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第一章 恋愛編
第33話 クリスマスイブ(後編)
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私たちはクリスマスイブの夜、新田さんのお誘いで天ぷらの名店で贅沢なご馳走を堪能した後、夜景の美しいスポットである夕涼みの丘公園に足を運んでいた。
背景に広がる美しい夜景に誘われ、私は新田さんに促されて、大学時代に拓弥君とお付き合いしていたことや、彼に抱く想いについて語ることにした。
「そうだったんだね。俺も真由ちゃんの心境の変化には気づいていたんだ。でも、真由ちゃんからの愛情を佐野君から勝ち取ることが出来なかった…。」
「俺は、真由ちゃんを幸せにしたかった。真由ちゃんの笑顔を守りたかったんだ。でも、俺では役不足だと気づいてしまったんだよ。だから…俺は、俺の愛する真由ちゃんの笑顔を守る為に、後のことを彼に任せることにしたんだ。」
「おーい!」
「えっ!?新田さん、どういうことですか?」
暗がりから姿を現したのは、拓弥君だったのだ…。
「やあ。真由。」
「拓弥君!?どうして?」
「新田さんにお願いされてね。ここで二人が来るのを待っていたんだ。」
「意味がわからないわ。何故こんなこと…。」
「ごめんね、真由ちゃん。俺が佐野君に頼んで来て貰ったんだよ。実は、俺からも話があるからどうか聞いて欲しい。」
「俺は、真由ちゃんと付き合い始めてから、いや、初めて会った時から、真由ちゃんのことをずっと見て来たんだ。真由ちゃんは、俺のおかしな話にもいつも笑顔で応えてくれたよね。俺は、その笑顔に何度癒され、助けられたことだろう。でも、その笑顔の奥には、心から笑えないような何かがあるように見えていたんだ。」
「真由ちゃんは、俺が結構について話した時も困ったような顔をしていたよね。後々考えると、真由ちゃんはあの時、心の何処かで佐野君を待っていたかったのかも知れないと気づいたんだ。」
「えっ、そんな…。」
新田さんの言葉でこれまでのことを思い返す。
新田さんの指摘は的を得ていると感じながらも、同時に私が思いもよらず彼を傷つけてしまったのではないかという思いに駆られ、胸が痛んだ。
「そして、先日のバーベキューでは、二人きりになった真由ちゃんと佐野君の様子を見たんだ。二人は、とても自然な雰囲気で笑顔で話していた。俺はあの時、心の底から笑う真由ちゃんの笑顔を初めて見たよ。俺には真由ちゃんをあんな笑顔にはしてやれないなと思ったよ。悔しいけど、真由ちゃんを幸せにできるのは、俺よりも佐野君だと悟ったんだ。」
「新田さん……」
私は新田さんの言葉に涙がこみ上げてきた。
拓弥君への気持ちを新田さんに話していなかったはずなのに、新田さんは私の心情を見抜いていたのだ。
そして、自分のことよりも私の幸せを優先して、自らが身を引くことを告げてきたのである。
「ごめんなさい…。」
私は、涙が零れ落ちるのを気にも留めず、ただ謝罪の言葉を口にした。
しかし、その先の言葉は詰まってしまい、心からの感謝と申し訳なさを新田さんに伝えきれずにいた。
新田さんが私にとって如何に大切な存在であり、そして彼が自分の幸せを犠牲にしてでも私を手放そうとするその姿勢に、私は深い感動を覚えた。
気づけば新田さんも涙を浮かべていた。
私が彼と知り合ってから初めて見た涙であった…。
「大丈夫!俺はこれから、真由ちゃんと佐野君の友人として陰ながら二人を見守ろうと思う。困ったことがあれば手助けするから…。」
「新田さん。本当にごめんなさい。でも、ありがとうございます。」
「いいんだ。さあ、佐野君がお待ちかねだ。行ってやって!」
「はい!」
新田さんは私の背中を押して、彼の元に誘導してくれた。
そして、少し離れた位置から私達を様子を見守っていてくれた。
私は拓弥君と向かい合った。
「真由。突然来てしまってごめんね。」
「ううん。会えて嬉しいよ。」
「俺もだよ。大学時代に二人で話した未来の約束。まだ覚えてる?」
「もちろん。二人で何度も話していたわね。」
「真由と想い描いた未来は、俺が誤解したせいで壊れてしまった…。でも、真実がわかった今、真由さえ良ければ、その約束を三年ぶりに実現しようと思っているんだ。」
「本当に?嬉しいけど、拓弥君には恵美さんがいるんじゃ…。」
「恵美には、佐々木先生からの話も伝えて、佐々木恵美と宮原恵美が同一人物であることも本人から確認が取れたよ。そして、俺はこれ以上交際を続けるつもりはないと伝えたんだ。」
「そうなんだ。じゃあ…」
「私は認めないわよ!」
私と拓弥君は、突然会話に割って入った声に驚いた。
「えっ!?」「わっ!お前は…。」
その声のする方に目を向けると、姿を現したのは恵美さんだったのであった…。
背景に広がる美しい夜景に誘われ、私は新田さんに促されて、大学時代に拓弥君とお付き合いしていたことや、彼に抱く想いについて語ることにした。
「そうだったんだね。俺も真由ちゃんの心境の変化には気づいていたんだ。でも、真由ちゃんからの愛情を佐野君から勝ち取ることが出来なかった…。」
「俺は、真由ちゃんを幸せにしたかった。真由ちゃんの笑顔を守りたかったんだ。でも、俺では役不足だと気づいてしまったんだよ。だから…俺は、俺の愛する真由ちゃんの笑顔を守る為に、後のことを彼に任せることにしたんだ。」
「おーい!」
「えっ!?新田さん、どういうことですか?」
暗がりから姿を現したのは、拓弥君だったのだ…。
「やあ。真由。」
「拓弥君!?どうして?」
「新田さんにお願いされてね。ここで二人が来るのを待っていたんだ。」
「意味がわからないわ。何故こんなこと…。」
「ごめんね、真由ちゃん。俺が佐野君に頼んで来て貰ったんだよ。実は、俺からも話があるからどうか聞いて欲しい。」
「俺は、真由ちゃんと付き合い始めてから、いや、初めて会った時から、真由ちゃんのことをずっと見て来たんだ。真由ちゃんは、俺のおかしな話にもいつも笑顔で応えてくれたよね。俺は、その笑顔に何度癒され、助けられたことだろう。でも、その笑顔の奥には、心から笑えないような何かがあるように見えていたんだ。」
「真由ちゃんは、俺が結構について話した時も困ったような顔をしていたよね。後々考えると、真由ちゃんはあの時、心の何処かで佐野君を待っていたかったのかも知れないと気づいたんだ。」
「えっ、そんな…。」
新田さんの言葉でこれまでのことを思い返す。
新田さんの指摘は的を得ていると感じながらも、同時に私が思いもよらず彼を傷つけてしまったのではないかという思いに駆られ、胸が痛んだ。
「そして、先日のバーベキューでは、二人きりになった真由ちゃんと佐野君の様子を見たんだ。二人は、とても自然な雰囲気で笑顔で話していた。俺はあの時、心の底から笑う真由ちゃんの笑顔を初めて見たよ。俺には真由ちゃんをあんな笑顔にはしてやれないなと思ったよ。悔しいけど、真由ちゃんを幸せにできるのは、俺よりも佐野君だと悟ったんだ。」
「新田さん……」
私は新田さんの言葉に涙がこみ上げてきた。
拓弥君への気持ちを新田さんに話していなかったはずなのに、新田さんは私の心情を見抜いていたのだ。
そして、自分のことよりも私の幸せを優先して、自らが身を引くことを告げてきたのである。
「ごめんなさい…。」
私は、涙が零れ落ちるのを気にも留めず、ただ謝罪の言葉を口にした。
しかし、その先の言葉は詰まってしまい、心からの感謝と申し訳なさを新田さんに伝えきれずにいた。
新田さんが私にとって如何に大切な存在であり、そして彼が自分の幸せを犠牲にしてでも私を手放そうとするその姿勢に、私は深い感動を覚えた。
気づけば新田さんも涙を浮かべていた。
私が彼と知り合ってから初めて見た涙であった…。
「大丈夫!俺はこれから、真由ちゃんと佐野君の友人として陰ながら二人を見守ろうと思う。困ったことがあれば手助けするから…。」
「新田さん。本当にごめんなさい。でも、ありがとうございます。」
「いいんだ。さあ、佐野君がお待ちかねだ。行ってやって!」
「はい!」
新田さんは私の背中を押して、彼の元に誘導してくれた。
そして、少し離れた位置から私達を様子を見守っていてくれた。
私は拓弥君と向かい合った。
「真由。突然来てしまってごめんね。」
「ううん。会えて嬉しいよ。」
「俺もだよ。大学時代に二人で話した未来の約束。まだ覚えてる?」
「もちろん。二人で何度も話していたわね。」
「真由と想い描いた未来は、俺が誤解したせいで壊れてしまった…。でも、真実がわかった今、真由さえ良ければ、その約束を三年ぶりに実現しようと思っているんだ。」
「本当に?嬉しいけど、拓弥君には恵美さんがいるんじゃ…。」
「恵美には、佐々木先生からの話も伝えて、佐々木恵美と宮原恵美が同一人物であることも本人から確認が取れたよ。そして、俺はこれ以上交際を続けるつもりはないと伝えたんだ。」
「そうなんだ。じゃあ…」
「私は認めないわよ!」
私と拓弥君は、突然会話に割って入った声に驚いた。
「えっ!?」「わっ!お前は…。」
その声のする方に目を向けると、姿を現したのは恵美さんだったのであった…。
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