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第2章 初めての旅

第44話 悲しみの再会

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 大火事がハマカゼ村を襲った。激しい炎に包まれたため、村人のほとんどが命を落としてしまった。しかし、奇跡的に村長のガラフさんと彼の娘であるミザーリアさんは、高品質ポーションで生き延びたのだ。

 ダークエルフの二人は馬車の荷台に横たえられ、リヨンさんが見守っていた。本来なら村を離れるべきだが、私たちは村に多くの時間を費やした。もう日が傾こうとしていた。

 夜間の移動は危険だったため、今夜はここで宿営することになった。天幕を準備し、馬を休ませる。

 私たちは、目の前で起こった悲劇によって食欲をなくしていた。しかし、明日からの移動を考えると、きちんと食事を摂る必要があるだろう...。料理長が用意した食料はまだ余っているので、バッグから取り出して並べておくことにした。

「イヤー!」

 大きな声が馬車から聞こえた。おそらく、ミザーリアさんが目を覚ましたのだろう...。馬車に向かうと、ミザーリアさんが村の悲惨な光景を目の当たりにしていた。

 建物は焼け崩れ、すべてが焼け尽くされているのが明らかだった。彼女は泣き崩れており、直後に目を覚ましたガラフさんに抱きしめられて慰められていた。私も何か声をかけるべきだろう。

「申し訳ありません。私たちがこの村に到着した時には、もう手遅れでした。お二人を救出することが精一杯でした。」

「信じられない...こんなことになってしまうとは...。レイさん、もう訳ない...。」

 ガラフさんも動揺しながらも、必死に私たちに謝罪の気持ちを伝えているようだった。

「村長!ミザーリア!」

「ミミ!」

 深い絆によって結ばれた三人が再び対面した。彼らは抱き合い、涙を流しながらこの村の悲惨な光景に胸を痛めた。ガラフさんとミザーリアさんはミミと再会したことで、少しだけ心の重さが和らいだように見えた。

「とにかく、こちらへおいでください。もしかしたら食欲は湧かないかもしれませんが、食事も用意してあります。」

 私はリヨンさんに目で合図し、互いに頷き合った。リヨンさんは二人を案内し、焚き火のそばまで導く。

「どうぞ、遠慮なく召し上がってください。」

 私もいただくことにする。本日は『お茶漬け』を頂くことにする。タイゲンカバンのおかげで、まさに出来立ての美味しさを味わえるのだ。この村で様々な活動をしたため、食べ始めると食欲も戻ってきたようである。

「うん!絶品です!」

 私は、二人とも元気がない様子だったので、わざと元気を装ってみる。

「おいしいにゃ!」

 ミミも私にならう…。

 そして、リヨンさんも食事を始めた。

 すると、ミザーリアさんの視線が遂に私たちの方に向けられた。

「さあ、こんな時こそ何か口に入れた方が良いですよ。こちらは、私たちの料理長が特別に作ってくれた『お茶漬け』という料理です。身体の芯までほっこりと温まりますよ!」

「にゃにゃ、ご主人様。美味しそう。ミザーリアが食べないならにゃんが…。」

《ペチン!》

 ミミがミザーリアさんに差し出そうとしていた『お茶漬け』を奪おうとしたので、リヨンさんは手をペチンと叩いた。

 ミミは「食べたかったのに」という表情を浮かべているが、そのままにし、ミザーリアさんの両手にお茶漬けを手渡した。ガラフさんには、リヨンさんがお茶漬けを手渡してくれていた。

「このスプーンを使って召し上がってください。」

 ミザーリアさんは、魚の出汁が染み込んだご飯をすくい、小さな口へゆっくりと運んでいった。最初は驚いた表情を見せていたが、やがて泣き始めた…。食事は生の源である。彼女は食事を通じて、自分が生きていることを実感したのだろう。

「本当に…ありがとう…ございます。」
「レイさん。こんな優しい食事まで…。ありがとうございます。」

「お礼は結構です。さあ、温かいうちに召し上がってください。」

 お二人ともゆっくりとしたペースではあるが、お茶漬けを完食したようだ。

 ガラフさんは食事を終えると、改めて私に正対してから口を開いた。少しだけ心が落ち着いた様子である。

「この度は、私たちの命と村の皆のためにご尽力いただき、本当にありがとうございました。」

「いえいえ、御恩のある皆様のためですから…。ですが、もしよければ、どうして村がこのような状況に陥ったのか、お教えいただけませんか?」

 私が尋ねると、ガラフさんはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「はい…信じがたいことだと思われるかもしれませんが、私たちの村、ハマカゼ村は、『上位魔族』に襲撃されたのです。」

「何ですって!?上位魔族ですか?それは少々信じがたい話ですね。私たちが戦った下級魔族と上級魔族の実力は、雲泥の差なのだそうです。」

 リヨンさんは、ガラフさんの言葉に驚きの表情を見せていた。

「リヨンさん、ということは…。」

「ええ。私たちが偶然戦った岬の洞窟の魔族は、『下級魔族』でした。それを私たちは三人がかりでやっと倒せたのです。もし『上級魔族』だったのなら確実に全滅していたと思います。」

「それほどの強さの相手がどこかにいるということですか…。ガラフさん、あなたは魔族と接触しましたか?」

「いいえ。ただ家の窓から彼らの様子をこっそり伺っていただけです。外見は人間とほとんど変わりませんが、彼らからは桁外れの魔力が溢れており、自らを上位魔族と称していました。本当は、村長として魔族に対処したかったのですが、何か特殊な魔法のようなものをかけられてしまい、村を焼かれる直前まで身動きが取れなかったのです。」

「そうでしたか…。思い出させてしまって申し訳ありません。とりあえず、食事も済みましたので、休息しましょう。私たちの天幕で身体を休めてください。」

「感謝致します。」

 危険をもたらす存在は、悪意探知や索敵スキルによって検知されなかったため、私たちは皆で休むことにした。夜間の見張り番も自動的に『索敵スキル』が発動するので不要だった。

 それでも、この村の惨状と優しい村人たちの笑顔が脳裏に焼き付いていて、長い時間寝付けなかったのであった…。

― to be continued ―
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