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第6章 地下ドワーフ編

第138話 ドワルコ帝国(軍務大臣4)

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「何だと!?その場で魔槌を創り出したというのか?そんな馬鹿げたことが可能だというのか。」

 マルク・イーロムは、私があっという間に魔槌を創り出したことに驚愕の声を挙げた。

《ガン!ドン!》

 魔槌対魔槌の激しい打ち合いが続いている。魔人化によって身体能力が飛躍的に向上したマルクだが、若干劣勢に立たされているようだった。

「なぜだ!なぜワシが押されるのだ!?」

 マルクは、メサの猛攻に防御一方になっていた。

 私もこの展開になるとは予想しておらず、非常に驚いていた。しかし、冷静に考えれば納得できる展開であった。

 マルクは魔人化したとはいえ、その能力は未完成であり、下級魔族にすら及ばないレベルであろう。

 それに対して私が創り出した『ポボロアーヌの魔槌』は、マルクの持つ『ドーマの鍫槌』よりもはるかに優れた性能を持っているからである。

 『ドーマの鍫槌』は、身体能力を15%程度上昇させるだけの効果である。

 それに比べて私の創った『ポボロアーヌの魔槌』は、身体能力を40%程度上昇させる効果があるのだ。

 さらにメサのユニークスキル『打撃王』の効果も加わることでメサが優勢になるのは当然であろう。

 しかし、能力差は決定的ではないため、メサが圧倒するわけでもなく、戦況は膠着状態に陥っていた。

「メサ!魔槌を長時間装備することは危険です。早く決着をつけてください。残念ですがマルクは、もう人間ではありません。魔族です。倒すしかありませんよ。」

「了解だぜぇ。俺っちが片付けてやるぜぇ。」

 メサは、再度強化剤を口に含んで一気に飲み干した。

「行くぜぇー!ファイトだぜぇ!」

「くっ、またあの薬か…。厄介だな。ならば!」

〘マスター!〙

「了解!魔法術式破壊!」

《パリン!》

 マルクは、メサの『強化剤』使用に危険を感じて、魔法で反撃しようと画策したが、私が『魔法術式破壊』によって魔法を無効化させたのである。

「またか!この野郎!」

「『黒帝四連』だぜぇ!」

 直後メサは、魔槌の武器スキル『黒帝四連』を発動した。

 槌に真っ黒なオーラが表れると、強烈な連続打撃がマルクを襲った。

 一撃二撃と魔槌で攻撃を受け止めるが圧倒する力に耐え切れずに魔槌を弾き飛ばされてしまう。

 マルクが無防備となったところを頭上から三撃四撃とヒットして、空き缶のように潰されてしまった。

 残された魔槌と、マルクの消滅した後にドロップした素材が魔人であったことを証明していた。

 また、真紅に輝く『魔法の鍵』も一緒に残されていた。

 どうやら任務は無事に終わったようだ。

「メサ!やりましたね!」

「おう!どうだ?社長!俺っちもつぇぇだろう?」

「ええ。こんなに強いと思いませんでしたよ。」

「ガハハ!そうだろう。」

 メサは、身体中汗だくになりながらも、戦い抜いて勝利した。彼はとても爽やかな笑みを浮かべていた。

 私は、ドワルコ軍の大将を倒してしまったことで、後々トラブルになるのではないかと心配していた。

 しかし、安全の為に避難させた何人かのドワルコ兵が目を覚ましてマルクが魔人化してメサと戦っている様子を目撃しており、事の真相を証言してくれることになった。

 その後、今の状況をドワーフ軍の兵士に伝え、私の代わりに王に報告して貰うために、伝令をお願いした。

 私とメサは、近くにいるドワルコ兵を連れて『転移』によってドワルコ帝国に戻ったのである。
 

◇ ドワルコ収容所 ◇
 

「レイ様!」「ご主人様!」「主様!」

 私は、転移でドワルコ王が幽閉されている収容所へやってきた。そこには任務を果たしたと思われる仲間たちの姿があった。

「皆さん!ご無事でしたか。」

 私は、仲間たちの姿を見てホッとする。私とメサだけでなく、他のみんなも『魔法の鍵』の取得に成功したようだ。

 ココアは緑色の鍵、リヨンさんは青色の鍵、ミミは黄色の鍵、そしてメサと私は赤色の鍵を手にしていた。

 そして、その傍らには今回の侵攻を主謀したと思われる四貴族の面々が捕縛されていた。

 王が幽閉される独房には、特殊な造りをした四色の錠前が施されており、対応する鍵を差し込まないと解錠されない仕組みのようである。

「どうじゃ!凄いじゃろう?この結界や封印錠はワシが造ったのじゃ。錠前と同じ鍵を差し込むのじゃ。」

 自慢げに声を上げたのは、四貴族の一人で魔法大臣のミナ・エスパスである。

 彼女は、ミミが連行してここまで連れてきた。縄で捕縛されていることもあるが、既に反省の色が見られており、抵抗する意思はなさそうである。

 早速ミミが黄色の錠前に黄色の鍵を差し込もうとしている。その時だった。

「待て!差し込む順番がある。適当な順番に差し込めば、傷を負うことになるぞ!正しくは、緑、黄、青、赤の順じゃ。間違えるな!」

 ミナから悪意は感じないし、『悪い予感』スキルにも反応は見られないため、彼女の言う通りの順番で次々と解錠していった。

《カチャン!》

 魔法の錠前が無事に解錠された。それと同時に独房を覆う結界も瞬時に消失したのだった。

「おお、我は助かったのか?」

「はい。実は…。」

 私は、これまでの経緯を王に説明した。四貴族が扇動して軍をドワーフ王国へ侵攻させたこと。

 その中でも軍務大臣のマルク・イーロムは、魔剣の部類に入る魔槌を手にし、魔族の呪いにより魔人化が始まり、悪行に手を染めることになったことを伝えた。

「ドーマの鍫槌だと?あれは国宝だった筈だ。マルクめ、宝物庫から魔剣を盗み出していたか。あやつには重大な罰を与えばならぬな。して、マルクは何処におる?」

「マルク大臣は、魔人化により魔族になってしまったために討伐いたしました。残念ながら魔人化が始まると治す手立てはありませんので…。」

「そうだったか、そなたたちにはとても迷惑を掛けたな。マルクも身をもって罪を償った訳か…。」

「申し訳ありません。」

「いや、そなたたちが気に病むことではない。寧ろ、我が国を救った英雄じゃ。何か褒美をやらないとな。」

「王様、まずはドワルコ兵に戦争が終わったことを知らせる必要があります。それからドワーフ王国にも…。」

「わかった。そなたの言う通りにしよう。」

 私たちは、戦争終結のためにドワルコ王を連れてドワルコ軍の残兵や、ドワーフ王の元に行くことにしたのであった…。

― to be continued ―
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