19 / 19
17
しおりを挟む
王妃教育が終わり、一息ついていると侍女が手紙を持ってきた。
「こちら、王太子殿下からです。」
開くと、桜が綺麗だから裏庭に来て欲しいとのことだった。
「桜…。もうそんな時期か」
ルシファーと出会って一年になるなんて時が経つのは早い。
「今すぐ行きます」
「私が案内いたしますね」
そう言われ、侍女について行くと、人気のない裏庭へ連れて行かれた。
「こんなところに桜なんて咲いているんですか?」
そう尋ねた瞬間、鈍器のようなもので頭を殴られた。
次に目を覚ますと馬車の中だった。
「…ここは…?…痛っ…!」
殴られたところがガンガンと痛む。
目の前にはナイフを持った筋肉質の男が座っていた。
「お前、俺に何をする気だ!?」
「黙れ。お嬢がお呼びだ。」
「お嬢…?」
こんなことをする女性など1人しか思いつかない。
彼女が怒っているのだ。
リリスはごくりと唾を飲み込んだ。
郊外の空き家に彼女はいた。
リリスは手足を拘束されて満足に動けない。
「あんたね…。よくもやってくれたわね」
「手紙で説明したじゃないか!作戦は失敗したって!でもルシファーは不問にするとおっしゃってくれたって!」
「それであんたは無事王妃になれるってわけね…。
ふざけないでよ!!」
声がキーンと響く。
ステファニーは正気を失ったように怒鳴り続ける。
「私が王妃になるのよ!私が1番偉いの!私が王妃に相応しいのよ!」
「でもルシファーは君を愛していない」
「そんなの、どうにでもなるわ。
邪魔なあんたさえいなくなればね。」
ステファニーが不敵に笑う。
悪い予感がよぎると同時に、喉元にナイフを突きつけられた。
「ちょっと待って。私のドレスが血に濡れたら大変でしょう?それにこんな野良猫の死に様なんて見たくもないわ」
ステファニーがゆっくりと近づく。
「それに…もっと痛ぶってから殺さないと。」
ステファニーの眼が昏く光る。
ふと思い浮かんだのはルシファーの姿だった。もっと早く、この世界を受け入れていたら不安にさせることもなかったのに。
ああ、ルシファーに会いたい。
ステファニーが俺を思いっきり蹴飛ばそうとする。
その時だった。
「リリス!!!!」
ルシファーが大勢の騎士を連れて現れた。
「お前たちの反逆の証拠はつかんでいる。抵抗はやめろ!」
「どうやってここが?」
ステファニーの顔には焦りが浮かんでいる。
「リリスは私のそばから離れられない。離れたとしても、追跡魔法がついてる」
(そう言えばあの束縛魔法があったな…。設定が変わって100メートル以内にしたみたいだけど)
「反逆の証拠は揃っている。大人しく降参するんだ」
「そんなこと言われて誰がそうすると思ってるのかしら?」
ステファニーは冥土の土産とでも言うように俺にナイフを突き立てようとした。
しかし、ナイフの刃は俺の体を貫通することはなかった。
「リリスには最高硬度のバリア魔法が貼られている。無駄だよ」
(いつのまにそんなものかけられていたんだ…?)
「本当に、ルシファー様って完璧ね。
だからこそ、私の結婚相手に相応しいのに!
私を愛してくれればそれで済む話なのに!」
「私の心にはリリスだけだ」
ルシファーがそう呟くと、ステファニーは突然気を失った。
きっとルシファーが魔法を使ったのだろう。
気づくと、周りの人々も制圧されていた。
「リリス!大丈夫?怪我はない?」
「うん…。ルシファー、本当にありがとう。
君が来てくれなかったら俺は死んでたと思うよ。
本当にありがとう」
「いいんだ。これで借りは返したってことで」
「借り…?」
「リリスが無事で本当に良かった。君は私の太陽だから」
「ふふっ。なんだそれ。大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないよ。リリスは私の世界の全てだ。」
ルシファーは熱い眼差しでこちらを見つめる。
「どこに行ったって、必ず見つけ出すよ」
「もう、俺は王子様から逃げられないみたいだ」
そう笑うと、ルシファーはようやく安心したように微笑んだ。
2人の間を爽やかな風が通り過ぎて行き、桜の花を散らした。
ーー完ーー
「こちら、王太子殿下からです。」
開くと、桜が綺麗だから裏庭に来て欲しいとのことだった。
「桜…。もうそんな時期か」
ルシファーと出会って一年になるなんて時が経つのは早い。
「今すぐ行きます」
「私が案内いたしますね」
そう言われ、侍女について行くと、人気のない裏庭へ連れて行かれた。
「こんなところに桜なんて咲いているんですか?」
そう尋ねた瞬間、鈍器のようなもので頭を殴られた。
次に目を覚ますと馬車の中だった。
「…ここは…?…痛っ…!」
殴られたところがガンガンと痛む。
目の前にはナイフを持った筋肉質の男が座っていた。
「お前、俺に何をする気だ!?」
「黙れ。お嬢がお呼びだ。」
「お嬢…?」
こんなことをする女性など1人しか思いつかない。
彼女が怒っているのだ。
リリスはごくりと唾を飲み込んだ。
郊外の空き家に彼女はいた。
リリスは手足を拘束されて満足に動けない。
「あんたね…。よくもやってくれたわね」
「手紙で説明したじゃないか!作戦は失敗したって!でもルシファーは不問にするとおっしゃってくれたって!」
「それであんたは無事王妃になれるってわけね…。
ふざけないでよ!!」
声がキーンと響く。
ステファニーは正気を失ったように怒鳴り続ける。
「私が王妃になるのよ!私が1番偉いの!私が王妃に相応しいのよ!」
「でもルシファーは君を愛していない」
「そんなの、どうにでもなるわ。
邪魔なあんたさえいなくなればね。」
ステファニーが不敵に笑う。
悪い予感がよぎると同時に、喉元にナイフを突きつけられた。
「ちょっと待って。私のドレスが血に濡れたら大変でしょう?それにこんな野良猫の死に様なんて見たくもないわ」
ステファニーがゆっくりと近づく。
「それに…もっと痛ぶってから殺さないと。」
ステファニーの眼が昏く光る。
ふと思い浮かんだのはルシファーの姿だった。もっと早く、この世界を受け入れていたら不安にさせることもなかったのに。
ああ、ルシファーに会いたい。
ステファニーが俺を思いっきり蹴飛ばそうとする。
その時だった。
「リリス!!!!」
ルシファーが大勢の騎士を連れて現れた。
「お前たちの反逆の証拠はつかんでいる。抵抗はやめろ!」
「どうやってここが?」
ステファニーの顔には焦りが浮かんでいる。
「リリスは私のそばから離れられない。離れたとしても、追跡魔法がついてる」
(そう言えばあの束縛魔法があったな…。設定が変わって100メートル以内にしたみたいだけど)
「反逆の証拠は揃っている。大人しく降参するんだ」
「そんなこと言われて誰がそうすると思ってるのかしら?」
ステファニーは冥土の土産とでも言うように俺にナイフを突き立てようとした。
しかし、ナイフの刃は俺の体を貫通することはなかった。
「リリスには最高硬度のバリア魔法が貼られている。無駄だよ」
(いつのまにそんなものかけられていたんだ…?)
「本当に、ルシファー様って完璧ね。
だからこそ、私の結婚相手に相応しいのに!
私を愛してくれればそれで済む話なのに!」
「私の心にはリリスだけだ」
ルシファーがそう呟くと、ステファニーは突然気を失った。
きっとルシファーが魔法を使ったのだろう。
気づくと、周りの人々も制圧されていた。
「リリス!大丈夫?怪我はない?」
「うん…。ルシファー、本当にありがとう。
君が来てくれなかったら俺は死んでたと思うよ。
本当にありがとう」
「いいんだ。これで借りは返したってことで」
「借り…?」
「リリスが無事で本当に良かった。君は私の太陽だから」
「ふふっ。なんだそれ。大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃないよ。リリスは私の世界の全てだ。」
ルシファーは熱い眼差しでこちらを見つめる。
「どこに行ったって、必ず見つけ出すよ」
「もう、俺は王子様から逃げられないみたいだ」
そう笑うと、ルシファーはようやく安心したように微笑んだ。
2人の間を爽やかな風が通り過ぎて行き、桜の花を散らした。
ーー完ーー
477
お気に入りに追加
456
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました
かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。
↓↓↓
無愛想な彼。
でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。
それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。
「私から離れるなんて許さないよ」
見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。
需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。

「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが
ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク
王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。
余談だが趣味で小説を書いている。
そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが?
全8話完結
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

とある冒険者達の話
灯倉日鈴(合歓鈴)
BL
平凡な魔法使いのハーシュと、美形天才剣士のサンフォードは幼馴染。
ある日、ハーシュは冒険者パーティから追放されることになって……。
ほのぼの執着な短いお話です。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる