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第ニ章 遡及編
第50話 第二章 エピローグ
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《キーン!》
レジャックさんの元から再び図書室に戻ると、突然恵美さんがナイフを振り降ろしてきた。
どうやら、レジャックさんの所に移動した直前の時間に戻ったらしい。
しかし、ナイフは見えない壁のような障壁によって阻まれた後、床に落ちる音を響かせた。
恵美さんと華香は、目の前で起こった光景に目を見開き、驚愕の表情を浮かべていた。
それは、事情を知らない私にも言えることであった。
恐らくは、レジャックさんが何らかの手を差し伸べてくれたのではないだろうかとは思うが、その確証はない。
こんな便利な壁があれば、何度も殺されずに済んだのにとも思うが、ここは素直に感謝したい。
「真由、あなたは何者なの?一体何をしたの?」
「私は、普通の人間よ。でも、あなたの思い通りにはならないわよ。」
「恵美に任せても埒が明かないわね。後で問題になるかもしれないけど、予定を変更して私があなたを殺すことにしましょう。覚悟しなさい。」
「そこまでだ!」
突然、黒い服に身を包んだ大勢の男たちが室内に入ってきて、奇妙な形状の武器を華香に向けた。
おそらく銃のようなものだろうが、今まで見たこともない形をしていた。
約10人の男たちに銃口を向けられ、華香は両手を上げるしかなかった…。
「ファン ・ ビージャン。君は時空法違反の現行犯だ。逮捕する。」
「ふん。」
「今回のことで、君や君の国は大きな責任を負うことになるだろう。特に君に命令を下した組織に関する情報も洗いざらい吐いて貰うぞ。覚悟しておくといい。」
「黙秘する。」
「無駄だ。君には自白装置を行使する。」
「そんなことをすれば、国際人権法に違反することになるぞ。」
「過去の人間に洗脳を掛け、国際人権法に違反していたのは君だろう。それに、犯罪者やスパイには、人権は適用されないんだよ。残念だったな。」
「くっ…。」
華香は、国際時空警察官に逮捕され、姿を消した。
「危険な目に遭わせて申し訳ない。君の働きによって未来は守られた。心から感謝する。私たちは未来からやってきた国際時空警察官なんだ。」
ここに現れた殆どの人たちは、華香を連行するために既に立ち去ったが、一人だけここに残って私に話しかけた人がいた。
どうやらこの方が国際時空警察官の隊長さんなのだろう。
「あ、私は大丈夫です。ありがとうございます。」
「あなたのことは、あのお方から話を聞いている。本来なら関係のある全ての人々の記憶を削除させて貰うのだが、あなたは例外なのだそうだ。我々はあのお方の判断に従う。」
「では、そこの恵美さんは…。」
「佐々木恵美は、ファン ・ ビージャンとの強い接触があったことより、直近の記憶を消させて貰う。ついでに洗脳も解除しておこう。」
隊長さんは、見たこともない道具を取り出して恵美さんに対して何かをしていた。
その後、彼女は机に突っ伏すように眠ってしまったようだ。
「これでよし。私は、そろそろ帰らせて貰うよ。彼女は、もう大丈夫だ。しばらくすれば目を覚ますだろう。ああ、言い忘れる所だった。あなたがこれまで経験してきた佐々木恵美の異常な言動の問題は、ファン ・ ビージャンが繰り返し行った強制洗脳による副作用によるものである。今は、本来の彼女の性格を取り戻しているから、仲良くしてやって欲しいとあのお方の伝言だ。」
「はい。わかりました。気に留めておきます。」
「では、失礼する。」
隊長さんは、私に対して敬礼をすると、手元にあるスイッチの様な物を「カチッ」と押した。
隊長さんの身体は徐々に透明になっていき、最後には完全に見えなくなった…。
「ふぅ…。」
私は、軽く息を吐き出すと、恵美さんの所に移動して、優しく肩をさすって起こした。
恵美さんは、徐々に目を開く…。
「あっ…あなたは…拓弥君の彼女さんの…。」
「あまり、お話したことは無いですよね。私は、福田真由といいます。」
「真由さん…。あの…どうしてここに?」
「あ!えーと…。あなたが急に倒れたように見えたので、心配になって声を掛けてみたんです。」
「そうなんですか。ありがとうございます。私、どうやら寝ていたみたいです。なんだか夢の中に真由さんや、拓弥君が出てきたような気がするんですけど…、内容があやふやなんです。」
「えっ…。そうなんですね。ゆ、夢ね…。そうなんだ。えっと、恵美さんと拓弥君は…。」
「あっ…。サークル一緒だから親しくさせて貰ってますが、変な関係じゃないですからね。」
隊長の指摘通り、恵美さんの性格はあまりにも以前と異なっていた。
これが彼女の本来の性格なのだろうか…。
私は華香を一年生の頃から知っていたことから、その頃から恵美さんは何度か洗脳を受けてしまっていた可能性も考えられる。
「そうだ。恵美さん。本庄華香を知っていますか?」
「本庄…華香さん…。いいえ。初めて聞いた名前です。」
やはり隊長は、本庄華香という存在をこの時代から消し去っているのだろう。
未来の技術や規則についてはわからないことばかりだが、私にとっては知る必要のないことだと判断し、深く考えるのを止めることにした。
その後、恵美さんと私は図書室を一緒に後にした。
恵美さんからは、過去に何度も酷いことをされた経験があり、私は彼女に対して複雑な思いを抱いてしまう。
しかし、隊長さんを通じて伝えられたメッセージは、レジャックさん自身が託したものであり、その言葉には深い意味があると感じたのであった。
◇ ◇ ◇
その後、ループは再び起こることもなく、『未来の分岐点』である拓弥さんと私が別れる未来が訪れることもなかった。
私と拓弥さんは、更に良好な関係を築き、恵美さんともあの件以来、親友と呼ぶにふさわしいほどの親密な関係を築くまでに至っていた。
「真由!何してるの?グズグズしないでよ。拓弥君!真由なんてやめて私と付き合ったら?」
「こら!恵美!誰を口説いてるの?」
「あはは!冗談よ。」
「あはは。真由も恵美も本当に仲良くなったよな。まさか友達になるなんて思わなかったよ。」
「確かにね。さあ、三人で記念に撮ろうよ!」
《パシャ。》
スマホの画面に収められた三人の写真をみながら、私は改めて正しい未来へと向かっていることを実感している。
私たちは、今日大学を卒業した。
あれから私は、ループから解き放たれ、拓弥さんと別れなかった場合の未来の道を歩み始めている。
この道は、以前私が経験した未来とは異なる未来なのである。
そして、これまでの記憶は維持されたようだが、あの方から与えられた能力は、いつの間にか使えなくなっていた。
私たちが進む未来には、どんなことが待ち受けているのかはわからない。
でも、私は知っている。
私は拓弥さんと歩み、真弥と弘人と四人で幸せに過ごす未来を…。
ただし、それ以外のことは全くわからない。だからこそ、私は一生懸命に今を生きるのだ。
悔いの残らない未来を歩むために。
私たちの未来は、幸せで平和に満ち溢れていることを願って...。
―――― END ――――
レジャックさんの元から再び図書室に戻ると、突然恵美さんがナイフを振り降ろしてきた。
どうやら、レジャックさんの所に移動した直前の時間に戻ったらしい。
しかし、ナイフは見えない壁のような障壁によって阻まれた後、床に落ちる音を響かせた。
恵美さんと華香は、目の前で起こった光景に目を見開き、驚愕の表情を浮かべていた。
それは、事情を知らない私にも言えることであった。
恐らくは、レジャックさんが何らかの手を差し伸べてくれたのではないだろうかとは思うが、その確証はない。
こんな便利な壁があれば、何度も殺されずに済んだのにとも思うが、ここは素直に感謝したい。
「真由、あなたは何者なの?一体何をしたの?」
「私は、普通の人間よ。でも、あなたの思い通りにはならないわよ。」
「恵美に任せても埒が明かないわね。後で問題になるかもしれないけど、予定を変更して私があなたを殺すことにしましょう。覚悟しなさい。」
「そこまでだ!」
突然、黒い服に身を包んだ大勢の男たちが室内に入ってきて、奇妙な形状の武器を華香に向けた。
おそらく銃のようなものだろうが、今まで見たこともない形をしていた。
約10人の男たちに銃口を向けられ、華香は両手を上げるしかなかった…。
「ファン ・ ビージャン。君は時空法違反の現行犯だ。逮捕する。」
「ふん。」
「今回のことで、君や君の国は大きな責任を負うことになるだろう。特に君に命令を下した組織に関する情報も洗いざらい吐いて貰うぞ。覚悟しておくといい。」
「黙秘する。」
「無駄だ。君には自白装置を行使する。」
「そんなことをすれば、国際人権法に違反することになるぞ。」
「過去の人間に洗脳を掛け、国際人権法に違反していたのは君だろう。それに、犯罪者やスパイには、人権は適用されないんだよ。残念だったな。」
「くっ…。」
華香は、国際時空警察官に逮捕され、姿を消した。
「危険な目に遭わせて申し訳ない。君の働きによって未来は守られた。心から感謝する。私たちは未来からやってきた国際時空警察官なんだ。」
ここに現れた殆どの人たちは、華香を連行するために既に立ち去ったが、一人だけここに残って私に話しかけた人がいた。
どうやらこの方が国際時空警察官の隊長さんなのだろう。
「あ、私は大丈夫です。ありがとうございます。」
「あなたのことは、あのお方から話を聞いている。本来なら関係のある全ての人々の記憶を削除させて貰うのだが、あなたは例外なのだそうだ。我々はあのお方の判断に従う。」
「では、そこの恵美さんは…。」
「佐々木恵美は、ファン ・ ビージャンとの強い接触があったことより、直近の記憶を消させて貰う。ついでに洗脳も解除しておこう。」
隊長さんは、見たこともない道具を取り出して恵美さんに対して何かをしていた。
その後、彼女は机に突っ伏すように眠ってしまったようだ。
「これでよし。私は、そろそろ帰らせて貰うよ。彼女は、もう大丈夫だ。しばらくすれば目を覚ますだろう。ああ、言い忘れる所だった。あなたがこれまで経験してきた佐々木恵美の異常な言動の問題は、ファン ・ ビージャンが繰り返し行った強制洗脳による副作用によるものである。今は、本来の彼女の性格を取り戻しているから、仲良くしてやって欲しいとあのお方の伝言だ。」
「はい。わかりました。気に留めておきます。」
「では、失礼する。」
隊長さんは、私に対して敬礼をすると、手元にあるスイッチの様な物を「カチッ」と押した。
隊長さんの身体は徐々に透明になっていき、最後には完全に見えなくなった…。
「ふぅ…。」
私は、軽く息を吐き出すと、恵美さんの所に移動して、優しく肩をさすって起こした。
恵美さんは、徐々に目を開く…。
「あっ…あなたは…拓弥君の彼女さんの…。」
「あまり、お話したことは無いですよね。私は、福田真由といいます。」
「真由さん…。あの…どうしてここに?」
「あ!えーと…。あなたが急に倒れたように見えたので、心配になって声を掛けてみたんです。」
「そうなんですか。ありがとうございます。私、どうやら寝ていたみたいです。なんだか夢の中に真由さんや、拓弥君が出てきたような気がするんですけど…、内容があやふやなんです。」
「えっ…。そうなんですね。ゆ、夢ね…。そうなんだ。えっと、恵美さんと拓弥君は…。」
「あっ…。サークル一緒だから親しくさせて貰ってますが、変な関係じゃないですからね。」
隊長の指摘通り、恵美さんの性格はあまりにも以前と異なっていた。
これが彼女の本来の性格なのだろうか…。
私は華香を一年生の頃から知っていたことから、その頃から恵美さんは何度か洗脳を受けてしまっていた可能性も考えられる。
「そうだ。恵美さん。本庄華香を知っていますか?」
「本庄…華香さん…。いいえ。初めて聞いた名前です。」
やはり隊長は、本庄華香という存在をこの時代から消し去っているのだろう。
未来の技術や規則についてはわからないことばかりだが、私にとっては知る必要のないことだと判断し、深く考えるのを止めることにした。
その後、恵美さんと私は図書室を一緒に後にした。
恵美さんからは、過去に何度も酷いことをされた経験があり、私は彼女に対して複雑な思いを抱いてしまう。
しかし、隊長さんを通じて伝えられたメッセージは、レジャックさん自身が託したものであり、その言葉には深い意味があると感じたのであった。
◇ ◇ ◇
その後、ループは再び起こることもなく、『未来の分岐点』である拓弥さんと私が別れる未来が訪れることもなかった。
私と拓弥さんは、更に良好な関係を築き、恵美さんともあの件以来、親友と呼ぶにふさわしいほどの親密な関係を築くまでに至っていた。
「真由!何してるの?グズグズしないでよ。拓弥君!真由なんてやめて私と付き合ったら?」
「こら!恵美!誰を口説いてるの?」
「あはは!冗談よ。」
「あはは。真由も恵美も本当に仲良くなったよな。まさか友達になるなんて思わなかったよ。」
「確かにね。さあ、三人で記念に撮ろうよ!」
《パシャ。》
スマホの画面に収められた三人の写真をみながら、私は改めて正しい未来へと向かっていることを実感している。
私たちは、今日大学を卒業した。
あれから私は、ループから解き放たれ、拓弥さんと別れなかった場合の未来の道を歩み始めている。
この道は、以前私が経験した未来とは異なる未来なのである。
そして、これまでの記憶は維持されたようだが、あの方から与えられた能力は、いつの間にか使えなくなっていた。
私たちが進む未来には、どんなことが待ち受けているのかはわからない。
でも、私は知っている。
私は拓弥さんと歩み、真弥と弘人と四人で幸せに過ごす未来を…。
ただし、それ以外のことは全くわからない。だからこそ、私は一生懸命に今を生きるのだ。
悔いの残らない未来を歩むために。
私たちの未来は、幸せで平和に満ち溢れていることを願って...。
―――― END ――――
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