元最強魔剣士に転生しちゃった。~仇を追って旅に出る~

飛燕 つばさ

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第一章 ジンディオールの復讐編

第8話 ゴブリンの巣穴(後編)

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 ゴブリンの巣穴を発見した私たちは、迷わず殲滅作戦せんめつさくせんに移った。

 ゴブリンどもは一撃で斬りせられていくが、その中から一匹だけ異様いような体格のゴブリンが現れた。

(でかい…。こいつがゴブリンの首領しゅりょうか?)

 私は、これまでとは桁違けたちがいの存在感そんざいかん圧倒あっとうされながらも、警戒心けいかいしんを高めた。

『インフォ』というスキルで情報を収集しようとしたが、あまり詳しいことは分からなかった。

《 基礎情報 》
名前:バラモ
レベル :18
種族:ゴブリンリーダー(変異種)
説明:ゴブリンの変異種。変異条件は不明。ゴブリンよりはるかに強靭きょうじんな肉体を持ち、知性も向上して人の言葉を理解する。

《 能力 》
unknown

 やはりゴブリンの変異種で、種族名がゴブリンリーダーとなっている。

 ゴブリンは、基本的に5レベル以下の個体が多い。

 それに比べて、ゴブリンリーダーは18レベルという驚異的きょういてきな数値だった。

 これまでの敵とは、力の差は歴然れきぜんだろう。

 インフォのレベルが2に上がったとはいえ、相手の能力や弱点を見ることはまだ難しいようだ。

「みんな、奴はゴブリンの変異種だ。危険だから巣穴の外で待っていてくれ!」

「ジンさん、あれは相当強そうだぞ!勝てるか?」

「大丈夫だ。私に任せてくれ!」

 私は村人に安心させるように笑顔で答えた。

 彼らは私に激励げきれいの言葉を投げかけると、言われた通り巣穴から外に移動していった。

賢明けんめいダナ。あやつらデハ傷一つ付けられないダロウ。」

「そのようだな。」

 私は冷静に返したが、心の中では緊張していた。この戦いが私の運命を左右することを感じていたからだ。

 インフォによって相手の方がレベルは上だとわかった。

 油断はできないが、こちらも幾度いくどの戦闘経験によってかなりレベルが上昇しており、前よりも更に強くなったことだろう。

 お互いに有利ゆうりいをさぐりながら攻撃のタイミングをうかがっている。

 均衡きんこうを破ったのはゴブリンリーダーの方である。

つぶしてヤル!」

 ゴブリンリーダーの棍棒こんぼうが勢いよく私の頭上へと振り下ろされる。

「くっ!」

 相手の攻撃の激しさに驚きながらも、体の感覚が危険を察知さっちして、反射的はんしゃてき回避行動かいひこうどうを取っていた。

《ドカッ!》

 回避には成功する。

 しかし、思い切り打ち込まれた棍棒が地面深くにめり込んでおり、その攻撃の強さを物語っていた。

(やばい…。あんなの直撃したらひとたまりもないぞ!だが、今のですきだらけだ!)

 私は相手の攻撃の破壊力はかいりょくに驚きつつも、直感ちょっかん好機こうき見定みさだめて攻撃を仕掛けたのである。

《ザンッ!》

 肩からお腹に達する斬撃ざんげきがゴブリンリーダーをとらえた。

「グァァァ!!」

 致命的ちめいてきなダメージにはいたらなかったが、確かな手応えを感じていた。

(よし!これなら行ける!)

 勝利を確信して再度するどい斬撃を放った。

「調子に乗るナ!シールドSスモール!」

《ガキン!》

 ゴブリンリーダーに対して体重の乗った鋭い斬撃が直撃したと思った矢先やさき、剣が何かの抵抗を受けてはじかれてしまう。

 剣を持つ手にしびれた感覚を覚える。

「何だ!?今、何かの干渉かんしょうを受けたぞ。」

「ハハハ!驚いたカ?俺は『シールドS』が使えるんダ!もう、ダメージを受けることはないゾ!」

「くそっ!これはまずい…。」

 インフォではレベル不足で入手できない情報があったことを思い出す。

 ゴブリンリーダーは、『シールドS』というスキルを使用したらしい。

 この時、この世界に存在するスキルという能力がとてつもない効果を発揮はっきすることがわかった。

 そしてそれは、あまりにも非現実的ひげんじつてき作用さようであることに驚嘆きょうたんするが、それと同時に凄い力をめていることに感心したのである。

 だが、この『シールドS』を発動されたことで、こちらの攻撃が防がれてしまうことは絶望的ぜつぼうてきであり、もはや打つ手がないことを意味していた。

(やばいな。もう撤退てったいするしかないか…。)

〘…聞け。シールドSには、防御回数に制限がある。たとえ弱い攻撃であっても、15回打ち込めば消失する…。〙

 突然、頭の中に声が聞こえた。

 わずかに聞き取れる程の小さな声だった…。

 以前、幼女神さまから『念話』という能力で似たようなことを経験したが、明らかに男性の声色だったため、幼女神さまとは関係のない誰かからのメッセージだったのだろう。

(誰の助言かはわからないが、先程のアドバイスはシールドに対抗する素晴らしい手段となりそうだ。一度信じてやってみるか。)

 私は謎の助言を信じて、上限である回数15回を超えて攻撃することを決意した。

 まるでゲームのような単純な弱点だが、失敗するような気はしなかった。

《キーン!カン!カン!キン!》

 連続攻撃によって剣をる訳にはいかないので、適度てきどに力をゆるめた斬撃を繰り返した。

 謎の声によると、打撃の強さは関係ないと言っていたので問題は無いはずだ。

「ハハハ!ムダ!ムダ!何だその軟弱なんじゃくな攻撃ハ?それでは永遠にシールドは破れないゾ!」

 ゴブリンリーダーは、愉快ゆかいそうに私の攻撃を眺めながら、余裕の笑みを浮かべていた。

「本当にそうかな?9…10…11…12。」

「何を言ってイル?もう打つ手が残っていないのダロウ?」

「残念だが、あるんだよ!13…14…15!」

《パリン!!》

 私が15回目の攻撃をヒットさせると、助言があった通り、ゴブリンリーダーが自信を持っていた『シールドS』が音を立ててくずった。

「何だト?馬鹿ナ…。」

 ゴブリンリーダーもこのことは想定外そうていがいだったらしく、青ざめた表情を浮かべていた。

「シールドSには回数制限があるんだ。知らなかったようだな?」

「クソッ!それならば、もう一度やるマデ…。何?デキナイ…。消失するとしばらく使えないのか!?ぐぬぬ…。」

 ゴブリンリーダーは、能力におぼれてスキルの詳細な制限までは把握はあくしていなかったらしい。

(シールドSが無いのなら俺にも勝機しょうきが見えてきたぞ!よし!あれを試すか。)

 私は、ゴブリンリーダーを倒すために一つの方法を試すことにしたのであった…。
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