上 下
17 / 17

8月

しおりを挟む
「最近上の空だけどどうしたの?」
「え?そんなに分かりやすい?」
 放課後、青柳さんが話しかけてきた。今日は珍しく家の用事で黒瀬は先に帰っていた。
「ええ。
もしかして、黒瀬くんに告白でもされたの?」
「ええ!?どうしてそれを?」
「2人を見ていれば分かるわ。」
青柳さんはクスクス笑ってふたりともわかりやすすぎるのよ、と言った。

「でも受け入れるかどうか悩んでる。」
「どうして?あんなに素敵な人なかなかいないと思うけど。」
「俺には勿体なさすぎる。あいつにはもっと可愛くて、優しくて、しっかりしてて、、、そういう人がいいと思うんだ。」
「それじゃあ、黒瀬くんのことを恋愛対象として見れないとか、他に好きな人がいるってことじゃないのね?」
「う、うん。それはそうだけど、」
「じゃあもし私が黒瀬くんと付き合ってもいいんでしょ。私は可愛いし、優しいし、しっかり者だし。」
「え!それはダメだよ」
「なんで?」
「だって、、」
 ダメじゃない。黒瀬には青柳さんはぴったりだ。青柳さんは非の打ち所がないし、きっとみんなが憧れるようなカップルになる。でも、嫌だと思ってしまう。

「答えは出てるじゃない。本当は自分でも分かってるんでしょ。」
「うん。俺やっぱり黒瀬のこと好きだ。周りにどう思われようと、黒瀬には相応しくなくとも、やっぱり自分の気持ちに嘘はつけないな。」

「ちょっと待ってよ!!」
 バンっとドアを開けて桃瀬さんが入ってきた。
「れいのことが好きってどういうこと?
鈴木くん、夢乃に協力してくれるって言ったよね?」
「桃瀬さん、、、ごめん!聞いた通りなんだ。俺も黒瀬のことが好きだ。だから協力はできない。本当にごめん、、」
「ふざけないでよ!!裏切りよ!
鈴木くんはれいには相応しくない!何より鈴木くんは男でしょ!?変だよ!変!おかしいもん!」
「それは桃瀬さんが決めることじゃないわ。黒瀬くんが決めることよ。」
「そんなの、そんなことわかってるよ!
でも、そんなの、、勝ち目ないじゃん、、、
親友で満足できないの?恋人の座まで奪うつもりなの?そうやって私かられいを奪うつもりなの?」
「桃瀬さん、、、」
「あんたと出会ってから、れいは私と遊ばなくなった。いつも一緒にいたのに、私がいたはずの立ち位置にあんたがいた。それから鈴木くんのことが憎くて、憎くて、、」
 桃瀬さんはグッと下唇を噛む。

「黒瀬は桃瀬さんが思ってる以上に桃瀬さんのこと大切にしてるよ。」
「慰めのつもり?」
「ちがう。本当にそうなんだ。黒瀬が桃瀬さん以外の女子と喋ってるところ見ないし、いつも桃瀬さんのこと気にかけてる。
それは桃瀬さんもわかってるんじゃない?」
「それはそうだけど、、」
 桃瀬さんは俯いた。
「桃瀬さんの気持ちはわかった。だけど、俺も決めたんだ。俺、黒瀬を諦めない。諦めたくないから、桃瀬さんには協力できない。ごめん。本当に黒瀬のことが好きなんだ。」

「本気の人を邪魔するほど夢乃は性格悪くないから。」
 桃瀬さんが俯いたまま言った。
「鈴木くんが生半可な気持ちで、ちょっとれいに告白されただけで、気がころっと変わっちゃったんじゃないかって、それだけが本当に嫌だったの。鈴木くんが流されてじゃなくて、本当にれいのことが好きなら夢乃に邪魔する資格なんてない。」
 桃瀬さんはこちらをまっすぐ見つめた。
「桃瀬さん、、ありがとう!」
「でも応援なんてしないからね!」
「そういえばなんで告白されたって知ってるの?」
 桃瀬さんは冷ややかな目でこちらを見てはあっとため息をついた。


「黒瀬、今から会えない?」
俺は黒瀬に電話をかけた。
「今?いいけど、、」

「ごめん。こんな遅くに。」
「大丈夫だよ。もう夕飯も食べ終わってたし。
どうしたの?急に公園になんて呼び出して。」
「実は話したいことがあるんだ。

俺も黒瀬のことが好きです。俺と付き合ってください。」
心臓がドキドキなる。俺はぎゅっと目を瞑った。

「秋人!!!」
黒瀬が抱きついてきた。
「うわっ!ちょっと!倒れるって!」
「秋人!本当?本当に?」
「本当だよ。俺、お前のことが好きなんだ。」
 黒瀬の目をしっかりと見る。
「夢じゃないよね。」
「夢でいいの?」
「冗談だよ!夢だとしても醒めないでほしい。ずっとこのまま抱きしめてたい。」
「恥ずかしいこと言うなよ!」
「真っ赤になってる秋人かわいい。」
黒瀬が微笑む。

「本当に俺と付き合ってくれるの?」
「もちろんだよ。」
「俺男だけどいいの?」
「黒瀬こそ、俺男なのにいいの?」
「俺は秋人がいいんだ」
「俺も黒瀬がいいの」

 夜の公園に2人の笑い声がこだました。




 本当はもう少し長くする予定だったのですが、プライベートが忙しくなってきてしまったので残念ではありますが、一旦完結とさせていただきます。
 今まで読んでくださった方、お気に入りに登録してくださった方、本当にありがとうございました。初めて小説を書いたのですが、楽しめたのは皆様のおかげです。
 また再開する可能性もありますので、再開した場合はまた読んでいただけると嬉しいです。本当にありがとうございました。





しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ぽぽ
2023.02.03 ぽぽ

初めて書いたとは思えないほど素敵なストーリーでした!登場人物全員が魅力的で、特に青柳さんがクールで優しくめちゃくちゃ良い人や…と密かに推してました笑
最後も二人の幸せな姿が見れて良かったです。素敵な小説ありがとうございました!これからも応援してます!

白兪
2023.02.05 白兪

本当にありがとうございます!やっぱり不良消化だったのが心残りで、新しく小説を書き始めました。よろしければ、そちらも読んでくださると嬉しいです!
読んでくださって本当にありがとうございました。

解除

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。