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第5章 バロー公国編
第109話 バロー公国(公都ダリアン・後編)
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私達は、バロー公国の公国防衛軍の騎士達に率いられ、王城へ向かうことになった。
◇ 公都ダリアン ◇
馬車は、公都ダリアンの正門をくぐった。
第三番隊隊長のミューゼラ・アマサルさんによると、この門は公都が混乱しているため、現在は封鎖しているようだ。我々は特例で通行を許可されたのである。
公都ダリアンは、王都ミキに匹敵するほどの広さと繁栄を誇る都市だった。
正門の周辺には、商店や宿屋が並び、人々の活気が溢れていた。
建物は白い壁に橙色の屋根で統一されており、美しい景観を作り出していた。ローランネシアと同じく、住居の様式やルールが決められているのだろう。
しかし、街道を進むにつれて、その光景は一変した。
道端にはテントがびっしりと張られ、難民たちが暮らしていた。彼らは近隣の村々から魔物に襲われて逃げてきた人々だという。
私たちは胸を痛めながらも先を急いだ。この状況では観光どころではなかった。
やがて王城が見えてきた。ローランネシア城ほどではないが、堂々とした姿であった。
門番は私たちの馬車を見るとすぐに門を開けてくれたようだった。門は吊り橋式であり、許可された者しか入れないようになっていた。馬車を王城の横に停めさせてもらい、城内へ入った。
◇ ダリアン城 ◇
王城内部は石造りで統一されており、壁や天井には窓や魔光灯が設置されていた。壁脇には燭台があり、蝋燭で照らされていた。
五階の大公の間へ案内される途中で、多くの兵士や使用人とすれ違ったが、皆忙しそうであった。今回の騒動で王城も混乱しているのだろう。
大公の間に着くと、そこには近衛兵が数人しかおらず、ローランネシアほど華やかではなかった。
玉座には若い少女が座っており、傍には中年の男性が立っていた。少女こそ大公殿下であり、男性は宰相であると紹介された。
大公殿下は小柄で華奢な体つきであった。年齢は15歳くらいだろうか。能力鑑定は非礼だと思ったので控えた。
(ん…?悪意探知スキルが反応した…?)
私たちはミューゼラさんに従って大公殿下の前まで歩み寄り、膝をついて頭を下げた。ミューゼラさんは私たちとは別の場所に移動し、他の兵士と一緒に整列した。
「こちらが公国の大公、アーニャ・ムルヌ・ウルカ殿下である。貴殿らの名を伺いたい。」
最初に話しかけてきたのは宰相であった。
「この度は王城にお招きいただき、光栄の至りです。我々はローランネシアから参りました商人でございます。そして私はローランネシアで子爵位を賜っております、サカモト・レイと申します。」
「ほう、ローランネシアの貴族か。商人でありながら貴族とは珍しいな…。さて、大公殿下は今回の貴殿らの活躍にとても感謝されておる。」
(大公殿下は一言も話さないな…。何かあるのだろうか?)
「大公殿下のお気持ち、ありがたく存じます。」
「うむ。実は今回の魔物騒動の原因は、おおよそ判明しておるのだ。」
「それはどういうことでしょうか?」
宰相によると、魔物が大量発生したのはダンジョンから起こったモンスターパレードという現象が原因だという。
モンスターパレードとは、ダンジョン内にポップする魔物の数が異常に増えてダンジョンから溢れ出すことだそうだ。外に出た魔物は本能のままに暴れ回り、周辺の村々を襲ったのだという。
この世界ではこれをスタンピードとも呼ぶらしい。公都周辺にあるダンジョンでモンスターパレードなる現象が起こった可能性が高いのだそうだ。
すでに公国防衛軍から約3000名がダンジョンへ向かっており、残りは公都や周辺の防衛に当てられているという。
「なるほど、承知いたしました。そのダンジョンですが、古代魔族技師ボーゲンが作ったものでしょうか?」
「何だと!?どうしてそれを知っている!?いや、まあ、確かにそうなのだが…。それがどうした?」
「ああ、すみません。我々は商人ですが、ダンジョンにも興味がありまして…。実は私の仲間たちはかなりの実力者なのです。もしよろしければ魔物鎮圧の手伝いをさせていただきたいのですが。」
「それは断る。貴殿らはローランネシアの民だろう。今回のことは感謝するが、これ以上余計なことに首を突っ込むな。」
「サカモト…様。わらわからも助力を…お願いしたい…」
初めて聞く大公殿下の声だった。美しい声だったが、弱々しく震えていた。
「殿下!」
宰相は慌てて大公殿下を制止しようとしたが…。
「よろしく…お願いします…」
大公殿下は玉座から立ち上がり、私たちの方を見つめて言った。声はか細かったが、決意に満ちていた。
「はっ!大公殿下のお言葉、重ねて感謝いたします。我々は早速ダンジョンへ向かいます。では、これにて失礼いたします。」
私たちは再び大公殿下に深く礼をして退室した。
「皆さん…よろしく…。ミューゼラ…」
「はい!殿下!」
(やはり、悪意探知に反応が…。)
私たちは王城を後にしてダンジョンへと急ぐことにしたのであった…。
― to be continued ―
◇ 公都ダリアン ◇
馬車は、公都ダリアンの正門をくぐった。
第三番隊隊長のミューゼラ・アマサルさんによると、この門は公都が混乱しているため、現在は封鎖しているようだ。我々は特例で通行を許可されたのである。
公都ダリアンは、王都ミキに匹敵するほどの広さと繁栄を誇る都市だった。
正門の周辺には、商店や宿屋が並び、人々の活気が溢れていた。
建物は白い壁に橙色の屋根で統一されており、美しい景観を作り出していた。ローランネシアと同じく、住居の様式やルールが決められているのだろう。
しかし、街道を進むにつれて、その光景は一変した。
道端にはテントがびっしりと張られ、難民たちが暮らしていた。彼らは近隣の村々から魔物に襲われて逃げてきた人々だという。
私たちは胸を痛めながらも先を急いだ。この状況では観光どころではなかった。
やがて王城が見えてきた。ローランネシア城ほどではないが、堂々とした姿であった。
門番は私たちの馬車を見るとすぐに門を開けてくれたようだった。門は吊り橋式であり、許可された者しか入れないようになっていた。馬車を王城の横に停めさせてもらい、城内へ入った。
◇ ダリアン城 ◇
王城内部は石造りで統一されており、壁や天井には窓や魔光灯が設置されていた。壁脇には燭台があり、蝋燭で照らされていた。
五階の大公の間へ案内される途中で、多くの兵士や使用人とすれ違ったが、皆忙しそうであった。今回の騒動で王城も混乱しているのだろう。
大公の間に着くと、そこには近衛兵が数人しかおらず、ローランネシアほど華やかではなかった。
玉座には若い少女が座っており、傍には中年の男性が立っていた。少女こそ大公殿下であり、男性は宰相であると紹介された。
大公殿下は小柄で華奢な体つきであった。年齢は15歳くらいだろうか。能力鑑定は非礼だと思ったので控えた。
(ん…?悪意探知スキルが反応した…?)
私たちはミューゼラさんに従って大公殿下の前まで歩み寄り、膝をついて頭を下げた。ミューゼラさんは私たちとは別の場所に移動し、他の兵士と一緒に整列した。
「こちらが公国の大公、アーニャ・ムルヌ・ウルカ殿下である。貴殿らの名を伺いたい。」
最初に話しかけてきたのは宰相であった。
「この度は王城にお招きいただき、光栄の至りです。我々はローランネシアから参りました商人でございます。そして私はローランネシアで子爵位を賜っております、サカモト・レイと申します。」
「ほう、ローランネシアの貴族か。商人でありながら貴族とは珍しいな…。さて、大公殿下は今回の貴殿らの活躍にとても感謝されておる。」
(大公殿下は一言も話さないな…。何かあるのだろうか?)
「大公殿下のお気持ち、ありがたく存じます。」
「うむ。実は今回の魔物騒動の原因は、おおよそ判明しておるのだ。」
「それはどういうことでしょうか?」
宰相によると、魔物が大量発生したのはダンジョンから起こったモンスターパレードという現象が原因だという。
モンスターパレードとは、ダンジョン内にポップする魔物の数が異常に増えてダンジョンから溢れ出すことだそうだ。外に出た魔物は本能のままに暴れ回り、周辺の村々を襲ったのだという。
この世界ではこれをスタンピードとも呼ぶらしい。公都周辺にあるダンジョンでモンスターパレードなる現象が起こった可能性が高いのだそうだ。
すでに公国防衛軍から約3000名がダンジョンへ向かっており、残りは公都や周辺の防衛に当てられているという。
「なるほど、承知いたしました。そのダンジョンですが、古代魔族技師ボーゲンが作ったものでしょうか?」
「何だと!?どうしてそれを知っている!?いや、まあ、確かにそうなのだが…。それがどうした?」
「ああ、すみません。我々は商人ですが、ダンジョンにも興味がありまして…。実は私の仲間たちはかなりの実力者なのです。もしよろしければ魔物鎮圧の手伝いをさせていただきたいのですが。」
「それは断る。貴殿らはローランネシアの民だろう。今回のことは感謝するが、これ以上余計なことに首を突っ込むな。」
「サカモト…様。わらわからも助力を…お願いしたい…」
初めて聞く大公殿下の声だった。美しい声だったが、弱々しく震えていた。
「殿下!」
宰相は慌てて大公殿下を制止しようとしたが…。
「よろしく…お願いします…」
大公殿下は玉座から立ち上がり、私たちの方を見つめて言った。声はか細かったが、決意に満ちていた。
「はっ!大公殿下のお言葉、重ねて感謝いたします。我々は早速ダンジョンへ向かいます。では、これにて失礼いたします。」
私たちは再び大公殿下に深く礼をして退室した。
「皆さん…よろしく…。ミューゼラ…」
「はい!殿下!」
(やはり、悪意探知に反応が…。)
私たちは王城を後にしてダンジョンへと急ぐことにしたのであった…。
― to be continued ―
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