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第4章 魔人アモア編

第78話 ダンジョン地下6-7階

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「皆さん、私の後に隠れて下さい!!」

 私は大声で叫んだ。リヨンさんやアッシュさんは、私の身を守ってくれるだろうが、今回は違う。私が持つ特殊なスキルで、この危機を乗り越えるしかない。

 彼女たちは、私の言葉に従って素早く身を隠した。私の真意に気づいてくれたのだろうか。それとも、ただ信じてくれたのだろうか。どちらにせよ、私は嬉しかった。仲間として認められていると感じたからだ。

 リッチクィーンより放たれた魔法の矢は、もの凄い勢いでこちらに飛んで来る…。夥しい数の矢は、一瞬で目の前まで迫り、そして…消滅した。

 《シュン!》

「え、えぇー!うそー!」

 リッチクィーンの声が聞こえた。彼女は驚いているようだった。私の前には『魔結界』が展開し、魔法の矢は全て無効化されてしまったからだ。マジックアローは直線的な攻撃なので後に隠れていたメンバー達も皆無事だ。

「この魔結界は、便利ですね。ありがとうございます!」

「スキルスティール(スキルを奪うスキル)!?アナタ…一体何者なの?その能力はただの人間には扱えないはずよ!しかもワタシの魔法をスキル化してしまうとは…。こんな滅茶苦茶なスキルは、あの方以来だわ。しかもあの方と同じ黒髪。あなたはもしかして…。いえ、間違いないわね。」

「どういうことでしょうか?」

「いいわ。気が変わったわ。お通りなさい。もしもアモア様、いえ、もういいわね。アモアを打ち倒せた時、あなた達の力になりましょう。」

「一体どういうことじゃ?きちんと説明せい!」

「おばあさん。今は内緒よ!」

「ぐぬぬ…。」

 キャシャリーンの行動は、いまいちスッキリしなかったが、『悪意感知スキル』からは彼女からの悪意が消失されたために私は彼女を信じることにした。

「わかりました。あなたを信じます。アモアを倒したら詳しく話を効かせて下さいね。」

「頑張りなさい。一つだけ忠告しておくわ。アモアの弱点が見つけられなければ、あなた達には勝ち目はないわ。私も探してはいたけど見つけられなかったの。もしかしたらあなたなら見つけられるかもね。」

「ありがとうございます!」

 意外にもリッチクイーンのキャシャリーンとの戦いは、こうして幕を閉じた。

◇ ダンジョン 地下六階 ◇

 地下六階に移動して三時間が経過している。これまでの階層と違い、とにかく広大な階層のようだ。

 この階層は、リッチクィーンであるキャシャリーンの管理階層を離れたからか、アンデッドとの遭遇はなくなり、気持ち悪くてデカい魔物との戦いの連続となっていた。

 これまで、殆ど活躍していない私も、この階層では銃を片手に奮闘していた。殆どの魔物は、脳を撃ち抜けば即死となるようだ。何度も繰り返す戦闘に次第に慣れてきているのを実感する。私は、いつの間にか50~100m程離れた敵相手でも高確率でヒットさせられるようになっていた。

 私達は、歩きに歩き回り、下層への階段がある広間に到着した。皆、一同にクタクタになっていたので、ここで小休止を取ることにした。周囲の敵は、狩り尽くしたので、しばらくは出現することはないだろう。休憩のついでに、先程キャシャリーンから入手した『魔結界』について調べてみよう。

 スキル:魔結界(レベル1)
 弱い魔法をかき消す結界。ダメージ限界を超えると壊れる。物理攻撃に対しては効果を発揮しない。

 ある意味これは凄いな…。弱い魔法攻撃ならどれだけ攻撃を受けても平気な訳だ。キャシャリーンのマジックアローの飽和攻撃にもびくともしなかったのは、一発あたりのダメージ量が少なかったからだろう。

 『魔結界』…使えるな。私は早速仲間や自分の装備に魔結界を付与し、錬成しておいた。やはりシールドスキルと同様に錬成したらスキルレベルが一つ上がっていた。

 スキル:魔結界(レベル2)
 弱い魔法をかき消す結界。ダメージ限界を超えると壊れる。物理攻撃に対しては効果を発揮しない。魔結界(レベル1)よりもダメージ限界が向上した。

 レベルが上がったことで、ダメージ限界が向上した。相変わらず物理攻撃には効果がないので、シールドスキルとの使い分けが必要なのかも知れない。

 充分かはわからないが、課題であった守りの強化はこれで対応できた。アモア戦で効果的に作用してくれれば有難いが、サルバネーロを破壊させたあの魔力に打ち勝てているかは正直まだわからない…。

 そういえば、先程の戦闘では、大量に弾薬を消費してしまった。幸いにも火薬や薬莢の素材も充分にあるので、今のうちに作っておこうか。一々広げてから一つずつ作るのも面倒だ。試しに脳内メニューを展開。タイゲンカバンのリストから弾薬素材を選択し、『クリエイトスキル』を発動してみることにする…。

 (ん?あれ?もしかして脳内メニューで作れちゃった?)

 脳内メニューを展開し、タイゲンカバンの異次元空間内でアイテム作成したら、出来てしまったようだ。実際タイゲンカバンの収納データを確認してみたら、素材が減って弾薬が増えていたから間違いない。

 どうやら一度作成に成功しているアイテムは、脳内メニューを利用し、タイゲンカバン内で作成可能だということがわかった。これぞ正真正銘の神(チート)スキル!しかも、自身の能力が上がって知力が大幅に上昇したことで、脳内メニューの処理能力も向上したようだ。たくさんの弾薬もあっと言う間に作り終えてしまった。

 (これって生産チートだな…。エチゴヤで今度使ってみよう。)

 休憩も済んだ所で下の階層に進む。

◇ ダンジョン 地下七階 ◇

 地下七階は一気に様相が変化していた。狭い通路や石造りの壁が無くなり、広々とした場所に出くわした。地面があり、木々が生い茂り、豊な明るさが担保されている。天井は10mから15mはありそうで、奇妙な鳥たちが空?を飛んでいた。

 正直天井を気にしなければ、ダンジョンということを忘れる程地上に近い風景がそこにはあった。

「にゃにゃ?ダンジョンだけど、地上みたいな地下?ありゃりゃ。」

《ポカリ!》

 怒ったミリモルさんが杖で頭を叩く。
 
「痛いにゃ!」

 ミミは手で頭を押さえて悲鳴を上げる。
 
「ふざけたことを言うんじゃないよ。」

 ミリモルの激が飛ぶ。
 
「ここは紛れもなくダンジョンの中じゃ。大きな魔力が二つ…遠くに感じてるね?」

「にゃにゃ。本当にゃ。」

「よし、ちゃんと修行したことが身についているね。まだ強い敵が現れることじゃろう。気を抜かぬことじゃ。」

「はいにゃ!」

 ミミもミリモルさんの修行で成長しているようだ。私も負けてられないな。
 
 私は脳内メニューからマップ展開し、『索敵スキル』を発動しておく。確かに巨大な魔力を秘めた者がそれぞれ別々にいるようだ。動きが見られないことから、キャシャリーンが言っていた守護者の可能性が高いように思う…。

 ダンジョン内なのにターゲットまで10kmは離れているように思う。なんという広さの階層だろう。

 私たちは徐々にだが、着実に上級魔族アモアへと近づいて来ていたのであった…。

― to be continued ―
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