96 / 141
第5章 バロー公国編
第96話 爵位
しおりを挟む
ーーー 爵位授与式 王城玉座の間 ーーー
今日は、王城にて爵位を賜ることになっている。
こんなことになろうとは夢にも思っておらず、実感がいまいち湧き上がらない。
ましてや、王族や貴族が注目している中での授与となる。
粗相なくできるのか、失敗しないだろうか?というネガティブな感情が、心の中を占領している。
私と魔人アモアの討伐メンバーは、玉座の間の手間で待機している。
エチゴヤからは、ミリモルさん、リヨンさん、ミミ、ミザーリアさん、アッシュさんと私の六名。
王国騎士団は、ギルバートさん、オーエンさん、イースさんの三名だ。
キャシーさんと、ココアは、新規加入の為、ミリモル邸でお留守番をしている。
ミリモルさんは、以前使ったことのある若返りの魔法を使用しており、美しい女性の姿になっていた。
おまけに、ホワイトを基調にした華やかなドレスを着こなしており、150歳を超える方には到底思えない。
エチゴヤメンバーも、宮廷から下賜された正装を身につけている。
私とミリモルさん以外のメンバーは、ネイビーを基調とした、軍服の様な凛々しい出で立ちであった。
まるで、高名な騎士かと見間違える程の装いで、思わず見入ってしまう。
「皆さん、とても素敵ですよ。」
私は、皆の立派な装いに、素直に褒め称える。
私は、国王陛下より賜ったタキシードを着ている。
王国貴族の間では、一般的な装いなのだそうだ。
高級感のある服なので、少々違和感があり、少し気恥しく思ってしまう。
それでもほんのり光沢を感じさせるダークグレーのタキシードは、着こなせれば違和感も無くなるのかも知れない。
「レイ様、素敵ですよ。良くお似合いです。」
「あらあら、レイ君。とても格好良いわよ。」
「ご主人様、似合っているにゃん!」
「フフッ。こりゃ見違えたのう。レイが貴族とはの。」
「主よ、なかなか似合っているではないか?ガハハッ。」
「ありがとうございます。でも私の場合、まるで猿が服を着ているかのようです。」
「ハハッ。いい表現じゃな。じゃが、本当に見違えったよ。」
待ち時間をみんなで談笑してる間に式典の準備は整ったようだ。
室内より品の良い楽器の演奏が耳に届いてきた。
そろそろ出番のようだ。
玉座の間の重厚な扉が、ゆっくりと開いていく。
大勢お集まり頂いた方々の姿が、少しずつ視界に入り込む。
真っ先に現れたのは、王国貴族の方々のようだ。
髪型、身なり、風貌には品があり、高貴なご身分であろうことは、想像に容易い。
「彼が…。」
「まだお若いわね。」
「あれが、サルバネーロの英雄か…」
「あれは、王国の魔女様では?」
「まるで別人だ。」
「後ろの騎士様たちは誰だ?」
「お美しい。」
聞き耳を立てている訳ではないのだが、貴族様方の噂話がこちらにも届いている。
我々一同は、貴族様方からは相当に注目をされているらしい。
特にミリモルさんは、御老人の姿のイメージが強いらしく、皆さん若返りの魔法の凄さに驚かれている様子だった。
それからリヨンさんとミミ、ミザーリアさんは、容姿がずば抜けて美しい為に、ミリモルさん同様に注目されていた。
我々は、音楽に合わせ、姿勢良く、優雅な足取りで先に進む。
両脇には、王国騎士団が向かい合う様に整列しており、はっきりと国王陛下が見える所まで進むに連れて、緊張感が高まるのを感じる。
騎士団の列を通過して、国王陛下の御前で停止する。
ミリモルさんが、跪く様子を横目に、私たちも同様に跪く。
同時に、演奏指揮者の合図が入り、ピタリと演奏が鳴り止んだ。室内が一斉に静寂に包まれた。
「英雄達よ、よく集まってくれた。これより、勲章授与並びに、サカモト・レイの叙爵式を執り行う。」
国王陛下が、最初に口を開く。
その後、陛下の視線が宰相に向き、合図が入ると、宰相が話の続きを説明し始める。
「上級魔族アモアとその勢力により、北の国境の都市サルバネーロは、三千人を超える死傷者が出る程の損壊、南のハマカゼ村は壊滅させられました。ここにいる九名の戦士達は、上級魔族アモアを討伐した英雄達でございます。」
我々の功績に場内は、静かにざわめきの声が上がる。
宰相は、続けてアモアの恐ろしさや強さ、我々の活躍に関することをわかりやすく説明してくれた。
自分達のしたことが、会場の皆さんに理解されたようで少し安心した。
「まずは、サルバネーロでの功績者九名に、『英雄の勲章』を授ける。九名は、前に。」
九名は、横一列に並び跪く。
国王陛下は、勲章を手にして一人ずつ首に掛けていく。
この勲章は、英雄の勲章という。
救国の為に戦い、活躍した戦士に授けられるのだそうだ。
他にも智者の勲章や、芸文の勲章などもあるという。
最初に最も身分の高いミリモルさん、ギルバートさんという順で、授与される順番にも決まりがある様である。
式典では、首に勲章を掛けて頂いているのだが、服の胸元に付けるタイプの勲章も後で頂けるとのことだ。
私は、イースさんの後に頂き、最後にアッシュさんが頂き、全員の授与が完了した。
場内には、拍手が鳴り響き、勲章授与者の功績を皆が称えてくれていた。
「さて、最後に叙爵の儀を執り行う。サカモト・レイよ前に。」
「はい!」
私は、宰相の呼びかけに反応して、国王陛下の御前に移動する。
余りにも緊張し過ぎて、自分がどの様な状態になっているのか理解が及ばない。
手足があべこべにうごいて無様な動きになっていないだろうか…。
国王陛下の隣りに立つように促されて、言われた通りにする。
陛下と私は、会場の皆さんに向かい合う様に立っている。
「彼が、新しい貴族となるサカモト・レイである。今回のサルバネーロでの魔族との戦いにおいて、勲功一番の働きをしてくれた。それだけでない。王都の裏側を実質支配していた犯罪ギルド、『ソウルイーター』を完全な壊滅に導いた立役者でもある。彼のこの国への貢献は、これまで類に見ぬ程多大である。この多大なる貢献に国として報いる為、ここでサカモト・レイに『子爵』の爵位を与えることとする。」
一瞬で会場は、大きなざわめきが沸き起こった…。
私は、正直どういう状況なのか、理解できなかった。
しかし、この耳には今まで以上に色々な声が届くらしく、皆さんが何に対してざわついていたのかを、ようやく理解した。
会場における動揺は、この『子爵』という爵位に関してらしい。
通常は、叙爵と言えば、男爵位を賜ることが通例である。
しかし、私の爵位は、男爵位の上である子爵位である。
私の様な新興貴族が、男爵位の貴族様方をいきなり追い抜く訳なので、面白くない方がいる様なのだ。
(正直、めんどいし、別に男爵でもいいんだけど…。)
と思ってしまう。しかし、これは国王陛下が決定したことである。
「何か我の決定に不満でもあろうか?彼の功績に見合う爵位を用意したまで。皆にもこの国を今後とも盛り立てて貰いたい。勿論、働きに応じて然るべき対応はさせて頂こう。」
国王陛下のお言葉で、会場は再び静けさを取り戻した。
陛下は、働き次第で陞爵も有り得るのだとこの場で示したからである。(※ 陞爵とは爵位が上がること。)
「この度は、立派な爵位を賜りましたこと、深く御礼申し上げます。爵位に恥ぬ働きをするとここに誓います。王家の皆様、貴族の皆様。若輩者ではございますが御指導や御鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。」
私は、国王陛下の一声で、冷静さを取り戻したようだ。
自分の挨拶の時には、自分らしい発言ができたように思う。
そして、先程まで高まっていた場内の悪意が、徐々に弱まっていくのを感じたのであった。
ーーー 式典終了後 来賓会場 会食 ーーー
勲章と叙爵の式典が終了すると、王族と貴族は、来賓会場へ移動して会食を行う。
ミリモルさんや、リヨンさん、ミミ、ミザーリアさんに私も貴族様方に囲まれて、色々な方々からとお声掛け頂いている。
そんな私達を横目に、アッシュさんは、清々と食事やお酒を楽しんでいた。
(アッシュさんめ…。)
心の声がアッシュさんを非難しようとも、貴族様方からの圧が無くなる訳ではない。
「サカモト子爵殿、我が娘を貰って下さらぬか?」
「いや、サカモト子爵殿。当家の方が爵位も領地も広大だ。」
「サカモト子爵殿、貴公の取扱う魔導具やアイテムは良質だと聞く。どうじゃ?当家が販売の力添えをしようではないか。」
「はぁ…。」
私は、他の貴族達からの一方的な交流に困っていた。
私を囲えば、利益につながる判断したのだろう。
このような公の場で誰かを優遇すれば、恐らく他の方からは反感を買う形となるだろう。
リヨンさんや、ミザーリアさんの周りにも多くの方が集まっている。
側室や愛人にでもしようと考えているのだろうか…。
貴族様方を何とか振り切り、国王陛下や、王族の皆様に挨拶に伺う。
「貴公も今は子爵だ。今後は、サカモト殿と呼ばねば失礼になるな。」
「恐縮です。陛下。」
「初代様が貴公に託したことは覚えておるな?」
「勿論でございます。タイゲンさんの意思を引き継ぎ今後も活動して行きます。」
「うむ。宜しく頼む。我がミキモトの一族も必ずや力になろう。して、今後はどうするつもりでおるのだ?」
私は、魔族技術ボーゲンのダンジョンのことや、聖剣の素材集めの旅に出ることなどを説明した。
「なるほど…。それは、大変なことよ。要塞都市ガドゥーを経由してバロー公国へ行くのだな。では、ガドゥーの領主に文をしたためよう。出国時には助けになってくれるだろう。」
「陛下、誠にありがとうございます。陛下のお力添え、大変心強いです。」
「うむ。彼女は、ガドゥーの領主兼、要塞都市の軍務司令でもある。いつもであれば、こういった会にも参加するのだが、なかなか多忙らしくてな。先程の式典が終わってすぐに帰ってしまったのだよ。」
「そうでしたか。立ち寄った際には必ず挨拶に伺います。」
陛下との会話の後も、まだまだ様々な方と言葉を交わし、交流を深めた。
程なくして会食は閉会となった。
会場では、若干の悪意がまだ察知されていたのが気がかりだったが、個人の特定には至らなかった。
少々不穏に感じながらも王城を後にしたのであった…。
ーーー to be continued ーーー
今日は、王城にて爵位を賜ることになっている。
こんなことになろうとは夢にも思っておらず、実感がいまいち湧き上がらない。
ましてや、王族や貴族が注目している中での授与となる。
粗相なくできるのか、失敗しないだろうか?というネガティブな感情が、心の中を占領している。
私と魔人アモアの討伐メンバーは、玉座の間の手間で待機している。
エチゴヤからは、ミリモルさん、リヨンさん、ミミ、ミザーリアさん、アッシュさんと私の六名。
王国騎士団は、ギルバートさん、オーエンさん、イースさんの三名だ。
キャシーさんと、ココアは、新規加入の為、ミリモル邸でお留守番をしている。
ミリモルさんは、以前使ったことのある若返りの魔法を使用しており、美しい女性の姿になっていた。
おまけに、ホワイトを基調にした華やかなドレスを着こなしており、150歳を超える方には到底思えない。
エチゴヤメンバーも、宮廷から下賜された正装を身につけている。
私とミリモルさん以外のメンバーは、ネイビーを基調とした、軍服の様な凛々しい出で立ちであった。
まるで、高名な騎士かと見間違える程の装いで、思わず見入ってしまう。
「皆さん、とても素敵ですよ。」
私は、皆の立派な装いに、素直に褒め称える。
私は、国王陛下より賜ったタキシードを着ている。
王国貴族の間では、一般的な装いなのだそうだ。
高級感のある服なので、少々違和感があり、少し気恥しく思ってしまう。
それでもほんのり光沢を感じさせるダークグレーのタキシードは、着こなせれば違和感も無くなるのかも知れない。
「レイ様、素敵ですよ。良くお似合いです。」
「あらあら、レイ君。とても格好良いわよ。」
「ご主人様、似合っているにゃん!」
「フフッ。こりゃ見違えたのう。レイが貴族とはの。」
「主よ、なかなか似合っているではないか?ガハハッ。」
「ありがとうございます。でも私の場合、まるで猿が服を着ているかのようです。」
「ハハッ。いい表現じゃな。じゃが、本当に見違えったよ。」
待ち時間をみんなで談笑してる間に式典の準備は整ったようだ。
室内より品の良い楽器の演奏が耳に届いてきた。
そろそろ出番のようだ。
玉座の間の重厚な扉が、ゆっくりと開いていく。
大勢お集まり頂いた方々の姿が、少しずつ視界に入り込む。
真っ先に現れたのは、王国貴族の方々のようだ。
髪型、身なり、風貌には品があり、高貴なご身分であろうことは、想像に容易い。
「彼が…。」
「まだお若いわね。」
「あれが、サルバネーロの英雄か…」
「あれは、王国の魔女様では?」
「まるで別人だ。」
「後ろの騎士様たちは誰だ?」
「お美しい。」
聞き耳を立てている訳ではないのだが、貴族様方の噂話がこちらにも届いている。
我々一同は、貴族様方からは相当に注目をされているらしい。
特にミリモルさんは、御老人の姿のイメージが強いらしく、皆さん若返りの魔法の凄さに驚かれている様子だった。
それからリヨンさんとミミ、ミザーリアさんは、容姿がずば抜けて美しい為に、ミリモルさん同様に注目されていた。
我々は、音楽に合わせ、姿勢良く、優雅な足取りで先に進む。
両脇には、王国騎士団が向かい合う様に整列しており、はっきりと国王陛下が見える所まで進むに連れて、緊張感が高まるのを感じる。
騎士団の列を通過して、国王陛下の御前で停止する。
ミリモルさんが、跪く様子を横目に、私たちも同様に跪く。
同時に、演奏指揮者の合図が入り、ピタリと演奏が鳴り止んだ。室内が一斉に静寂に包まれた。
「英雄達よ、よく集まってくれた。これより、勲章授与並びに、サカモト・レイの叙爵式を執り行う。」
国王陛下が、最初に口を開く。
その後、陛下の視線が宰相に向き、合図が入ると、宰相が話の続きを説明し始める。
「上級魔族アモアとその勢力により、北の国境の都市サルバネーロは、三千人を超える死傷者が出る程の損壊、南のハマカゼ村は壊滅させられました。ここにいる九名の戦士達は、上級魔族アモアを討伐した英雄達でございます。」
我々の功績に場内は、静かにざわめきの声が上がる。
宰相は、続けてアモアの恐ろしさや強さ、我々の活躍に関することをわかりやすく説明してくれた。
自分達のしたことが、会場の皆さんに理解されたようで少し安心した。
「まずは、サルバネーロでの功績者九名に、『英雄の勲章』を授ける。九名は、前に。」
九名は、横一列に並び跪く。
国王陛下は、勲章を手にして一人ずつ首に掛けていく。
この勲章は、英雄の勲章という。
救国の為に戦い、活躍した戦士に授けられるのだそうだ。
他にも智者の勲章や、芸文の勲章などもあるという。
最初に最も身分の高いミリモルさん、ギルバートさんという順で、授与される順番にも決まりがある様である。
式典では、首に勲章を掛けて頂いているのだが、服の胸元に付けるタイプの勲章も後で頂けるとのことだ。
私は、イースさんの後に頂き、最後にアッシュさんが頂き、全員の授与が完了した。
場内には、拍手が鳴り響き、勲章授与者の功績を皆が称えてくれていた。
「さて、最後に叙爵の儀を執り行う。サカモト・レイよ前に。」
「はい!」
私は、宰相の呼びかけに反応して、国王陛下の御前に移動する。
余りにも緊張し過ぎて、自分がどの様な状態になっているのか理解が及ばない。
手足があべこべにうごいて無様な動きになっていないだろうか…。
国王陛下の隣りに立つように促されて、言われた通りにする。
陛下と私は、会場の皆さんに向かい合う様に立っている。
「彼が、新しい貴族となるサカモト・レイである。今回のサルバネーロでの魔族との戦いにおいて、勲功一番の働きをしてくれた。それだけでない。王都の裏側を実質支配していた犯罪ギルド、『ソウルイーター』を完全な壊滅に導いた立役者でもある。彼のこの国への貢献は、これまで類に見ぬ程多大である。この多大なる貢献に国として報いる為、ここでサカモト・レイに『子爵』の爵位を与えることとする。」
一瞬で会場は、大きなざわめきが沸き起こった…。
私は、正直どういう状況なのか、理解できなかった。
しかし、この耳には今まで以上に色々な声が届くらしく、皆さんが何に対してざわついていたのかを、ようやく理解した。
会場における動揺は、この『子爵』という爵位に関してらしい。
通常は、叙爵と言えば、男爵位を賜ることが通例である。
しかし、私の爵位は、男爵位の上である子爵位である。
私の様な新興貴族が、男爵位の貴族様方をいきなり追い抜く訳なので、面白くない方がいる様なのだ。
(正直、めんどいし、別に男爵でもいいんだけど…。)
と思ってしまう。しかし、これは国王陛下が決定したことである。
「何か我の決定に不満でもあろうか?彼の功績に見合う爵位を用意したまで。皆にもこの国を今後とも盛り立てて貰いたい。勿論、働きに応じて然るべき対応はさせて頂こう。」
国王陛下のお言葉で、会場は再び静けさを取り戻した。
陛下は、働き次第で陞爵も有り得るのだとこの場で示したからである。(※ 陞爵とは爵位が上がること。)
「この度は、立派な爵位を賜りましたこと、深く御礼申し上げます。爵位に恥ぬ働きをするとここに誓います。王家の皆様、貴族の皆様。若輩者ではございますが御指導や御鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。」
私は、国王陛下の一声で、冷静さを取り戻したようだ。
自分の挨拶の時には、自分らしい発言ができたように思う。
そして、先程まで高まっていた場内の悪意が、徐々に弱まっていくのを感じたのであった。
ーーー 式典終了後 来賓会場 会食 ーーー
勲章と叙爵の式典が終了すると、王族と貴族は、来賓会場へ移動して会食を行う。
ミリモルさんや、リヨンさん、ミミ、ミザーリアさんに私も貴族様方に囲まれて、色々な方々からとお声掛け頂いている。
そんな私達を横目に、アッシュさんは、清々と食事やお酒を楽しんでいた。
(アッシュさんめ…。)
心の声がアッシュさんを非難しようとも、貴族様方からの圧が無くなる訳ではない。
「サカモト子爵殿、我が娘を貰って下さらぬか?」
「いや、サカモト子爵殿。当家の方が爵位も領地も広大だ。」
「サカモト子爵殿、貴公の取扱う魔導具やアイテムは良質だと聞く。どうじゃ?当家が販売の力添えをしようではないか。」
「はぁ…。」
私は、他の貴族達からの一方的な交流に困っていた。
私を囲えば、利益につながる判断したのだろう。
このような公の場で誰かを優遇すれば、恐らく他の方からは反感を買う形となるだろう。
リヨンさんや、ミザーリアさんの周りにも多くの方が集まっている。
側室や愛人にでもしようと考えているのだろうか…。
貴族様方を何とか振り切り、国王陛下や、王族の皆様に挨拶に伺う。
「貴公も今は子爵だ。今後は、サカモト殿と呼ばねば失礼になるな。」
「恐縮です。陛下。」
「初代様が貴公に託したことは覚えておるな?」
「勿論でございます。タイゲンさんの意思を引き継ぎ今後も活動して行きます。」
「うむ。宜しく頼む。我がミキモトの一族も必ずや力になろう。して、今後はどうするつもりでおるのだ?」
私は、魔族技術ボーゲンのダンジョンのことや、聖剣の素材集めの旅に出ることなどを説明した。
「なるほど…。それは、大変なことよ。要塞都市ガドゥーを経由してバロー公国へ行くのだな。では、ガドゥーの領主に文をしたためよう。出国時には助けになってくれるだろう。」
「陛下、誠にありがとうございます。陛下のお力添え、大変心強いです。」
「うむ。彼女は、ガドゥーの領主兼、要塞都市の軍務司令でもある。いつもであれば、こういった会にも参加するのだが、なかなか多忙らしくてな。先程の式典が終わってすぐに帰ってしまったのだよ。」
「そうでしたか。立ち寄った際には必ず挨拶に伺います。」
陛下との会話の後も、まだまだ様々な方と言葉を交わし、交流を深めた。
程なくして会食は閉会となった。
会場では、若干の悪意がまだ察知されていたのが気がかりだったが、個人の特定には至らなかった。
少々不穏に感じながらも王城を後にしたのであった…。
ーーー to be continued ーーー
0
お気に入りに追加
1,778
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に射出された俺、『大地の力』で快適森暮らし始めます!
らもえ
ファンタジー
旧題:異世界に射出された俺、見知らぬ森の真中へ放り出される。周りには木しか生えていないけどお地蔵さんに貰ったレアスキルを使って何とか生き延びます。
俺こと杉浦耕平は、学校帰りのコンビニから家に帰る途中で自称神なるものに拉致される。いきなり攫って異世界へ行けとおっしゃる。しかも語り口が軽くどうにも怪しい。
向こうに行っても特に使命は無く、自由にしていいと言う。しかし、もらえたスキルは【異言語理解】と【簡易鑑定】のみ。いや、これだけでどうせいっちゅーに。そんな俺を見かねた地元の地蔵尊がレアスキルをくれると言うらしい。やっぱり持つべきものは地元の繋がりだよね!
それで早速異世界転移!と思いきや、異世界の高高度の上空に自称神の手違いで射出されちまう。紐なしバンジーもしくはパラシュート無しのスカイダイビングか?これ。
自称神様が何かしてくれたお陰で何とか着地に成功するも、辺りは一面木ばっかりの森のど真ん中。いやこれ遭難ですやん。
そこでお地蔵さんから貰ったスキルを思い出した。これが意外とチートスキルで何とか生活していくことに成功するのだった。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる