8 / 17
7月
しおりを挟む
side 桃瀬夢乃
れいは変わってしまったと桃瀬夢乃は感じていた。
もともとは明るく人当たりのいい人だったからいつもクラスの人気者だった。それは今でも変わらないのだが、特定の人としかいないようになった。そうなったのは中学にあがってからだっただろうか。
中学に上がって少し経った頃、黒瀬玲は冷たいオーラを放っていた。人を拒絶するような雰囲気を放っていた。桃瀬はすぐに気づき、どうしたの?と声をかけたが、めぼしい返事は返って来なかった。それには周りの人は気づいていないようだった。いつも通りの優しく明るい黒瀬玲だと信じて疑わなかった。
どうしようと考えあぐねているうちに黒瀬は元気になっていた。そして、隣には鈴木秋人がいた。
黒瀬玲はみんなの人気者だ。だが、秋人の前でしか本当の笑顔を見せない。作り笑いばかりだ。
黒瀬玲はみんなに好かれている。だが、彼が信用している人物は鈴木秋人だけだ。
桃瀬はそう感じるようになった。
今までは桃瀬を優先してくれていたはずなのに。
桃瀬は不安になった。
前までは黒瀬玲とは仲良しの幼馴染だと言いきることができたが、今はわからない。仲良くしたいと思ってるのは自分だけなのではないだろうか。
昔はよく遊んでいた。家が隣で必然的に仲良くなった。
「ちょっと!私のぬいぐるみ返してよ!
それお誕生日に買ってもらったやつなの」
公園でぬいぐるみを持って遊んでいると、近所の男の子たちに奪われた。
「すぐ泣く~!やーい泣き虫~!」
男の子たちの中でボスみたいな子が夢乃をからかってくる。
「それ、大事なやつなのに、、」
涙でうまく話せない。
「やめろよ。」
その時聞き慣れた声が耳に入ってきた。
「返してやれよ。お前がそんな可愛いぬいぐるみ持ってても使わないだろ。それともそれで遊びたかったのか?夢乃は優しいからいえば貸してくれるぞ。」
「そんなわけねぇだろ!こんなもんいらねぇよ!!」
ポイっとぬいぐるみを投げる。れいはそれをキャッチして夢乃に渡す。
「ありがと、、、」
れいはニカっと笑った。
あの時から黒瀬玲は桃瀬夢乃のヒーローなのだ。
懐かしい記憶を思い出して、胸が苦しくなる。今ではめっきり減ってしまった会話。全ては鈴木秋人のせいだ。鈴木秋人がれいを独り占めするから。
鈴木秋人さえいなければ、何度そう思ったことだろうか。
鈴木秋人さえいなければ、あの笑顔もあの声もあの視線も、全て自分のものなのに。
桃瀬は気づいたら、鈴木秋人のカバンについていたキーホルダーを奪ってしまっていた。黒瀬玲とお揃いで買ったと言っていたバスケットボールのキーホルダー。これが目に入るたび桃瀬はイラついた。
こんなことをしてはいけないなんて事は桃瀬夢乃も充分に分かっていた。でもとめられずにいた。
夢乃はこの醜い感情がもう恋なのか分からなくなっていた。
ただ黒瀬を独占したいという気持ちだけが沸々と湧いていた。
れいは変わってしまったと桃瀬夢乃は感じていた。
もともとは明るく人当たりのいい人だったからいつもクラスの人気者だった。それは今でも変わらないのだが、特定の人としかいないようになった。そうなったのは中学にあがってからだっただろうか。
中学に上がって少し経った頃、黒瀬玲は冷たいオーラを放っていた。人を拒絶するような雰囲気を放っていた。桃瀬はすぐに気づき、どうしたの?と声をかけたが、めぼしい返事は返って来なかった。それには周りの人は気づいていないようだった。いつも通りの優しく明るい黒瀬玲だと信じて疑わなかった。
どうしようと考えあぐねているうちに黒瀬は元気になっていた。そして、隣には鈴木秋人がいた。
黒瀬玲はみんなの人気者だ。だが、秋人の前でしか本当の笑顔を見せない。作り笑いばかりだ。
黒瀬玲はみんなに好かれている。だが、彼が信用している人物は鈴木秋人だけだ。
桃瀬はそう感じるようになった。
今までは桃瀬を優先してくれていたはずなのに。
桃瀬は不安になった。
前までは黒瀬玲とは仲良しの幼馴染だと言いきることができたが、今はわからない。仲良くしたいと思ってるのは自分だけなのではないだろうか。
昔はよく遊んでいた。家が隣で必然的に仲良くなった。
「ちょっと!私のぬいぐるみ返してよ!
それお誕生日に買ってもらったやつなの」
公園でぬいぐるみを持って遊んでいると、近所の男の子たちに奪われた。
「すぐ泣く~!やーい泣き虫~!」
男の子たちの中でボスみたいな子が夢乃をからかってくる。
「それ、大事なやつなのに、、」
涙でうまく話せない。
「やめろよ。」
その時聞き慣れた声が耳に入ってきた。
「返してやれよ。お前がそんな可愛いぬいぐるみ持ってても使わないだろ。それともそれで遊びたかったのか?夢乃は優しいからいえば貸してくれるぞ。」
「そんなわけねぇだろ!こんなもんいらねぇよ!!」
ポイっとぬいぐるみを投げる。れいはそれをキャッチして夢乃に渡す。
「ありがと、、、」
れいはニカっと笑った。
あの時から黒瀬玲は桃瀬夢乃のヒーローなのだ。
懐かしい記憶を思い出して、胸が苦しくなる。今ではめっきり減ってしまった会話。全ては鈴木秋人のせいだ。鈴木秋人がれいを独り占めするから。
鈴木秋人さえいなければ、何度そう思ったことだろうか。
鈴木秋人さえいなければ、あの笑顔もあの声もあの視線も、全て自分のものなのに。
桃瀬は気づいたら、鈴木秋人のカバンについていたキーホルダーを奪ってしまっていた。黒瀬玲とお揃いで買ったと言っていたバスケットボールのキーホルダー。これが目に入るたび桃瀬はイラついた。
こんなことをしてはいけないなんて事は桃瀬夢乃も充分に分かっていた。でもとめられずにいた。
夢乃はこの醜い感情がもう恋なのか分からなくなっていた。
ただ黒瀬を独占したいという気持ちだけが沸々と湧いていた。
119
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説


平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる