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第5章 バロー公国編

第120話 ビールの試飲会

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 私たちエチゴヤ旅団は、バロー公国での問題の解決に大きく貢献した。

 更には目的の『聖なる種火』の入手も果たし、再びローランネシア王国へ帰って来たのであった。

 我々は、帰りに要塞都市ガドゥーの領主様にバローの件を報告しており、ガドゥー様経由で既に国王陛下の耳にも届いていた。

 ローランネシア王国は、バロー公国に対し、友好的な関係を望んでいる。

 国王陛下は、今後の友好的な関係向上や、貿易に関してのこと、今回の被害におけるお見舞いと、支援などのことが書かれた親書を用意した。

 そして、親書を持った兵は、既にバローに向けて出発している。

 後発隊として、支援物資の輸送や、兵や職人などで編成される復興支援部隊が出発の予定である。

 エチゴヤ旅団は、外交や復興支援とは無縁な立場である為、数日間は、休暇で王都に滞在するつもりでいる。

◇ ミリモル邸 ◇

 私は、ミルモル邸の自室に篭って、しばらくはグダグダの、のんびり生活を過ごすつもりでいた。

 しかし、そんなささやかな望みも虚しく消え失せることになった。

「代表!代表はいますか?あのー異世界ラーメンの食材の件で相談したいのですが…。」
「会長はいますか?カップラーメン工事の人員をもっと増やして欲しいのですが…。」
「おーい!兄ちゃんはいるかよ?カップラーメン工場は、増設したんだがよ。製造機械がまだまだ足りねぇのよ。造るのはいいけどよ、材料がな…。」
「レイ様、塩の注文や、廉価版強化剤の発注が増えています。そろそろご用意頂きませんと…。」

 ミルモル邸には、エチゴヤ関係者が詰めかけていた。

「はい、はい。わかりましたよ。皆さん、きちんと対応させて頂きますよ。」

 残念ながらグダグダは、お預けになりそうであった…。

 私が、エチゴヤ関連の仕事をやり終えたのは、日が東の空に沈む頃であった。

「リヨンさん。今日は働きずめでしたので、気晴らしに外食でもどうですか?」

「レイ様、お仕事お疲れ様でした。はい。喜んでお供します。」

 私は、気分転換とバローでの慰労を兼ねて、リヨンさんを誘って外食に出かけることにした。

「リヨンさん、どこか行ってみたいお店か、おすすめなお店はありませんか?」

「そうですね…。では、ニユレはいかがでしょうか?お肉もお野菜も新鮮で美味しいと評判のようですよ。」

「いいですね。ニユレに行ってみましょうか。」

◇ お食事処 ニユレ ◇

 お食事処ニユレは、肉や野菜料理を得意とする、まだオープンして間も無い店舗であった。

 うちの異世界ラーメンも盛況ではあるが、この店もなかなかの盛況ぶりである。

 リヨンさんは、今まで自分の要求を表に出すことが無かったので、リヨンさんが行きたい場所を本人の口から聞けたことは、私にとっては大きな変化である。

 以前よりは、リヨンさんからの距離感が近づいている感じがして、とても嬉しく思う。

 料理は、マルポーやモーギュウの肉を使った食べ応えのある物や、さっぱりと新鮮な野菜料理など、どれも大変美味しかった。

「リヨンさん。初めて来たお店ですが、とても美味しいです。教えてくれてありがとうございます。」

「はい!思い切ってレイ様に提案して良かったです。」

「美味しい料理を食べていると、少しお酒も欲しくなってしまいますね。」

「はい。そうですね。レイ様、こちらのお店では、マルクの果実酒がおすすめの様ですよ。」

「では、それを頂きましょうか。」

 私は、マルクの果実酒を注文する。この世界には、ビールは存在しておらず、果実酒が主流である。

 様々な果実を原料にお酒を作っており、果実酒と言っても色々なお酒があるのである。

 運ばれて来たマルクの果実酒は、果実本来の甘みや酸味が丁度よく合わさっており、大変美味しいお酒であった。

「レイ様。そう言えば、最近お作りになっている『びいる』なるお酒はどうなったのですか?」

「良くぞ聞いてくれました!ビールは、昨日完成しました。まだ試飲しただけですけどね。私のイメージした通りの美味しいお酒になったと思います。明日にでも試飲会をやりましょうか?一緒に飲みましょうね。」

 二人の夜は、その後も続いていった…。

◇ 翌日 ◇

 翌日、街下商店街にあるエチゴヤの銭湯宿泊棟の一室を使い、ビールの試飲会を開催した。

 時間は、エチゴヤの業務が終わる夕方頃からスタートし、ミリモル邸関係者、エチゴヤ関係者、街下商店街の建築関係者、設立に協力してくれた商業ギルドの方々。総勢約200名を招待していた。

 これは、試飲会だけでなく、日頃の協力への感謝だったり、街下商店街設立に関する協力への感謝だったり、そういう会にしたかったのである。

 今回の費用は、エチゴヤからでなく、全て自分の懐より賄っている。

 場所についても、宿泊棟の最上階を広めのホールにしてあるので、大人数でも充分の広さは確保されている。

 お誘いした方々が全員揃ったようなので、挨拶をすることにした。

「皆さん、お集まり頂き誠にありがとうございます。そして、日頃より、私やエチゴヤをサポートして下さっている方々、この街下商店街の建築や発展にご尽力頂いた方々、本当にありがとうございました。」

「今からお出しする『ビール』というお酒は、私の故郷では、多くの人々に愛されるお酒の一つです。大麦から時間をかけて丁寧に作ったお酒であります。きっと、初めて味わうお味となるでしょう。絶対な自信を持ってお出ししますが、中にはお口に合わない方もいることでしょう。果実酒もご用意がございますので、どちらも存分にお楽しみ下さい。それでは!カンパイ!」

「ゴクゴクゴク…プハァー!」
「ゴクゴクゴク…プハァー!」
「ゴクゴクゴク…プハァー!」

「なんじゃこりゃ!!キンキンに冷えていてめちゃくちゃ美味い!」

「美味い!何だこの酒ののど越しは!最高だわ。」

「おい!お前の口の上に白い髭が出来てるぞ!」

「あはは!お前もだぞ。そりゃ。ビールの泡だわ。」

「あはは!」

「サカモト様よう!このビールって酒は凄いな。俺達ドワーフはよ、大概の酒は知り尽くしている。けど、こんな美味い酒はしらねぇ。プハァー!最高だぜ!」

「マサさん。喜んで頂けて良かったです。まだまだありますから楽しんで行って下さい。」

「サカモト様、このビールは大変素晴らしいですね。すっかりファンになってしまいました。商品化されるのを楽しみにしております。」

「ベニーさん。ありがとうございます。街下商店街の件も本当に助かりました。これからもよろしくお願いします。」

 私は、色々な方々に声を掛けて回った。どの方からも、大変美味しいと大評判であった。

(こりゃ、商品化も大いにアリだな。)

「ミザーリアさん。大丈夫ですか?」

「レイ君…。ビールおいひぃでわよぉ。今日はちゃんと面倒見てちょうだいねぇ。」

「ミザーリアさん。弱いんですから、たくさん飲んではいけませんよ。ほら、向こうで休みましょう。」

「レイ様、私も手伝います。」

「あ、ありがとうございます。リヨンさん。ビールのお味は如何でしたか?」

「はい。ミザリが飲みすぎちゃうのも納得です。大変美味しかったです。」

「そうですか、良かったです。」

「おい!レイや。もっと、もっとお代りじゃ!」

「ミリモルさんも飲み過ぎですよ…。まったく。」

(今日は、色々な方とお話ができて、ビールの感想もたくさん聞けました。自分が飲みたくて作ったのですが、商品化も検討しましょうか…。)

 こうして、ビールの試飲会は大成功に終わったのであった…。

―――― to be continued ――――
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