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8月

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「秋人、スイーツバイキング行きたいって言ってたよね。今から行こうよ。」
「行きたい!」
 何を隠そう俺は大の甘党なのだ。
 何個食べれるかなと息巻いてると黒瀬がふっと笑って
「可愛い。」
と囁いた。
 甘い。こんな甘い状態でスイーツバイキングなんて胸焼けを起こすぞ。


 ケーキをパクパクと食べる。
「ん!このチーズケーキ美味しい!」
「じゃあ俺も後で取ってこようかな。」
 ショートケーキに手を伸ばす。普段はあんまりショートケーキは食べないのだが、今日は手にとる。普段は食べないものも食べようと思えるのは、スイーツバイキングならではだ。
「おいしい!」
 俺は目を輝かせる。今までチーズケーキばっかり食べてたけど、ショートケーキもいいな。イチゴの酸味とクリームの甘さがちょうどいい。

「口の端にクリームついてるよ。」
黒瀬は俺の口を親指で拭うとそのままぺろっと舐めた。
「甘いね。」
 俺はボンっと音を立てて赤くなったに違いない。甘い。甘すぎる。さっきからずっと甘すぎる。
 こんな王道展開になったら恥ずかしすぎると思って慎重にケーキを食べすすめていたはずなのに。結局王道展開になってしまった。さすが主人公といったところか。でも、俺の心臓がもたないならやめて欲しい!
「そんな恥ずいことするのやめろよ。
今までとキャラ変わってるぞ。」
「言ったでしょ。好きになってもらえるよう頑張るって。」
 そんなこと言われたら何も言い返せない。俺は思考を放棄して目の前のケーキに集中した。

「お腹いっぱい!しばらく生クリームは見たくもない」
「秋人、ケーキ10個も食べてたからな。」
「程よい量が1番いいんだって気づいたよ、、」
 話をしているうちに俺の家の前まで着く。
「送ってくれてありがとう。じゃあまた明日な!」
「秋人待って!」
黒瀬がぎゅっと抱きしめてくる。
「また明日迎えにくるから。」
「そっか!じゃあな!ばいばい!」
 俺は黒瀬の顔も見れずに玄関へと駆け込んだ。
 しばらくこんな状態が続くのだろうか。俺の心臓はもう耐えられそうにない。


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