偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪

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楠涼夜は美しい

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いつものように涼夜と登校する。しかし、今日は多くの視線を感じていた。いつもは涼夜にしか視線は集まらないというのに。

「ヤマちゃん、おはよー」
「おい!お前、俺言ったよな?」
「ん?何のこと?」
「お前がベータだって人には言うなって!」
「俺、誰にも言ってないけど…。
あ!そういえば園田さんにバレたんだった。職員室で俺の書類見たらしい。最悪だよなー」
「お前、それ広まってるぞ!」
「マジ?」
「皆んな、お前が運命の番だからって自分を納得させてたのに、お前がただの平凡なベータだって分かって闘志燃やしてるぞ」
「え…。俺いじめられちゃったり…?」
「そんなことはないとは思うけど。
まあ、女子からは嫌われたって思った方がいいな」
「えぇ~!?嫌だよ!何で俺がこんな目に遭うんだよ」
「仕方ねぇだろ。幹斗は楠くんのオキニなんだから」
「そんな…」
「特に園田さんはお前に恨み募らせてるらしいぜ。気をつけろよ」

気をつけるってどう気をつけるんだよ。

俺は文句を言いたかったが、無関係のヤマちゃんに八つ当たりしても意味はない。

女子が皆んな俺をライバル視していると知ってからは、視線が全て鋭いもののように感じる。

あれもこれも全部涼夜がモテすぎるのが悪いんだ!


「幹斗、古典辞書貸して」

普段ならすぐに貸すところだが、コイツのせいで俺は苦労しているのだと思うと困らせたい気持ちになった。

「えぇ~?どうしよっかな?」

貸し渋る俺に涼夜は僅かに眉を顰める。

「幹斗、俺なんかしちゃっ…」

「楠くん!あの、私でよければ貸そうか?」

俺は目を丸くした。普段ならこんなことはないのに。
俺がベータだと分かって女子達は本格的に涼夜にアピールしてるのだろうか。

「貸してくれてありがとう。次の時間に返しにくるね、佐藤さん」
「う、うん!」

佐藤さんは頬を赤くする。

後ろで佐藤さんの友達らしき人がキャーキャー言っている。

「よかったね、あかり!」
「まさか名前覚えられてるなんて…!」
「ワンチャンあるよ!」
「そうかな…?頑張ってみようかな…」

「えぇ~?ありえなくなぁい?
ちょっと苗字知られただけで勘違いする女子って痛いよね~?」
「わかる~!たったそれだけのことで勘違いするなんて」

園田さん達のグループが牽制にかかる。

「涼夜くんも大変だなぁ。ちょっと優しくしただけでブスに好かれちゃうんだもん!」
「あはははっ!!」

怖っ!
女子怖っ!
恋する乙女って怖すぎ!
俺、これからあんなのを相手にしていかなきゃダメなわけ…?

無理無理無理無理…!!

俺別に涼夜のこと好きじゃねぇし!
ベータの女の子と普通の恋愛できれば満足だから!

「幹斗、一緒に部活動見学行こう」
「おう!ちょっと待ってー」

涼夜はさらっと手を繋いでくる。

「おい!やめろ」
「何で?」
「前に言ったよな?学校内ではこう言うこと禁止って。
あと、これからは登下校中も禁止な」
「えぇ?どうして?無理だよ。耐えられない」
「お互い距離を置いた方がいい。俺のためにな!」

このままじゃ女子から集団リンチだ。

その後もしばらく涼夜は対抗していたが、俺は頑なな態度を崩さなかった。
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