ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪

文字の大きさ
上 下
4 / 17

5月

しおりを挟む
「秋人ー。図書館行くの付き合ってくれない?」
「いいよー」
 おっ次の出会いイベントか。最後のヒロインは2年図書委員の紫苑英理奈。お姉さん系で、悩む黒瀬に色々とアドバイスしてくれる。その包容力と優しさに黒瀬は惚れていくのだ。2人きりの図書館で楽しそうに話しているスチルは綺麗だった。

「俺、借りたい本決まったから借りてくるわ。」
黒瀬が貸し出しカウンターに向かう。
「1年3組黒瀬です。」
「はい。黒瀬君ねー。
あ!アガサクリスティ読むの?」
「はい。ミステリが好きなので。」
「今度江戸川乱歩読んだことある?あれも面白いわよ。」
 話が盛り上がっているようだ。順調順調。
 黒瀬はあの5人の中で一体誰を選ぶんだろう。どの子も魅力的だから全力で応援したい。
「秋人!」
「えっ!なに?」
「なに?じゃないよ。最近考え事多すぎ。なんかあった?」
「なんでもない!なんでもあってもいいことだから何ともない!」
「最近ずっと何でもないばっかだな。隠し事は無しだからな!」


 5月ももう後半。もう梅雨に差し掛かり、ジメジメとした天気が続いている。
 今日はバスケの練習試合だ。相手は強豪校。インターハイ常連校だ。
「最後のスタメンの1人だが、、、黒瀬!お前に頼もうと思ってる。1年で責任は重いと思うができるか?」
「はい!やらせてください!」
「やったな!黒瀬!!一年の中でお前が1番上手いもん。」
 黒瀬は嬉しそうにはにかむ。
 黒瀬お前ならチームに貢献できる。なんてったって今日はあの桃瀬さんが応援に来てるからな!!

 今日の試合は実はイベントのひとつだ。
高校初の大舞台に幼馴染の桃瀬夢乃が応援に来る。試合後半。桃瀬の必死の応援の甲斐もあって黒瀬はスリーポイントシュートを決めるのだ。

 試合のブザーがなる。
「れい~!頑張れ~!!」
桃瀬さんの声が体育館に響く。羨ましい。こんな可愛い幼馴染に応援されたら、スリーポイントでも何でも決められちゃいそうだ。

 試合中盤。相手が強豪ということもあって、点差が大きく開いて負けていた。メンバーの顔には焦りが見える。今俺にできることは応援しかない。全力で応援しよう。
「頑張れー!!黒瀬ー!!」
黒瀬に俺の声が届いたのか、黒瀬は相手チームからボールを奪い、そのままシュートした。

ガコンッッ

「入ったーー!スリーポイントシュートだ!!黒瀬ナイス!」
黒瀬はこちらに向かって満面の笑みでグッと親指を立てた。黒瀬に俺の応援が届いたってことか?
 黒瀬がシュートを決めたからだろうか、この試合の興奮のせいだろうか、黒瀬がいつもより輝いて見える。鼓動が大きくなるのは、何のせいなのだろうか。
「れい!!やったね!かっこよかった!」
桃瀬さんの声ではっと我に帰る。黒瀬は桃瀬さんの応援でシュートを決めたのだ。俺の応援じゃない、桃瀬さんの、だ。

 試合の終了を告げるブザーがなる。結果は俺たちの負け。しかし、強豪校相手にせめぎ合い、とてもいい試合だったと思う。黒瀬もあのあとも何回かシュートを決めていた。
 帰り道、桃瀬さんが俺たちの方に向かって走ってくる。
「れい!大活躍だったね。私の応援届いてた?」
「ああ。聞こえたよ。夢乃の声は高くて嫌でも耳に入るからな。」
「もうっ!ひどい!私一生懸命応援したのに!」
「冗談だよ、ごめんごめん。応援ありがとな。」

 俺も応援したのに。俺何でこんなこと考えてるんだ。ヒロインたちとの恋を応援するって決めたのに。可愛い桃瀬さんに応援されている黒瀬が羨ましくなったのか?心と頭が一致せず、ぐるぐると思考を巡らす。
「秋人も応援ありがとな。お前の応援のおかげで最初のスリポ決めれたよ。」
 その一言で俺のモヤモヤは晴れて有頂天になっているのだから、俺は単純だ。でもどうしてこんなことを考えてしまうのかはわからなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

処理中です...