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楠涼夜は遠慮がない

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涼夜と2人で電車に乗っていると、突然声をかけられた。

「よっ!同じ電車だったんだな!」

昨日仲良くなったばかりのそうちゃんだった。

「…え!お前ら、そういう関係だったの!?」

そうちゃんが目を丸くして驚く。

「ん?なんのこと?」
「いや、手繋いでるじゃん!しかも恋人繋ぎ!」
「あっ!」

あまりにも当たり前すぎて何のことだかわからなかった。
小学生の頃から外ではいつも手を繋いでいたし、中学生になってからも登下校は手を繋いでいた。

慌てて手を振り解こうとすると、涼夜にさらに強く握られてしまった。

「俺たちは運命の番だからね」

涼夜は平気な顔をして嘘をつく。
本物の運命の番の白浜しらはま雪都ゆきとにはもう出会っているのに。

「あぁ~!幹斗が涼夜の運命の番だったんだ!なんか納得かも。2人はしっくりくるっていうか」

そんなことを言われたのは初めてである。
表立っては誰も言わなかったが、いつも、不釣り合いだとか、勿体無いだとか言われてきた。

「そう言ってくれるなんて嬉しいよ。ありがとう。結婚式呼ぶね」
「もう結婚の話!?涼夜、気が早くねぇか?」

そうちゃんは冗談だと思って笑っているが、俺にはこれが冗談じゃないことはわかっていた。
しかし、結婚なんてしないなんて言ってもまた揉めて面倒なことになるだけだ。

「俺さ、アルファ性なんだけど、普通の人より弱くて。だから今まで気づかなかったけど、言われてみたら、確かに幹斗から涼夜のマーキングの匂いがする。
俺みたいな弱弱アルファにも分かるなんて、相当強いマーキングだな!」

俺は目を見開く。

「えぇ?マーキング?なにそれ!そんなことしてたの?」
「黙ってやっててごめんね。でも幹斗を他のアルファに取られたくなくて」
「俺を狙うアルファなんていねぇよ!」
「いや、幹斗みたいな可愛くて優しくて明るくて魅力的なオメガを狙わない人なんていないよ」

だって俺、オメガじゃなくてベータだし。

俺は小さくため息をついた。


「やっぱさ、ずっと一緒にいるの?」

そうちゃんが興味津々に聞く。

「んー、寝る時以外は基本一緒にいるかもな」
「時々、お互いの家にお泊まりしたりもするしね」
「お泊まり!いいなー!楽しそう」
「今度、そうちゃんも俺の家遊びに来いよ。ゲームしようぜ」
「いいね!」
「幹斗、お泊まりは禁止ね」
「ええー!何で。大人数でお泊まり会した方が修学旅行みたいで楽しいよ」
「ダメ。」
「あははっ、それくらいの気はきくよ。ちゃんと暗くなる前に帰ります」
「えぇー?お泊まり会したかったのに」
「だーめ」

涼夜が2回ダメと言ったら、もうおねだりはしてはダメだ。仏の顔も三度までなんて言うが、涼夜の場合、3回目から少し不機嫌になる。他の人は気づいていないが。

「運命の番って、やっぱりビビッときて分かっちゃうものなの?」

俺は何とも言えず、黙りこくった。

「まあ、そんなものかな」

涼夜は微笑んでそう言ったが、涼夜の考えが読めなかった。


お昼休み、涼夜とそうちゃんと雪都と食べる。

「これ、幹斗の好きなかぼちゃコロッケだ。
幹斗、口開けて」

俺は大きく口を開けると、涼夜はかぼちゃコロッケを俺の口に運ぶ。

「うまい」
「良かった」

「お前らいつもこんな感じなの?」
「えっ?いや、中学校は給食だったけど」
「でも家とかではいつもこんな感じだよね。俺の両親忙しいから、よく幹斗の家にお邪魔させてもらってるんだ」


雪都がブスッとした表情を見せる。
なにかフォローをいれなくては。

「あっ!雪都の弁当の唐揚げ、涼夜好きだったよな!」
「え、そうなの?えっと、よかったら食べる?」

雪都は途端に目を輝かせる。
大きい瞳がさらに大きくなってとても可愛い。

「いや、大丈夫だよ。幹斗の卵焼きもらうから」
「うわっ!俺の卵焼き!今日のはミョウガが入ってるやつだったのに!」
「美味しい」

涼夜は嬉しそうに微笑む。

ミョウガ入りの卵焼きは絶品なんだぞ!
俺の大好物なのに!

俺はまた雪都の方から鋭い視線を感じて、また反省するのだった。
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