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第5章 バロー公国編

第114話 ボーゲンのダンジョン(リヨン視点)

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◇◇◇◇ リヨン視点 ◇◇◇◇

 私たちはCグループとして、迷宮の参之階を攻略していた。リーダーはレイ様だ。

 彼は脳内マップを始めとした優れた能力を持ち、迷宮の構造や罠、敵の位置などを完璧に把握できる。そのおかげで、私たちは最短ルートで進んでいる。

 このフロアはダンジョンの核だ。広大な空間には無数の通路や部屋があり、壁や床には様々な罠が仕掛けられている。

 そして時々現れる戦闘用カラクリ人形は、廉価版とはいえかなり強力だ。レイ様によると、庭園のカラクリ人形はもっと強くて手強いらしい。

 私たちは休憩を挟みながら探索を続けている。レイ様には他のメンバーから定期的に連絡が来ているみたいだ。

 他の四人も順調なようで安心した。私は今回の旅でかなり戦闘経験を積めたようだ。能力も数段向上している感じがする。しかし、レイ様の横に並ぶにはまだまだだ。



「出発しましょうか。」

 レイ様の声で私たちは再び歩みを始めた。もうすぐこのフロアの最終地点に到達しようとしている。奥には転移陣のようなものが見える。ここを突破すれば参之階は終わりだろう。

「戦闘用カラクリ人形が二体出現しました。これまでと違ってかなり強敵です。物理攻撃耐性と魔法攻撃耐性はレベル3です。魔導砲という遠距離攻撃もありますから注意してください。ではミューゼラさんとリヨンさんは協力して一体をお願いします。ミミは私に協力してください。」

「承知した!」
「御意!」
「任せてにゃん!」

 ミューゼラさんはレイ様から借りたシールドアイテムを装備している。これなら防御面は安心だろう。

 カラクリ人形は人型だが、全身が金属で覆われている。双剣を装備しており、素早く切りつけてくる。背中には筒状のものがあり、そこから魔導砲を発射するらしい。

「サカモト様、あなたの能力には驚かされますね。これまで誰もこのダンジョンを踏破できなかったのに。」

「あはは、申し訳ありません。」

 ミューゼラさんとレイ様は軽く会話しながら戦闘に備えている。私も気を引き締めて敵に向かっていく。

「やぁー!」

 先手はミューゼラさんだ。彼女の竜髭鞭は、見た目以上に硬く攻撃力が高い。前にトロールを一撃で斬り裂いていた。

 カラクリ人形は双剣で防御しているが、ミューゼラさんの鞭が隙間から打ち込まれた。見事な技だ。しかし…。

《キーン!》

「くっ、硬いな…。ダメージが軽い。」

「私も行きます!」

 私も素早く移動して敵の背後を取り、ポボロアーヌの大鎌で斬りつける。この大鎌には破壊不可という希少な能力が付与されており、遠慮なく叩き込める。

《ガン!》

「ダメか…。」

 クリーンヒットしたはずだが、物理攻撃耐性が相当高いらしい。ほとんどダメージを与えられなかった。

《ピピッ。》

「!」

「リヨン殿!」

「つっ…。」

 距離を取った途端にカラクリ人形の背中から筒が出てきて、何かが飛んできた。

 反射的に回避したが、速すぎて間に合わなかった。肩の肉がえぐられる。ポーションで瞬時に回復したが、恐ろしい攻撃だ。急所を狙われたら一巻の終わりだ。

「これが魔導砲か。危険だな。ミューゼラさん、ここは私に任せてください。」

「強さに差がありすぎる。ここは撤退するべきだ。」

「そうですね。流石はミューゼラさんです。正しい判断です。ですが、まだ奥の手がありますよ。」

「魔剣装着!そして強化剤を飲んでからの…『電光石火!』」

 自分の身体能力を最大限に上げる方法をとった。大幅な能力向上を感じる。筋肉の超疲労があるので短期決戦用だ。

「リヨン殿…あなたは一体…。」

「『縮地!』やぁー!!」

《ガッシャーン!!》

 一気に縮地で間合いを詰めて背後から双剣で斬りつけた。カラクリ人形のボディに魔剣の刃が刺さった。しかし…

(くっ、斬り抜けない…!!)

 物理攻撃耐性が効いているらしい。それでもダメージは確実に与えられた。しかし魔剣は深部に到達できずにボディに刺さったままだ。

《ピピッ》《ザクッ!》

「きゃあ!」

 直後にカラクリ人形からの反撃を受けた。私は肩からお腹にかけて深く斬られた。

「リヨンさん!」

(あれ、今レイ様の声が…どうして…。)

 気がつけば私はレイ様に抱き抱えられて手当てを受けていた。私は相手に負わされた傷や、超疲労によって気を失っていたらしい。

(私がもっと強かったら…。)

〘 リヨン。聞こえますか?〙

(えっ、私の心に…。)

〘 私は叡智エイチです。マスターの…サカモト・レイ様の神スキルです。〙

(レイ様がよくおっしゃっていたのは、あなただったのですね。ですが、どうして…。)

〘 はい。マスターとリヨンの繋がりが急激に高まったため、リヨンに干渉できるようになりました。これを叡智は『リンク』と呼んでいます。叡智はリヨンの思考を解析しました。〙

(えっ!?)

〘 リヨンはマスターとこの先も戦える力を望んでいるのですね。叡智は少しだけリヨンに力を貸しましょう。〙

〘 最適なスキル構成を解析、演算します。〙

〘 解析、演算中…。〙

〘 スキル構成しました。〙

〘 リヨンは超ユニークスキル『雷使い』を獲得しました。これは雷を自在に操る能力です。カラクリ人形には魔法耐性がありますが、雷に弱いようです。この能力ならば相手に大きなダメージを与えることが可能です。〙

「え、えぇー!!」

 ― to be continued ―
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