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第6章 地下ドワーフ編

第123話 王との再会(メサ視点)

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◇◇◇◇ メサ視点 ◇◇◇◇

 俺は、エチゴヤの社長であるサカモト・レイ様の要望で、祖国ドワーフ王国へ帰郷することとなった。

 彼は、非常に重要な目的のために行動している。

 将来、この世界に恐るべき存在である『魔王』が誕生するとされており、その時のために『聖剣』を準備すると語っている。

 聖剣は、我々ドワーフ族の間では伝説上の存在で、実現が難しいとされている。

 しかしながら、その刀身には伝説の合金『コスモガイア』が用いられることは、子供でも知っていることだ。

 社長からその話を聞いた時、正直驚いた。

 伝説の金属を手に入れようと本気で考えているということに驚いたからだ。

 かつても『コスモガイア』を扱った者はいないだろうし、架空のものと言われても不思議ではない。

 しかし、俺の主人は非凡な人物で、非現実的なアイデアを次々と実現させている。

 初めて『コスモガイア』の話を聞いた時は、ばかげていると思ったが、今ではその実現性を信じている。

 俺は彼を支えたいという思いと、伝説の合金を自分自身で触ってみたいという熱い願望を抱いていた。

 社長は、『コスモガイア』入手のためにドワーフ王国を目指しているが、あの国は他種族の入国を厳しく制限している。

 他種族が王国に入国する唯一の方法は、『王の許可を得る』ことである。

 現国王は智王として知られる優れた君主であるが、その歴史上、他種族が入国を許された例はない。

 俺が試みていることは、極めて困難な挑戦だった...。

◇ 王宮 玉座の間 ◇

「メサ・アレバリよ。久しぶりだな。」

「はッ!お久しぶりでございます。」

「ワハハッ!何だその話し方は?そなたらしくないぞ。気持ち悪いから普通に話せ!」

「わかったぜぇ。王様の言う通りにするぜぇ。」

 俺は、守備隊長の協力を得て、ドワーフ王の前に立つ機会を得た。

 侯爵位の貴族の家に生まれたため、幼少の頃からドワーフ王と何度か会話したことがある。

 王は、200歳を超えてもその逞しさは変わらずで、王の貫禄をひしひしと感じる。

「おい、弟よ。それは流石に無礼だぞ!言葉遣いに気をつけよ!」

 父から侯爵位を受け継いだ兄、ムサ・アレバリが、俺の話し方に文句をつけてきた。

 長男のマサと次男のミサは家督の相続を辞退し、人間の街に移住したため、アレバリ家の当主となったのは三男のムサだ。

 彼は兄弟の中で最も真面目で賢く、王国宰相も務めている有能な人物だ。

「宰相、そなたの弟であろう。我が許したのだ。気にするな。」

「恐れ入ります。」

「うむ。では、メサ。そなたの頼みごととやらを聞こうではないか。言ってみろ。」

「王様、俺の仲間たちの入国を許可して欲しいんだぜぇ。」

「ふむ…仲間たちは、他種族の者たちのことだろうな。それならば、答えはノーだ!」

「やっぱりそうなるかぁ。でも、仲間たちはそのうちに出現する『魔王』という存在に立ち向かうための武器を作ろうとしているんだぜぇ。」

「ばかなことを言うな!『魔王』など1000年以上も前に滅びたはずだ。万が一復活したとしても、そのような情報は私の耳には入っていないぞ!」

 王は『魔王』の話に少々イライラを募らせた様子であった。

 それでも俺は引き下がる訳にはいかないのだ。
 
「それは、この国が鎖国しているから知らないだけなんだぜぇ。俺たちが住むローランネシアの国王は、神からの神託を受けて、近隣諸国に警戒と協力を呼びかけていたそうなんだぜぇ。」

「何だと!?そんなことが…。宰相、そなたは知っているか?」

「恐れながら申し上げます。確かにローランネシアの王からの手紙でしたら、我が国にも届いておりました。私が陛下に手渡しましたが、『人間の手紙など読む価値はない』と仰って、読む前に手紙を切り裂いて捨てられました。」

「ああ、そうだったな。すっかり忘れておったわ。」

(王様が悪かったのかよ…。)

「わかった。魔王の件はその脅威が本当にあるのか、我が国でも調査をすることにしよう。しかし、そなたが言っていた、仲間たちが対抗する武器とは何だ?」

「それは、『聖剣』なんだぜぇ。」

 王の前で『聖剣』という言葉を口にすると、場内がざわめき始めた。

「ガハハ!メサよ。そなたは愚かなことを言っているぞ!聖剣など、現実的には作れる者は存在しない。我々ドワーフ族ですら、そのような技術は持ち合わせていないのだ。それでも、そなたは聖剣を作ろうと言っているのか?」

「そうだぜぇ。エチゴヤの社長は、すでに聖剣の素材の一部を手に入れたのだぜぇ。」

「何だと!?ふむ…。だが、それでも…。」

 王は、髭をさすりながら考え込んでいる。

「では、メサよ。そなたの主である社長とらやが、有能な存在であることを証明してみせよ!私を納得させることができれば、我はその仲間たちと謁見しようではないか。」

「うほーい!わかったぜぇ。社長が作った『ポーション』と『ビールサーバー』を持ってきたんだぜぇ。これを見たら王様もおったまげるぜぇ。」

「それは楽しみだ。いいだろう、見せてみろ。おい、鑑定具を持ってこい!」

「承知しました。」

 王が指示すると、宰相である兄のムサが鑑定具を持ってきて王に手渡した。

 王はその鑑定具を手に取り、慣れた手つきで起動させた。

「何だ、これは!本当にポーションか!?驚く程に『高品質』ではないか!こんなに質の高いポーションをこれまで見たことがないぞ!」

「王様!すごいだろ?それに、これは社長が作った『ビールサーバー』だぜぇ。メチャメチャうめぇ酒が飲めるんだぜぇ。」

 俺は、ジョッキにビールを注いで、王様に手渡した。

「これがビールか!奇妙だが、悪くない。では、試してみようぞ。」

「陛下、お待ちください。この奇妙な飲み物、万が一のことがあればいけません。まずは、私が毒味をいたします。」

 兄、ムサが慌てた様子で、王様に毒味を務めることを申し出ていた。

 それは彼らしい真面目な判断だと思った。

《ゴクゴク…。》

「プハァー!何だこれは!?凄く冷たくて、しかもめちゃくちゃおいしいぜぇ!」

 真面目な兄でさえ、その美味しさに興奮して素が出てしまっている。

「おい、宰相!私にもくれ!」

 王も兄の様子を見て、欲求を抑えられなくなったようだった。

 俺は別のジョッキにビールを注ぎ、王に手渡した。

《ゴクゴク…。》

「プハァー!これは本当においしいぞ!信じられん…。ここまで美味しい酒は初めてだ!」

「うほーい!うまくいったぜぇ!それなら、王様、許可してくれるか?」

「そうだな。約束だ!まだ入国許可はできぬが、まずはそなたの仲間と会ってみてから考えよう。」

「うほーい!」

 俺は、社長のアドバイス通りに持参したアイテムが王様の心をつかんだことに胸をなでおろした。

 そして、再び地下入口に戻り、仲間たちと再会したのであった…。

― to be continued ―
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