王子様から逃げられない!

白兪

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王妃教育が終わり、一息ついていると侍女が手紙を持ってきた。

「こちら、王太子殿下からです。」

開くと、桜が綺麗だから裏庭に来て欲しいとのことだった。

「桜…。もうそんな時期か」

ルシファーと出会って一年になるなんて時が経つのは早い。

「今すぐ行きます」

「私が案内いたしますね」

そう言われ、侍女について行くと、人気のない裏庭へ連れて行かれた。

「こんなところに桜なんて咲いているんですか?」

そう尋ねた瞬間、鈍器のようなもので頭を殴られた。



次に目を覚ますと馬車の中だった。

「…ここは…?…痛っ…!」

殴られたところがガンガンと痛む。

目の前にはナイフを持った筋肉質の男が座っていた。

「お前、俺に何をする気だ!?」

「黙れ。お嬢がお呼びだ。」

「お嬢…?」

こんなことをする女性など1人しか思いつかない。
彼女が怒っているのだ。

リリスはごくりと唾を飲み込んだ。


郊外の空き家に彼女はいた。

リリスは手足を拘束されて満足に動けない。

「あんたね…。よくもやってくれたわね」

「手紙で説明したじゃないか!作戦は失敗したって!でもルシファーは不問にするとおっしゃってくれたって!」

「それであんたは無事王妃になれるってわけね…。
ふざけないでよ!!」

声がキーンと響く。
ステファニーは正気を失ったように怒鳴り続ける。

「私が王妃になるのよ!私が1番偉いの!私が王妃に相応しいのよ!」

「でもルシファーは君を愛していない」

「そんなの、どうにでもなるわ。
邪魔なあんたさえいなくなればね。」

ステファニーが不敵に笑う。
悪い予感がよぎると同時に、喉元にナイフを突きつけられた。

「ちょっと待って。私のドレスが血に濡れたら大変でしょう?それにこんな野良猫の死に様なんて見たくもないわ」

ステファニーがゆっくりと近づく。

「それに…もっと痛ぶってから殺さないと。」

ステファニーの眼が昏く光る。

ふと思い浮かんだのはルシファーの姿だった。もっと早く、この世界を受け入れていたら不安にさせることもなかったのに。

ああ、ルシファーに会いたい。

ステファニーが俺を思いっきり蹴飛ばそうとする。

その時だった。

「リリス!!!!」

ルシファーが大勢の騎士を連れて現れた。

「お前たちの反逆の証拠はつかんでいる。抵抗はやめろ!」

「どうやってここが?」

ステファニーの顔には焦りが浮かんでいる。

「リリスは私のそばから離れられない。離れたとしても、追跡魔法がついてる」

(そう言えばあの束縛魔法があったな…。設定が変わって100メートル以内にしたみたいだけど)

「反逆の証拠は揃っている。大人しく降参するんだ」

「そんなこと言われて誰がそうすると思ってるのかしら?」

ステファニーは冥土の土産とでも言うように俺にナイフを突き立てようとした。
しかし、ナイフの刃は俺の体を貫通することはなかった。

「リリスには最高硬度のバリア魔法が貼られている。無駄だよ」

(いつのまにそんなものかけられていたんだ…?)

「本当に、ルシファー様って完璧ね。
だからこそ、私の結婚相手に相応しいのに!
私を愛してくれればそれで済む話なのに!」

「私の心にはリリスだけだ」

ルシファーがそう呟くと、ステファニーは突然気を失った。
きっとルシファーが魔法を使ったのだろう。
気づくと、周りの人々も制圧されていた。


「リリス!大丈夫?怪我はない?」

「うん…。ルシファー、本当にありがとう。
君が来てくれなかったら俺は死んでたと思うよ。
本当にありがとう」

「いいんだ。これで借りは返したってことで」

「借り…?」

「リリスが無事で本当に良かった。君は私の太陽だから」

「ふふっ。なんだそれ。大袈裟だなぁ」

「大袈裟じゃないよ。リリスは私の世界の全てだ。」

ルシファーは熱い眼差しでこちらを見つめる。

「どこに行ったって、必ず見つけ出すよ」

「もう、俺は王子様から逃げられないみたいだ」

そう笑うと、ルシファーはようやく安心したように微笑んだ。


2人の間を爽やかな風が通り過ぎて行き、桜の花を散らした。



ーー完ーー
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