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第4章 魔人アモア編

第92話 サブストーリー(キャシー編)

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《 魔人アモア戦 直後 》

「皆さんお疲れ様でした。突然ですが、エチゴヤに新しい助っ人が二人加わりました。一人は竜人のココアさん。もう一人はリッチクイーンのキャシャリーンさんです。」

 私は、二人がエチゴヤに加わる経緯を説明する。

 竜人のココアについては、異空屍の守護者である黒竜で、私の配下になったことを説明した。

 キャシャリーンに関しては、時間を少し遡らせて話をする必要がありそうだ。

《 キャシャリーン対決後 》

 私達は、キャシャリーンと対決したが、勝敗は付けずに終わった。

 彼女は私から何かを感じ取り、思う所があったらしい。

 彼女からは、敵意が消失したようだ。こちらも、アモア戦が控えており、できるだけ消耗や被害は抑えたいのが実情である。

 キャシャリーンとは、少しだけ話をして、私たちは更に下層を目指すことにした。

〘 待って!〙

(あれ?これは…。以前にも。)

 私は、以前にタイゲンさんと念話のようなことをしたことを思い出した。

〘 私よ。キャシャリーンよ。あなたに聞きたいことがあったのよ。〙

 念話の相手は、リッチクイーンのキャシャリーンであった。

 話し方が明らかに違うのだが、こちらの方が素なのだろうか?

〘 私とあなたのことをアモアに悟られないように念話にさせてもらうわね?あなたは、ミキモト・タイゲンのことはご存知?〙

(ああ、ええ。存じております。まあ、同郷ですし。)

〘 まあ!では、日本から…。〙

(え?日本を知っているんですか?)

〘 異世界にそういう地名があることは知っています。私もミキモトの名は継いでいますので…。〙

(それってどういう…。)

〘 こう言えばわかるかしら?私の名は、ミキモト・キャシャリーン・オル・ローランネシアよ。〙

(まさか…王女様?)

〘 現在ではなく、過去のね。三代目ローランネシア王の次女が私よ。〙

(話が飛躍し過ぎて、何だか頭が混乱してきた…。)

 話が長くなりそうなので、エチゴヤメンバーには、ここで一時休憩してもらうことにした。

 B6への連絡階段にセーフゾーンがあるので、ここならば安心して休めそうだ。

(色々疑問に思うことはありますが、とりあえず私を引き止めた理由を教えてください。)

〘 ええ、もちろんよ。貴方の黒髪や、この世界ではあり得ない特殊な異能に興味を持ったのよ。あなたは、日本からの『迷い人』よね?初代様タイゲンの加護を受けていることからも『導き手』ではないかしら?〙

(導き手?それは何でしょうか?存じ上げませんね。)

〘 そうなの?初代様からは、何か聞いてないかしら?〙

(数年後に魔王が誕生するから、それまでに魔王に抗えるように準備するようにと言われていますね。)

〘 思った通りだわ。それこそが『導き手』なのよ。勇者だけが魔王と戦うのではないのですよ。魔王の脅威から人々を救い、平和へと導く存在こそが『導き手』なのです。〙

(なるほど、導き手のことは理解しました。それで、キャシャリーン王女殿下と私や導き手は、どう結びつくのでしょうか?)

〘 キャシーでいいわよ。私も人々の平和と安寧を願っているのよ。訳あって、こんな見た目になってしまったけどね。そして、導き手を手助けするのが、ミキモトの役目よ。あなたに興味があるのも理由の一つかしら?〙

(つまりは、私達の協力者になると?)

〘 ええ。あなた達がそう望むならね…。私はこんな有様ですから無理強いはしないわ。〙

(あなたを仲間に迎えるにあたり、あなたには聞きたいことがたくさんあります。しかし、時間も差し迫っています。これだけは聞いておきたいのですが…。)

〘 ええ、何でも聞いてください。〙

(サルバネーロの人々をアンデッドにしたのはなぜですか?あなたは本当に人々の味方ですか?それとも敵ですか?)

〘 その質問は、非常に痛い質問ですね。そして、納得して解消しなくてはならない問題でもあります。正直にお話しましょう。〙
 

《 サルバネーロが襲撃された日 》

 私は命令により、既にこの場所(地下ダンジョンB5)に居ました。

 アモアやその背後に存在する者が非常に危険であることを知り、情報収集と対応のために彼らの配下に加わったのです。

 リッチクイーンという種族が幸いしてか、アモアたちからは信頼され、これまで疑われることはありませんでした。

 アモアは、魔法の実験と称して、サルバネーロで大量殺戮しました。

 その後に、私に指令が下ったのです。

 実験で亡くなった方の死体をアンデッドに変え、アンデッドたちに街を襲わせて滅ぼすようにと…。

 私は、とても困りました。

 街の住人を殺めることなど、あってはならないこと。

 ですが、命令を断ってしまえば、今まで情報収集のために配下としてやってきたことが無駄になってしまいます。

 私は、考えました。アモアやその背後の者たちからの信頼を失わずに、住人たちを救う方法を…。

 そんな矢先に、使い魔のスカルバットからの情報が入りました。

 ピレイニー湖の湖畔に手練の集団がいて、こちらに向かっていると。

 その集団の中には、見たことの無い武器を使って魔獣を大量に瞬殺している者がいると…。

 私は、思いつきました。この方々を利用すれば、アモアから住人たちの気を逸らせられるだろうと。

 そこで私は、アモアに『ゲーム』を提案しました。

 住人を景品として手練の集団を誘い込み、私や守護者を倒した強者のみが、ダンジョンマスターであるアモアに挑戦する権利を与えられる伝えました。

 住人を景品とすることで、一時的にはなりますが、人々の生命を守れると考えたのです。

 アモアにとって人々は、実力を出さずとも、いつでも倒せる退屈な存在に見えていたようです。

 日頃から退屈していたアモアにとって、私が提案した『ゲーム』は、暇潰しの娯楽として魅力を感じたようです。



〘 これが、サルバネーロでの悲劇の全てです。亡くなった方々をアンデッドにしたことについては、命令だったとはいえ、決して許されることではありません。亡くなった方々の御魂が安らかな天の地を歩めるようにお祈りし、私の使命を全うすることでお返ししたいと思っています。〙

(嘘をついているようには見えないな…。悪意探知スキルにも反応はないようだ。)

(キャシーさん、わかりました。あなたを信じてみようと思います。アモア戦で助力を求めるかもしれません。その時はお願いしますね。)

 これが、キャシーさんが仲間になることになったお話。

ー to be continued ー
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