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楠涼夜はとてもモテる
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「ねぇ、ちょっといい?」
そう言って話しかけてきたのは、園田さんだ。
園田さんは有名人だ。顔が可愛くて、明るくて、そして悪名高い。
少しタレ目で小動物のような印象を与える美貌とは対照的に、性格は頑固でキツいらしい。
入学して1週間足らずでクラスメイトと喧嘩して問題になっていた。
そんな園田さんが、俺に何の用だろう。
「えっと、何の用?」
「ここでは話したくないから、ついてきて」
園田さんは心なしか睨みつけてきているように感じる。
何かやってしまったのだろうか。
人気のない渡り廊下、学年で1、2位を争う美女と2人きり。
しかし、少しも喜ばしくない。
「町田くん、だっけ?」
「…中町です」
「は?どっちでもいいんだけど。ウザ。
はぁ。あんたさ、オメガじゃないでしょ」
俺は目を丸くして驚く。
ヤマちゃんが言うには、俺がベータだと分かると攻撃してくる奴もいるから、隠し切った方がいいらしい。
俺は慌てて否定する。
「いや、オメガだけど?」
「はぁ?そうやって皆んなのこと騙してたわけ?マジうざい」
「本当にオメガで…」
「職員室呼び出された時に、あんたの書類が見えたの。そこにはβって書いてあったけど?」
「み、見間違いだろ」
「私が間違ってるって言いたいわけ?」
「いや!そうじゃないけど…!」
園田さんは分かりやすく不機嫌になって舌打ちをする。
「オメガじゃない、女じゃない、対して美しくもない、平凡なあんたが何で涼夜くんの恋人みたいなことになってるわけ?」
「俺だって分かんないよ!涼夜には言ってるんだけど…」
「涼夜くんが求めてくるから仕方なく、って?ウザっ。自慢なの?」
「ち、違うよ!」
小学校の頃、女子はこんなに怖くなかった。皆んな優しかった。
中学校って怖い。
「とにかく、あんた、涼夜くんの恋人ヅラすんのやめて?」
俺は黙ってこくこくと頷いた。
すると、園田さんは初めて笑みを見せた。
「なんかぁ、怖いこと言っちゃってぇ、ごめんね?誰にも言わないでね♡」
俺は園田さんの変わりようにまた驚いて、何も言えずに頷いた。
放課後、誰も居ない教室で涼夜と勉強していると、園田さんともう1人女子が現れた。
「涼夜くん、お勉強中なのぉ?私たちも混じってもいい?」
園田さんは昨日とはまるで別人だ。
「うーん、幹斗に分からないところを教えようと思ってたんだけど…」
「俺のことは気にすんなよ!そ、園田さん達も一緒にしよう!」
「幹斗がそう言うなら」
「う~ん、ここ分かんなぁい」
「ここはね、この公式を使って…」
涼夜に優しく教えてもらって園田さんはとても嬉しそうだ。
「涼夜くん、すごい!教えるのも上手なんて!…好きだなぁ」
え?今告った?
涼夜の顔をチラリと見るが表情は変わっていない。
「幹斗、分からないところない?」
「え、いや!ない!俺のことは気にせず園田さんのこと気にかけてあげて!」
園田さんのこちらを見る目が痛い。
「ならいいけど…。分からないところがあったらすぐ言うんだよ」
「俺、涼夜のお陰で結構勉強できるんだぞ!」
「じゃあ、中町くん、私に教えてもらってもいい?」
園田さんの友達が話しかける。
彼女は、トイレに行くのも、体育の時間に長距離を走るのも、園田さんと一緒だ。
「もちろん!」
園田さんに俺の気でも引いておけと言われているのだろうか。
閉校のチャイムが鳴る。
「幹斗、帰ろっか」
「涼夜くん達って、北岡小学校出身だよね?方向近いから一緒に帰りたいな♡」
園田さんの友達もそれいいね、と賛同している。
「申し訳ないけど、2人で帰りたいん…」
「いいね!一緒に帰ろう!」
断ろうとしている涼夜を慌てて黙らせる。
涼夜がこちらを凝視しているのが分かる。
すまん!涼夜!俺の平穏のためなんだ!
分かれ道まで園田さんと一緒に帰る。
涼夜はにこやかだが、不機嫌になっているとわかってしまう。
「幹斗。園田さんに何か言われた?」
「ううん!別に、何も。」
「ふーん…。明日から学校じゃなくて俺の部屋で勉強しよっか」
「え?」
「やっぱり、俺、幹斗と2人きりで勉強したいから。」
真っ直ぐな言葉でそんなことを言われては断ることなどできない。
俺はうん、と返事した。
家に帰ると、メールが来ていた。
“一緒に帰ることになったんだから、2人きりにさせてよ。気が回らない男ね”
園田さんからだ。
俺は“ごめん”とメールを打って、いやいや、何でこんな下手に出てるんだと自己嫌悪した。
学校も終わり、校門を通り過ぎようとした時、
「涼夜くん!」
園田さんに呼び止められた。
「どうかした?」
涼夜は微笑んだ。
「あの、今日はお勉強会しないのぉ?」
「うん。家で勉強しようと思って。」
「そっかぁ。残念だなぁ。」
「じゃ、僕らはここで」
「待って!お家に帰るんでしょ?一緒に帰りたいな♡」
「ごめんね、2人で帰りたいんだ」
「は?」
園田さんの口から想像もできないような低い声が出る。
園田さんがキッと俺を睨みつける。
完全に逆恨みだ。
「じゃあ幹斗行こっか」
涼夜が俺の手を握りしめて引っ張って行く。
振りほどこうとしたが、さらに強く握られてしまった。
園田さんの視線が突き刺さって痛かった。
そう言って話しかけてきたのは、園田さんだ。
園田さんは有名人だ。顔が可愛くて、明るくて、そして悪名高い。
少しタレ目で小動物のような印象を与える美貌とは対照的に、性格は頑固でキツいらしい。
入学して1週間足らずでクラスメイトと喧嘩して問題になっていた。
そんな園田さんが、俺に何の用だろう。
「えっと、何の用?」
「ここでは話したくないから、ついてきて」
園田さんは心なしか睨みつけてきているように感じる。
何かやってしまったのだろうか。
人気のない渡り廊下、学年で1、2位を争う美女と2人きり。
しかし、少しも喜ばしくない。
「町田くん、だっけ?」
「…中町です」
「は?どっちでもいいんだけど。ウザ。
はぁ。あんたさ、オメガじゃないでしょ」
俺は目を丸くして驚く。
ヤマちゃんが言うには、俺がベータだと分かると攻撃してくる奴もいるから、隠し切った方がいいらしい。
俺は慌てて否定する。
「いや、オメガだけど?」
「はぁ?そうやって皆んなのこと騙してたわけ?マジうざい」
「本当にオメガで…」
「職員室呼び出された時に、あんたの書類が見えたの。そこにはβって書いてあったけど?」
「み、見間違いだろ」
「私が間違ってるって言いたいわけ?」
「いや!そうじゃないけど…!」
園田さんは分かりやすく不機嫌になって舌打ちをする。
「オメガじゃない、女じゃない、対して美しくもない、平凡なあんたが何で涼夜くんの恋人みたいなことになってるわけ?」
「俺だって分かんないよ!涼夜には言ってるんだけど…」
「涼夜くんが求めてくるから仕方なく、って?ウザっ。自慢なの?」
「ち、違うよ!」
小学校の頃、女子はこんなに怖くなかった。皆んな優しかった。
中学校って怖い。
「とにかく、あんた、涼夜くんの恋人ヅラすんのやめて?」
俺は黙ってこくこくと頷いた。
すると、園田さんは初めて笑みを見せた。
「なんかぁ、怖いこと言っちゃってぇ、ごめんね?誰にも言わないでね♡」
俺は園田さんの変わりようにまた驚いて、何も言えずに頷いた。
放課後、誰も居ない教室で涼夜と勉強していると、園田さんともう1人女子が現れた。
「涼夜くん、お勉強中なのぉ?私たちも混じってもいい?」
園田さんは昨日とはまるで別人だ。
「うーん、幹斗に分からないところを教えようと思ってたんだけど…」
「俺のことは気にすんなよ!そ、園田さん達も一緒にしよう!」
「幹斗がそう言うなら」
「う~ん、ここ分かんなぁい」
「ここはね、この公式を使って…」
涼夜に優しく教えてもらって園田さんはとても嬉しそうだ。
「涼夜くん、すごい!教えるのも上手なんて!…好きだなぁ」
え?今告った?
涼夜の顔をチラリと見るが表情は変わっていない。
「幹斗、分からないところない?」
「え、いや!ない!俺のことは気にせず園田さんのこと気にかけてあげて!」
園田さんのこちらを見る目が痛い。
「ならいいけど…。分からないところがあったらすぐ言うんだよ」
「俺、涼夜のお陰で結構勉強できるんだぞ!」
「じゃあ、中町くん、私に教えてもらってもいい?」
園田さんの友達が話しかける。
彼女は、トイレに行くのも、体育の時間に長距離を走るのも、園田さんと一緒だ。
「もちろん!」
園田さんに俺の気でも引いておけと言われているのだろうか。
閉校のチャイムが鳴る。
「幹斗、帰ろっか」
「涼夜くん達って、北岡小学校出身だよね?方向近いから一緒に帰りたいな♡」
園田さんの友達もそれいいね、と賛同している。
「申し訳ないけど、2人で帰りたいん…」
「いいね!一緒に帰ろう!」
断ろうとしている涼夜を慌てて黙らせる。
涼夜がこちらを凝視しているのが分かる。
すまん!涼夜!俺の平穏のためなんだ!
分かれ道まで園田さんと一緒に帰る。
涼夜はにこやかだが、不機嫌になっているとわかってしまう。
「幹斗。園田さんに何か言われた?」
「ううん!別に、何も。」
「ふーん…。明日から学校じゃなくて俺の部屋で勉強しよっか」
「え?」
「やっぱり、俺、幹斗と2人きりで勉強したいから。」
真っ直ぐな言葉でそんなことを言われては断ることなどできない。
俺はうん、と返事した。
家に帰ると、メールが来ていた。
“一緒に帰ることになったんだから、2人きりにさせてよ。気が回らない男ね”
園田さんからだ。
俺は“ごめん”とメールを打って、いやいや、何でこんな下手に出てるんだと自己嫌悪した。
学校も終わり、校門を通り過ぎようとした時、
「涼夜くん!」
園田さんに呼び止められた。
「どうかした?」
涼夜は微笑んだ。
「あの、今日はお勉強会しないのぉ?」
「うん。家で勉強しようと思って。」
「そっかぁ。残念だなぁ。」
「じゃ、僕らはここで」
「待って!お家に帰るんでしょ?一緒に帰りたいな♡」
「ごめんね、2人で帰りたいんだ」
「は?」
園田さんの口から想像もできないような低い声が出る。
園田さんがキッと俺を睨みつける。
完全に逆恨みだ。
「じゃあ幹斗行こっか」
涼夜が俺の手を握りしめて引っ張って行く。
振りほどこうとしたが、さらに強く握られてしまった。
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