分がどうしてここにいるのかも思い出せなかった。

「もしかして…天国?」

 ふと、そんなことを考えた。

 確か、先輩が亡くなったあと、私はショックでノイローゼになってしまった。

 日々の生活に耐えられなくなって、ぼんやりと街を歩いていたら…。

「あれ…?」

 記憶が途切れている。

 最後に覚えているのは、道路の真ん中に立っていたことだ。そのあとは…何も思い出せない。

「本当に死んじゃったのかしら…?」

 私は自分の身体を見下ろした。手足は動くし、痛みもない。

 でも、何かがおかしい。

「これは…何?」

 私は驚いて手に持っていたものを見た。

 それは石のようだったが、粉々になっている。

 私がにぎりしめると、さらに細かくくずれて砂のようになり、風にって消えてしまった。

「それに…この服!?血だらけじゃない!」

 私は慌てて立ち上がって服装を確認した。

 着ていたのは制服のようなものだったが、所々に血痕けっこんがついている。

「どういうこと!?私は何かしたの!?」

 私はパニックになって周囲を見渡した。

 寄りかかっていた木の幹にも血が付着している。

「やだ…怖い…。」
 
 私は震えながら思った。

 自分が何者なのかもわからないし、この場所もわからない。

 さっきまで東京にいたはずなのに…。

「意味がわからない…。」

 私は考えるのをやめて歩き始めた。

 道もない森の中だったが、どこかへ行きたかった。

 いや、早くここから立ちらないとならないと感じていた…。

 この森を抜ければ人間の住む場所があるだろうと思った。

(帰りたい…家に帰りたい…。)

 私は涙を流しながら歩き続けた。

 でも、誰も居ないし、道もわからない。

 やがてちからきてへたり込んでしまう。

「誰か…助けて…。うわぁぁん。」

 私は不安と恐怖がピークに達して、大声で泣きさけんだ。

 しかし、返事は返ってこなかった。そんな時だった…。


〘 ごめんごめん!遅くなってしまった。〙

 しげみから飛び出してきたのは、鹿しかだった。

「ひゃあ!」

(鹿!?今声がしたような気がするけど、まさかね…。)

〘こっちだよ、こっち!〙

「やっぱり声がする!えっ!?鹿がしゃべっているの?」

〘そうだよ!厳密げんみつにはボクが鹿の身体を借りて君と話しているんだよ。〙

「えぇー!まさか、ドッキリ!?」

〘はぁ?違うってば!ボクは女神さまだよ!女神メルル。〙

「えぇ!女神さま!?」

〘まあ、無理もないけど、君は色々なことが分からな過ぎだよ!はっきり言うけど、君は車にかれて死んで、異世界に転生したんだよ!〙

「え!本当に死んじゃったんですか?やっぱりなぁ。でもここは?」

〘 君からすると異世界と言われる場所で、これから生きていく世界だよ。〙

「あぁ、生まれ変わったんですね…。でも赤ちゃんとかじゃないんだ…。」

〘まあ、それには色々な事情があるんだよ。でもさ…君、当たりだよ!新しい君の身体は、エルフだし、美人だし、ナイスバディだし。前の世界の君に持っていないものみんな持っているよ!〙

「えへへ。それなら良かったです!それで、どうして私は転生を?」

〘うん。ちゃんと理由はあるんだけど、今は言えないかな。ごめんね。 だけど、君が転生することは必然ひつぜんであり、運命うんめいなんだよ。〙

「運命ですか…。私はこれからどうしたらいいんですか?」

〘君にはある人物に会って、その人をサポートして欲しいんだよ。〙

「ある人とは?」

〘ゴホンッ…ディオール・フブキという人だよ。〙

「最初の方が良く聞き取れなかったわ。えっと…ディオールフブキさんね?何処どこにいるの?」

〘今は大陸南部のイースラン公国にいるよ。〙

「知らないわね。あれ…おかしいな。やっぱりなんか聞いたことあるような…。」

〘肉体の持ち主の記憶が残っているみたいね?目的の彼も旅を続けながら北を目指すだろうから、途中できっと遭遇そうぐうするはずだよ。〙

「わかりました。とりあえずの予定は南へ行きディオールフブキさんを探せばいいのね?それはいいんだけど、この状況は…。」

〘ああ、そうだね。わかっているよ。しかし、ボクは女神だからあまりこの世界に介入かいにゅうできないんだよね。〙

〘まあ、今回は特別に君のひどい状況に合わせて服を用意しよう。それと、この森を抜けた先にある国『サマルト法国』までの道案内しようじゃないか。〙

「助かるわ!女神さま、ありがとう!」

 女神さまは、世界の介入に関する制限があるようで、鹿の身体を借りて私に接触せっしょくしてくれたのだそうだ。

 そして、この鹿が森を抜けた先にある『サマルト法国』という場所まで案内してくれるようだった。

〘あっ、そうそう。君って結構強い人物だったから戦闘とかも安心していいよ。蘇生そせいしてレベルは1になったけど、経験を積むうちにどんどん強くなるから。一応、適当てきとうに能力付けといたから…。〙

「適当って…。あの…その能力を見られる方法はあるんですか?」

〘もちろんあるよ!『インフォ』という能力だよ。自分だけじゃなくて、他人の能力や、物などの情報もわかるよ。レベルが上がれば見られる情報の種類も増えるから頑張ってね!〙

「わかったわ!ありがとう!」

 私は、早速『インフォ』と呼ばれるスキルを使用した。

 インフォを使おうと考えただけで使えてしまったようだった。

《 基礎情報 》
名前:リーナ・タキモト
レベル :1
性別:女性
年齢:39歳
種族:エルフ
職業:無職
説明:瀧本里奈の魂がリーナに宿った転生体。かつては大陸最強の部隊である『魔剣士隊』に所属していた。ジンディオールの殺害の罪をフレイに擦りつけられ部隊を後にする。一度死亡したことで弱体化している。

《 スキル 》
魔剣士(水):レベル4
剣術:レベル3
インフォ:レベル1
unknown
unknown
unknown

《 加護 》
女神エルル

「何これ!?すごーい!私って本当にエルフなのね?でも、年齢が昔と同じなんだけど!」

〘ああ、エルフは長命種だからね。その年齢でもかなり若い方だよ…。もういい?ボクは忙しいからもう行かないと…。じゃあ、案内するから着いてきてよ!〙

「ああ!エルルさま!待って~!アレ?何だこれ??」

 足元に不気味な目を模倣した置物が落ちていた。

再現さいげんひとみ?キモイけどこの人の大事な物かな?一応持っていこう…。ヤバい、見失う…。エルルさま、待って~!」

 不思議と見覚えがあるので、自分が落とした物だろう。

(先輩…。私は新しい世界でも頑張っていますよ!天国から見守っていて下さい。)

 私は、鹿の姿のエルル神を必死に追いかけたのであった…。
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