王太子殿下は悪役令息のいいなり

白兪

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「シルヴィン様は本当は王太子殿下のことなどちっとも好きではないそうよ。ただ王妃の座が欲しいだけなんだとか。」

「そんなわけないじゃない。あんなにもお2人は愛し合っているというのに。」
「そうよ。本当にお似合いの2人だわ。そんな噂は嘘だから信じない方がいいわ。」


「シルヴィン様は最近女学生をいじめているって噂を聞いたわ。」
「まさか!あのお淑やかな方がありえない!」


何から何までうまくいかない。
セシリアは顔を歪める。

誰もセシリアの話を信じてくれなかった。最近は特に、ディアスはシルヴィンへの寵愛を隠そうともしない。

「一途な男の人って素敵!シルヴィン様にどうしたらあんなにもメロメロにさせられるかお聞きしたいわ!」
そんな声も大きくなっていた。


セシリアは中庭のフリージアを踏み潰す。
「もうっ!もうっ!もうっ!!」

「セシリア嬢。」
声をかけられ後ろを振り向くとディアスが立っていた。

「で、ディアス様!!奇遇ですね!私も中庭へお花を眺めに来たのです。」
さっきのが見られていないだろうかと、セシリアは内心冷や汗をかく。

「中庭には花を見に来たのではない。セシリア嬢、あなたに会いに来た。」
「まあ!!嬉しい!!」
セシリアは目を輝かせる。
あまり手応えは感じられていなかったが、セシリアの望み通り進んでいるようだ。

「最近、不愉快なことが多くてな。」
「それは大変ですね。私で良かったらいつでも相談乗ります!」
「俺の大事な人の名誉を踏みにじるような噂を流そうと画策してる奴がいるんだ。俺はそいつを退学にしても、訴えてもいいと思ってる。
だが、俺の愛する人は穏便にすませたいと思ってる。俺はそれでは生ぬるいと思っているんだがな。」

セシリアは頭が真っ白になる中、ディアスはこんなに話す人だったのかと呑気にそんなことを考えた。

「最後の警告だ。俺たちの前に2度と現れるな。」
ディアスの目がセシリアを射抜く。彼の目には深い嫌悪がこもっていた。
ディアスは身を翻し去っていった。

セシリアは拳を握りしめた。

もう、手を出すことはできない。
それほどまでにディアスが深くシルヴィンのことを思っていたとは。

悔しさにセシリアは身を震わせた。



「シルのことは俺が守るから。」
「え~?急にどうしたの?僕はディーが思ってるより強いよ?」

シルヴィンはギュッと抱きついてくるディアスを抱きしめ返す。

「それでも。それでも守るから。」
「ありがとう。」

シルヴィンはディアスにキスした。

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