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8月

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「黒瀬!昨日は、、、」
「あぁ、おはよう。
昨日は悪かったよ。あれから冷静になったんだ。俺の視野が狭くなってたんだと思う。迷惑かけてごめん。」
「いや!違う!俺が、」
「これからは適切な距離感でいこうと思う。俺たちはずっと一緒にいすぎたんだよ。」
「黒瀬、、、」
 じゃあ補修の準備するから、と黒瀬はスタスタと自分の席に着く。俺はその後ろ姿を何もできずに眺めていた。


「黒瀬!帰ろう」
3限目が終わり夏季補修が終わった。俺は黒瀬の元に駆け寄った。
「ごめん!この後一緒にご飯食べようって夢乃から誘われてるんだ。」
「え、」
「れい!はやく行こ!もうお腹ぺこぺこだよ~」
「はいはい。ちょっと待っててな」
 黒瀬が桃瀬さんに笑いかける。
「じゃあ俺らもう行くから。また明日。」
「あ、黒瀬、、、また明日」
 桃瀬さんが俺の横を通る時、ありがとね、と呟いた。


 帰り道を1人で歩く。今頃桃瀬さんと楽しく食事でもしているのだろうか、そんなことを考えると胸がズキズキと痛んだ。
 俺はイヤホンをつけて家に向かった。

 次の日の朝。学校に登校する。いつもなら黒瀬が迎えにきていた。昨日はケンカしていたしと思って気にもならなかったが、今日もいないとなると寂しい。
 登下校にかかる20分間、黒瀬といろんな話をしていた。バスケ部のこと、先生のこと、漫画のこと。いつも20分間なんてあっという間に過ぎ去っていった。
 でも今日は1人だ。ゲームのストーリー通り黒瀬は桃瀬さんと登校しているのだろうか。
 俺には関係ないことだ。
 それでも頭の中には2人の姿が思い浮かぶ。
 関係ないけど気になる。気になるけど気にしてはダメだ。協力すると言ったのは俺なんだ。これで良かったんだ。

 ふと最近できたカフェに目が入る。一緒に行こうと約束していた。あの約束はまだ有効なのだろうか。頭をブンブンと振る。
 俺はまた、イヤホンをつけた。


 朝黒瀬に会い、挨拶をする。いつもならもっとスキンシップが激しいはずなのに今日は手も触れ合わない。いつもは鬱陶しいくらいベタベタしていたはずなのに。

 補修3日目。黒瀬の顔を見るたびに辛くなる。距離を置くことを選んだのは自分なのに、これを望んだのは俺の方なのに。もうどうしたらいいのか分からない。
 俺は俺の気持ちを優先すればいいのだろうか、それとも桃瀬さんにこのまま協力するべきなのか。


「黒瀬!今日も一緒に帰れない?」
「ごめん。俺用事あって急ぐから、、」
「待って!!!」
 先を行こうとする黒瀬の手を掴む。

「待って、黒瀬、、、
ごめん、俺が間違ってた。俺、お前のそばにいないとダメなんだ。黒瀬がいないと毎日が楽しくない。黒瀬がいないと何をする気も起きない。
お願い、黒瀬、、、。
俺のそばにいて。」




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