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第6章 地下ドワーフ編

第139話 王たちの対談

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 私はドワルコ王と共に『異次元空間移動』の仕掛けにかかったドワルコ兵たちのもとへ転移した。

 私が仕組んだこの罠で彼らはドワーフ軍と寸前まで迫った戦闘から自国側の坑道入口へと強制送還されたはずだ。

 ドワルコ王は一瞬で場所が変わったことに驚愕した顔をしたが、目の前に大勢のドワルコ兵がいることに気づくと背筋を伸ばし、王らしく振る舞った。

 兵たちも王が現れたことに驚いたが、すぐさま隊列を整えて王に敬礼した。

「皆の者、聞け!我らを率いていたマルク軍務大臣は魔剣の呪いに支配され、魔人化し魔族となった。今回のドワーフ王国への侵攻はあやつが企んだものだ。だが魔族となったマルクは彼らに倒され我も救出された。戦争は終わったのだ!」

「うぉー!!」

 王の宣言に兵たちから歓喜の声が上がった。どうやら兵たちも侵攻作戦に不本意だったようだ。

 その後我々はドワルコ王とその護衛騎士団と共にドワーフ王国へ向かった。

 私はドワーフ王と会談できるよう仲介役として尽力したのである。

 ドワーフ王も事情を理解してくれて快く会談に応じてくれた。

 二千年も別れていた同じ民族の代表者が再び肩を並べることになった。

◇ ドワーフ王国 王宮 ◇

「よく来られました、ドワルコ王よ!」

「この度は我が国の問題でドワーフ王国に大変なご迷惑をおかけした。心よりお詫び申す。」

 二人の王は挨拶を交わし握手をした。そして会談が始まった。

 ドワルコ王は今回の一件について真相を語り謝罪した。

「なるほど、こちらが得た情報と大差ないようだ。わかった。ドワルコ王からの謝罪を受け入れよう。」

「感謝する。ドワーフ軍と衝突することなく魔人化した大臣を倒し、我を救出してくれたサカモト殿と仲間たちには感謝の言葉も足りぬ。ドワーフ王が彼らを送り込んでくれたのだろう?」

「ん?まあ、そういうことになるが、我は少し手助けしたに過ぎない。彼らは、鎖国していた我が国に突然現れた者たちだ。本当に不思議な連中だ。だが、サカモトたちが現れなければ、今頃我が国は戦火に巻き込まれていただろう。」

「ああ、そうだな。彼らはドワルコの英雄だ。」

「ドワーフの英雄でもあるぞ!」

「ワハハ!そうだな!」
「間違いない!ワハハ!」

 我々は少し離れた場所から会談の様子を見ていたが、どうやら『エチゴヤ旅団』の話題になっているようだった。

 チラチラと二人の王がこちらを見て笑っている。

 私たち『エチゴヤ』が王たちの話題の種にされていることは恥ずかしかったが、両者が良好な関係を築けそうで安心した。

 この会談で双方の国は互いに独立した国家であることを認め、友好的な交流を始めることになった。

 私たちは二国の間に友好的な関係を築く橋渡しになれたと思い誇りに思った。



 我々エチゴヤ旅団は、今回の騒動で解決した英雄として両国から称賛された。

 ドワーフ王国では戦争を防いだ功績として褒美をもらった。

 多額の金とドワーフ王国への入国永久許可書だ。

 これで入国に困ることはなくなった。

 私たちは本来の目的である『コスモニウム』について王に尋ねたが、残念ながらドワーフ王国には存在しないということだった。

 我々はドワルコ王からも招待されていたのでドワーフ王に礼を言ってからドワルコ帝国へ向かった。

◇ ドワルコ帝国 王宮 ◇

「サカモト殿と仲間たちよ、よく来てくれた!今回の働きについてもう一度礼を言おう。本当にありがとう。何か欲しいものはないか?」

「ありがとうございます。ですが、ドワーフの王様から多大な褒美を頂きましたので充分でございます。」

「我が国の英雄を冷遇したとなれば、王家の名誉にかかわる。何でもよい。遠慮せず言ってくれ!」

「では…。我々はいづれ現れる魔王に備えるため、神託により聖剣の素材を求めて旅しています。この山脈のどこかには『コスモニウム』が眠っているとの情報を手に入れ、ドワーフ王国に足を踏み入れました。残念ながらドワーフ王国にコスモニウムはありませんでしたので…。」

「コスモニウムを所望するか…。確かに伝説としてその名は知っているが、わが国でも見つかった前例はないな。そなたらがまさか聖剣とはな。驚いた。いや、待てよ…。もしかしたら宝物庫に行けば…。」

「何か情報をお持ちなのですか?」

「いや、確信は持てないが、子供の頃、宝物庫の本の中にコスモニウムに関するものがあったような気がするのだ。」

「本当ですか!可能なら見せて頂いても?」

「ああ、構わない。ただし、私も同行させてもらうぞ。」

「もちろんです。宜しくお願いいたします。」

◇ 宝物庫 ◇

 宝物庫ということもあり、私はドワルコ王と二人だけで宝物庫内へ入った。

 扉は特殊な結界が施されており、専用の鍵を使って入室することになった。

 内部は二十畳程度の広さがあり、様々な価値ある品が所狭しと置かれていた。

 高価な武器や防具、骨董品に魔道具。魔法書や芸術品など多岐に渡る。

 私は、このお宝の数々に目を輝かせるものの、目的の書物を探すことにした。

 私には『探索スキル』があるので、もの探しはお手の物である。

「陛下!見つけました。」

 私は、一冊の書物を手に取り王に手渡した。

「おお!そうだ。この書物だ。覚えているぞ。」

 手渡した書物の表紙は、紙というよりも木に近い分厚く頑丈な作りになっていた。

 濃紺色のその書物は、まるで作られたばかりのような外観を保っており、高価な代物であるのは明らかだ。

 私は片眼鏡を装着して書物を注意深く眺めた。

名前 ドワルコ王の記書
種類 国宝級書物
価値 ☆☆☆☆
相場価格 error
効果 劣化防止
説明 初代ドワルコ王が書き記した日記や、伝えられた言葉を元に二代目ドワルコ王が、伝書師と魔道具師の力を借りて作り上げた。初代ドワルコ王の生涯の様子や、経験して得た情報や知識などが綴られている。

 ドワルコ王は、記書を手に取り内容を素早く確認していた。

「ふむ。やはり以前読んだことのある書物だ。ほれ、お主に貸しだそう。」

「ありがとうございます。」

 私は、記書を王から受け取った。

 私は書物を開くと以前と同じようにスラスラと内容を読み進められた。

『思考加速』の能力も手助けしてか、読み始めて2分程度で読み切れてしまったのである。

「のう、サカモト殿。そなたはペラペラめくっていただけのように見えたがちゃんと読めたのか?」

「ああ、そうですよね。私は書物を素早く読むのが得意なのです。もちろん内容はきちんと頭に入っています。」

「むう。恐るべき能力だな。それで、そなたが欲する『コスモニウム』の在り処はわかったのか?」

「えぇ。地底窟を深く進んだ先に地底湖があるそうです。その地底湖の底に存在しているとの情報が書かれていました。」

「ああ、そう言えばそんなことが書かれていた気がするな。見事だ。サカモト殿。しかし、地底窟は強い魔物がいるらしく、入口はずっと塞がれたままになっている。立ち入りは許可するが、身の安全は保証できぬぞ!」

「ええ、もちろんでございます。立ち入りの許可がいただけるだけで充分です。陛下のご慈悲に感謝致します。」

 記書を読み終えた私は、書物を王に返却した。

 私は、コスモニウムの在り処だけでなく、思いもよらない情報を手に入れてご機嫌であった。

 更に王からの褒美ということで、宝物庫から面白いアイテムを頂き、宝物庫を後にした。

 王からは、褒美の品とコスモニウム探索で通行の必要がある地底窟への立ち入り許可を頂いた。

 その後、王宮に宿泊するように促されたが、街を散策したいと言って丁重にお断りし、王や家臣の者たちにお礼を述べて王宮を後にした。

 四貴族のうち、魔人化したマルクは討伐されて命を落とした。

 しかし、残りの三人はマルクにそそのかされたことや、深く反省している様子が見えたので、罰金と降爵こうしゃくの処分で済んだらしい。

 我々はドワルコ帝国から滞在許可を得て、街中を歩きながら宿屋を探した。

 ドワーフ王国と同じく、この国にも他種族はいない。

 したがって、我々はどこに行っても注目されたが、ドワルコでの功績が知れ渡っていたおかげで、多くの人から感謝や賞賛の言葉をかけられた。

 物作りに秀でた種族だけあって、街には工場や倉庫があちこちに建っていた。

 人々の働く姿からは活気が溢れていた。

 食事処ではドワルコ名物の肉料理を堪能し、国を救ってくれたお礼として代金はいらないと言われた。

 この国には旅人向けの宿屋がなかった。

 困っていると、食事処の店主が空き部屋を貸してくれると申し出てくれた。ありがたく受け入れることにした。

◇ 食事処の二階 客室 ◇

 三部屋を分け与えられたので、各々休むことになった。

 私の部屋にはリヨンさんとミミが同室していた。

 私は、ベッドに寝転がり、二人から漏れ出す小さな寝息を聞きながら考え事をしていた。

〘マスター、記書のことですか?〙

(そうだよ。コスモニウムの情報だけじゃなくて、ボーゲンのダンジョンについても書いてあったよね。)

〘どうされますか?記書によると、ボーゲンのダンジョンは別大陸にあるようですね。〙

(うん。コスモニウムのことが片付いたら、そっちに行ってみるつもりだ。)

〘了解しました。〙

 ドワルコで見つけた書物に書かれていたボーゲンのダンジョンのことが頭から離れなかった。

 何があるかは分からなかったけど、自分が探しているものに関係がある気がしてならなかった…。

 彼女たちの寝顔を見て微笑んだ後、明日への備えとして私も眠りについた…。

― to be continued ―
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