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第3章 覚醒編

第62話 王からの褒美

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 ソウルイーターを壊滅させた翌日、エチゴヤの仕事を終えた私は、ミリモル邸に帰宅する。すると、王城から緊急の連絡があったという。私とミリモルさんは急いで向かうことになった。
 
◇ 王城 王の間 ◇

 ミリモルさんと私の二人は、王の間に案内されて、王様を待っている。左右には騎士がずらりと並んでいるのは以前と同じだ。

「よう!来たか!前回も俺はここに立っていたんだが、思い出してくれたか?」

 ギルバートさんが笑顔で声を掛けてくる。彼は王様の親友であり、最強騎士団長だ。

「ギルバートさん。それが全然…。申し訳ありません。多分相当緊張していたかと…。」

 私は恐縮しながら返事する。前回来た時は、この世界に来たばかりだった。悪しき存在かどうかを疑われていて、気が休まらなかったことを思い出した。

「ガッハッハッ!お前さんでも緊張はするか!?化け物だと思っていたんだがな。」

「ご、ご冗談を…。」

 ギルバートさんは私の肩を叩きながら笑う。私は苦笑しながら彼から離れようとする。

「ギルバート、あまりレイを虐めるんじゃないぞ。」

 王が現れて王の間は静まり返る。王は黒色の髪と瞳を持つ、威厳と優しさを兼ね備えた人物だ。

「へへっ、ちょっとからかっただけですよ。」

 ギルバートさんは王に向かってニヤリと笑う。王は苦笑しながら私に近づいてくる。

「レイよ、待たせたな。先のソウルイーター壊滅の件、見事であった。そして、糸引く魔族の撃退も重ねて礼を言う。誠に大儀であった。」

「はっ!勿体なきお言葉。」

 私は素直に感謝する。王は私に微笑みながら話しかける。

「レイよ、お主はいずれ御先祖の意志を継ぎ、我らを導くであろう身。我に遠慮は無用だ。楽に話せ。」

「恐れ多いです。お気持ち感謝致します。」

 私は王の優しさに心を打たれるが、それでも敬語を使わずに話すことはできない。王は苦笑しながら話の本題に入った。

「まあ、よい。それがお主の性分なのであろう。では、早速だが、今回の功績に対する褒美を授けよう。白金貨五枚と、例のアジト跡地の所有権だ。」

「え、えっ~!!」

 私は思わず声を上げる。白金貨五枚だけでも相当なものだが、あの広い地下施設を丸ごと頂けるとは思っても見なかった。

「これ、レイや、御前じゃぞ。」

 ミリモルさんが私の背中を叩きながら言う。

「ガッハッハッ!まあ、そうなるわなっ。」

 ギルバートさんも大爆笑する。

「失礼しました。陛下、それは流石に頂き過ぎかと…。」

 私は恐縮しながら断ろうとする。

「良い。元々奴らには手を焼いていたのだ。これで収められたのなら安い物だ。それにお主は、大変な使命があるのだろう?その軍資金の一部だ。アジト跡地は、騎士団が既に片付けてある。様々なアイテムや財宝などは、こちらが管理することにしたがな。施設はそのままにしてあるから、自由に使うといい。願うならば、民の為になる使い方を期待する。」

 王は断固として拒否の姿勢らしい。

「承知しました。では、有難く頂戴致します。陛下のご期待に添える様、精進致します。」

 私は仕方なく受け取ることにした。

「して、レイよ。今後はどうするつもりでいるのだ?」

 王が興味深そうに聞く。

「まずは、北のサルバネーロを目指します。上級魔族の情報を得ましたので、そこで手掛かりを探すつもりです。その後、魔王への対抗策の一つとして、世界の各国を回り、聖剣の素材集めをしようかと…。」

 場内がザワつく…。どうやら『聖剣』のワードに反応したらしい。

「聖剣だと!?実在するのか?」

「かつて、タイゲンさんが勇者だった頃はです…。現在はありませんが、素材さえ集まれば、作るのは可能かと…。」

「そ、そうなのか。可能か…。お主は、御先祖が認めた男だ。まあ、そうであろうな。こちらも、いかなる支援も惜しまない。このミキモトの名において…な。そうか…聖剣か…。」

「ありがとうございます。その時はお力添えを宜しくお願い致します。」

 こうして、多大な褒美を頂き、王城を後にした。

◇ 王城の外 帰り道 ◇

「それにしてもお主の口から聖剣とはの…。皆驚いておったわ。本当に可能なのかい?」

「絶対とは言えませんが、タイゲンさんからお借りした書籍に作り方は載っていますから…。その通りに作って魔剣は完成してますし、大丈夫だと思います。ただ、聖剣は、魔剣と比べ物にならない位、作るのが難しいですけど…。」

「そうか。ワシに手伝えることがあれば協力しよう。じゃが、レイよ、凄いことになったよの。まさか、あのアジトをレイに託されるとはな…。王は、上手いことやりおったわ。」

「え!?どういうことですか?」

「お前の知恵と能力で、あそこを生まれ変わらせようとしたのじゃよ。褒美と言っておきながらの。」

「ゲッ!そう言うことか…。民の為になるようにみたいなことを言っていたのはそう意味だった訳ですね。う~ん。実は案がない訳じゃないんですけどね…。」

「して、お主の考える案とやらはどういった物なのじゃ?」

「いえ、単に思い付きなんですが、ミリモルさんに入って貰った『お風呂』のもっと規模の大きい物を作ろうかと考えています。名付けるならば、『銭湯』です。」

「ふむ。こないだの風呂か。あれは良かったのぅ。疲れがふぁ~と吹き飛んだのぅ。して、『銭湯』とは何じゃ?」

「王都に住む多くの人々が利用できる共同風呂のことですよ。もちろん、これは商売ですから、入浴料は無理ない価格で頂くことになりますが…。しかもあの広さでしょう?そのまま宿泊出来たり、飲食や買い物が出来るような施設も作ろうかと…。」

「ほぅ…それは妙案じゃのぅ。実現すれば、きっと多くの民が喜んで利用するじゃろう。じゃが、そのような大規模の風呂や施設が本当に作れるか?」

「私一人の力ではまず無理でしょう…。ですが、陛下からは資金を頂いていますし、このお金で様々な技術者を雇い、皆で協力すれば不可能ではないかと思います。かなり時間はかかると思いますが…。」

「よし、ワシも全面的に協力しよう。建築関係の人材は、ワシが手配しよう。」

「ありがとうございます。ミリモルさん、早速ですが、明日お時間頂けますでしょうか?一度現地を視察しておきたいのです。」

「承知した。建築関係の人間も同行するが、構わないな?」

「もちろんです。こちらもドワーフのメサと商会長のベニーさんに声掛けして、明日同行して頂きます。」

 こうして、私は王都で最大級のプロジェクトを始めることになったのであった…。
 
― to  be continued ―
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