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第4章 超越者の門出編

第56話 上級者との戦い……三人共容赦無さ過ぎです

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「にゃはっはっ!   ではゆくぞ!」

   少女が楽しげに俺に向かって来る。
   うわっ、凄く嬉しそうだ。生粋のバトルジャンキーか?   ……何か身長といい、嬉々として戦いに挑む姿といい、ティアとダブるな……
   思わずため息を吐きたい気分になった所で、拳が飛んで来る。

「おお!   危なっ」

   間一髪バックステップで躱すと、次々と追撃の拳や蹴りが飛んで来た。

「にゃ!   にょ!   にゅ!   どうした!   ぼーっとしてると反撃も出来ずに負けるぞ」
   
   気の抜けそうになるかけ声と共に繰り出される攻撃を何とか捌きつつ、反撃を試みるがあっさり弾かれる。
   くっ!   こいつ、見た目と掛け声は可愛らしいけど、一撃一撃が早い上に重い。しかもこちらが攻撃を仕掛けようとすると、絶妙な間でカウンターを取りにきやがる。
   能力値は【全能力値強化】のお陰でほぼ互角の筈、使用してるスキルもおそらく同じ【格闘術】だと思われる……なら、一方的に俺が押されるのは今までの戦闘経験の差か、それとも……

「くっ!   同じ【格闘術】持ちの筈なのにどうしてこんなにも押される!」
「にゃははは、確かにお主は高レベルの【超級格闘術】を持っているみたいじゃが、私の【神級格闘術】レベル3に比べれば未だ未だ稚拙よのう」

   苦戦している様に見せかけると、楽しげに攻撃を仕掛けながら御丁寧に説明してくれる少女。本当にちょろい。
   そういう事か。同じスキル持ちでも級が違えばこんなにも一方的になるのか。まぁ、あくまで攻撃手段が一つの場合だけどーー
   猛攻の中、少女が頭部に隙を見せる。
   おそらくわざと見せてる隙なんだろうけど、誘いに乗ってみるか。

「ふっ!」

   短い気合いの声と共に少女の側頭部にハイキックを繰り出すが、少女はそれを避けようともせず、カウンターの前蹴りを俺の腹部に放つ。

   ドッ!

   互いの攻撃がほぼ同時にヒットするが、俺は後方に吹き飛ばされ、少女は微動だにしなかった。

《大体、3000のダメージだよ》

   はは、カウンターの蹴り一発で御老体の必殺魔法よりダメージが高いのか……
   ニアのダメージ報告を受け、苦笑いを浮かべながら立ち上がる。

「ふむ、同系統の上位スキル持ち相手に相打ち覚悟の攻撃を行うなど、豪気と言うより無謀じゃぞ」

   少女は俺が立ち上がるのを腰に手を当て待ちつつ、そう講釈した。

「いや~どこまで通用するか確認だったんだけどね。まさかここまで差がでるとは……」
「種族特性【龍鱗】を持つ私に、格下が物理攻撃で大ダメージを与える事など不可能じゃ」

   呆れた様に言い放つ少女に、俺はほくそ笑む。

[【龍鱗】は龍人特有の種族特性で、物理攻撃を半減させる効果があります]

   アユムの報告でまた少女の能力の一つが判明する。
   いやはや、ここまでちょろいと何か申し訳なくなってくるな。でも、そろそろ頃合いかな。
   相手の情報収集もこの辺にしとこうかと決断し、【高速思考】を使い、アユム達に念話を送る。

(大体情報は集まってきたかな。ティアの方はどうなってる?)
〈あの忍者の方と木の上で高速戦闘を行なっています〉
(戦況は?)
《あの黒尽くめ、気配を消すのは上手いけど、戦いの方はイマイチだね。煙玉とか手裏剣とか使ってくるけど、ティアちゃんは全部見切って余裕で押してる》
(心配の必要は無しか……じゃあ、こっちはさっさと決めますかーー魔法の使用を許可する。俺達の戦闘の合間を縫って相手が死なない程度にガンガン魔法を打ち込んで)
〈了解です〉
《オッケー》
[了承しました]

   三者三様の承諾の言葉を聞き、【高速思考】を解除する。

「さて、【格闘術】のランクも防御力も戦闘経験もそちらが上か……」
「なんじゃ大したダメージも受けておらんのに、もう諦めたか?」

   俺の呟きを聞き落胆の色を見せる少女に、ニヤリと笑って見せる。

「確かにこれがルールのある決闘とかなら、或いは諦めてたかも知れませんね……でも、これはルールの無い戦いーーだから恨まないでね」

   一言断りを入れてから一気に間合いを詰める。

「なんじゃ、まだやる気があるのではないか。恨むなじゃと、サシの勝負で何を恨むことがある」

   ガッカリしていた少女が再び笑みを浮かべて、向かってくる俺に拳を振り上げる。しかしーー

「何をってこういう事」
《【超級風術】ライトニングボルテックス♪》

   ニアが陽気に魔法を発動させるが……いきなり超級かよ!

(おいおい、死なない程度って言っただろ)
《大丈夫、大丈夫、相手は高レベルだもん。超級一発で死にやしないよ》

   突然発動したライトニングボルテックスは、当然少女の予想外の攻撃だったらしい。
   あれ程俺の攻撃を受け流してた少女があっさりライトニングボルテックスの直撃を喰らう。

「にゃにゃにゃ!   魔法じゃと!」

   全身を雷撃に襲われながら驚愕の声を上げる少女。
   ライトニングボルテックスが通り過ぎた後も、全身をぷすぷすいわせながら驚いた顔のまま立っている。

「【超級格闘術】を取得しときながら【超級風術】をも持っておるとは、お主本当に今期の勇者か?」
〈【超級水術】フリージングワールド〉

   喋ってる間に【超級水術】。トモさんも思ってたより容赦無い。
   フリージングワールドが発動し、少女を包む様にダイヤモンドダストを含む竜巻が発生する。

「にゃにゃ!   【超級水術】まで!」

   小型の竜巻のせいで全く姿が見えなくなったが、竜巻の中で少女が叫んでいる。

「これ……死なないよね」
《大丈夫、大丈夫》
〈計算上は問題無い筈です〉
[これは……私の出番がありませんでしたね]

   何か残念そうだね、アユムさん。
   竜巻が消えた後には、少女が驚愕の表情のまま氷漬けになっていた。
   マンガじゃ無いんだから、氷漬けって……本当に死んでないよね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   申し訳ありませんが次回から2日ごとの更新にさせてもらいます。
   理由は言わずもがな……おっさんです。
   文章を書くのは問題無いのですが、流石に毎日2話分の話を考えるのがきつくなってきました。
   もう少しおっさんが落ち着いたら、また調整しますのでよろしくお願いします。
   神尾優でした。


   

   
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